第10話 雛田は誇り高き神楽家
「なんで……白雪さん達が……」
多分、今一番会いたくない人達と会ってしまった。
月曜日に会うんだから日曜日くらい我慢しておいてくれよ!
「なんでって……買い物しに来るのは私達の自由でしょ」
やっぱり今日のデート断れば良かったかなぁ。
「それよりお隣の女の人は誰?」
「もしかして……この前言ってた女の人……!!」
あれは単なる言い訳に過ぎないから本気にしないでくれ白雪さん……。
白雪さんには冗談が通じないド天然だな。
「違うわ。こいつがこの前言ってた義妹だよ」
「初めまして私が義妹の神楽雛田と申します」
なんか義妹の部分だけ強調したよな……。
だってもう敵意むき出しで白雪さんのこと見てるもん……。
警戒してくれるのはありがたいけど、あまり敵意を出さないでおくれ。
「あっ……はい初めまして……」
「あなた達のことは兄から聞いております」
「へぇ〜更沙って義妹さんに私達のこと話してるんだぁ」
葵がすっごいニヤニヤしながら近づいてきた。
しょうがないじゃない。雛田に言えって言われたんだから。
「兄妹でお出かけ?」
「デートです」
こら雛田。余計なこと言わない。
それで僕がシスコン兄貴とか噂されたらどうするのさ。
「デート……」
「兄妹でデートとか……w」
おっと葵さんそれは禁句だぞ。
ほら見ろ。雛田がより一層敵意をむき出しにしたじゃないか。
責任とってもらおうかな。
「あっそうだ西宮さんとは少しお話がしたかったんです」
「えっ私?」
余計なこと言うなよ雛田。
「いいですか? 兄さん」
こいつ人前では兄さん呼びなのか……。
かっこつけめ。
「葵がいいなら良いぞ」
「私は別に大丈夫だよ」
「では少し離れたところで」
そう言うと雛田は葵を引き連れて離れていった。
僕は香織さんに目線を送って、雛田につくようにしてもらった。
仕事ができる人っていいね。
「で、更沙くん」
「なっ……なんだい白雪さん」
「義妹さんと本当は何しに来たの?」
「ただの買い物だよ……」
すると白雪さんは神埼さんと少し話をしてからまた近づいてきた。
神埼さん何も話さないな。
「じゃっ私達も同行して良い?」
「拒否権は……」
「あたしも神楽と一緒が良いからお願いするわ」
フラグ回収かのように神埼さんが近寄ってきた。
白雪さんのお願いは断れるけど神埼さんのお願いは断りにくいんだよな……。
断ったら殺されそうだし。
「分かったよ……雛田も僕が良いなら良いだろうからさ」
「雛田さんってブラコンなの?」
「そうだろうな」
「なんかラブコメみたいじゃね(笑)」
ウ"ッッ……。
僕に一万のダメージ! 神埼さんには警戒せねばならんな……。
ブラコンの妹なんかそこら辺にいるではないか。多分。
「ねぇ希、ブラコンの妹ってそういなくない?」
白雪さん……(泣)
無垢な瞳で言わんで。余計にダメージが入る。
この人達無意識に人を殺めようとしてる!!!
「そうか?」
「そうだよ。そんなブラコンな妹いたら憧れちゃうな」
ラブコメとは憧れからくるものである。
つまり、白雪さんは僕に死ねと言いたいのか。
この三大美女の二人……殺傷能力が高すぎる……。恐るべし三大美女。
「それより葵のやつ遅くね」
「雛田さん話長いのかな」
校長先生か! って……な☆
「何もなければいいが……」
本当に何も無ければ良いんだけど……。
雛田のやつ余計なこと言ってくれるなよ……。
__________神楽雛田&西宮葵 side _________
私、西宮葵はとてつもないピンチに襲われている。
そう。それは更沙の義妹さんのせい!
義妹とはいえ、神楽家の人間……。何を言われるかわからない……。
「早速ですが……」
人がいない端っこに来たところで立ち止まり、くるりと振り返った。
その目は先程の清楚そうな目とは打って違っている……。
終わった……。
「頭が高いですよ西宮葵」
「しっ失礼しました……」
うぅ……心臓が爆発しそうなくらいドクンドクンいってるよぉ……。
「あなた……兄様に接触しているそうですね」
「そっそれは……!」
「誰も口を開いていいとは言っておりませんが……」
「ッ……」
これが神楽家……。
更沙の普段の様子で忘れていたけど……こういう人間だった……!
「どういうおつもりですか? なぜ神楽家の最高権力者である兄様に近づいたのですか?」
更沙より雛田さんの方が恐いじゃんか……。
「答えなさい」
「さっ……更沙から『気軽に話しかけてよ』と言われ、実際に話しかけても嫌な態度を取らず、むしろ楽しそうな態度でしたので……」
「兄様が……」
「それに……更沙からも話しかけてくれるし……」
「……まぁ良いでしょう。では次です」
まだあるの〜〜!?
「あなたはなぜ……兄様のことを『更沙』などと呼び捨てに?」
「そっ……それも更沙が許可をくれたので……」
「はぁ……」
えっため息……?
「それが無断だと判明した場合、西宮家の権限を剥奪いたしますからね」
「ぎょ……御意」
「では戻りましょうか」
またさっきの清楚そうな笑顔に戻った……。
こっ恐い……もう二度と会いたくない。
__________神楽更沙 side_____________
「あっ戻ってきた」
えっ……なんかめちゃくちゃ葵がゲッソリとしてるんだけど。
雛田こいつ……なんかやりやがったな……?
「ただいま兄さん」
「おっ……おう」
なにかスッキリしたような顔してるなこいつ……。
「何の話してたの〜?」
「えっ……えーっと……」
チラッと葵が雛田の方を見る。
雛田はため息をついた。やっぱりなんかしたんか。
「小学校以来ですねっという話ですよ」
「そうなんだぁ」
安易に信じすぎだぞ白雪さん。
神崎さんは相変わらず僕のことをジロジロ見るのをやめてくれ。
「葵! これからさぁ、更沙くんと一緒に買い物しようって話てたんだけどいい?」
「えっ……」
また葵が雛田の方をチラッと見る。
「本当ですか? 兄さん」
「本当だよ」
「そうですか……では御一緒しましょう」
おっ潔い。
珍しいな……雛田はわがままを言うと思っていたんだが……。
ああ……あれか人前では清楚のふりしたいのか。
「やったぁ! 葵も良い?」
「うん。良いよ」
白雪さん楽しそうだなぁ。
そういえば葵と雛田って雛田のほうが身長高いんだっけ? 一センチくらい。
葵……中学生に身長負けてて草。
「更沙? 今なにか失礼なこと考えたね?」
「思考盗聴するんじゃない」
そんな会話をして、みんなは歩き出した。
雛田は僕の意図に気づいたのか、早々にみんなについていった。
「香織さん。桜に白雪さん達の護衛を任せるように伝えてもらっていいですか」
香織さんは静かに頷いて、どこかへ行った。
五川桜 (26) 彼女も香織さんと同じで僕の専属の護衛だ。
さすがに香織さん一人では全員は無理だろうからね。
「兄さん早く」
「はいはい」
そして頭の中でラブコメ展開警戒アラートが鳴り響く中で僕は歩き出した。
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