第7話 白雪萌音と神楽更沙 ①
私の隣の席に座っている男の子、神楽更沙くんと出会ったのは実は三年前。
私が中学生のときだった。
中学生になってから、すぐにその噂を耳にした。
《とんでもないイケメンがいる》と。
このとき、私はそこまで興味が無かった。
だってイケメンなんてそこら中にいるし、それに今まで見てきたイケメンみんな性格が悪くて、自分の顔にだけしか自信が無いような奴らばっかだったから。
どうせあいつらと同じ部類の人間。私は極力関わらないようにしようと思った。
けど、生まれ持ったこの容姿のせいでそれは叶わなかった。
入学してから一ヶ月。
周りから段々と、学校一可愛い女の子と呼ばれるようになった。
嬉しかった。自分の容姿を褒められるのは。
でも嬉しい反面、嫌なこともあった。
それは……執拗に男子からアプローチを受けるし、告白が多くなったことだ。
どうして話したこともない、話したとしてもたった数回で私が堕ちると思ったのか。
そんなに安い女に見えるのかしら。
しばらくすると、三年の先輩からも告白されるようになってしまった。
このままだと他校からも告白してくる男子が現れるのではないかと思った。
そんな中、私はあることに気づいた。
唯一私に告白してきてないイケメンがいることに。
私は廊下でチラッとしか見たことがなかったけど、イケメンと言われるのに申し分ない、いやそれ以上のスペックだった。
そんな彼がなぜ私にアプローチもしてこないのか。
友達から聞いたのだが、彼は何度も告白を断っているそうだ。
その理由が毎回『まだ好きじゃないから無理』だった。
みんなは『すっごく優しい断り方♡』とか言ってたけど。
それは傷つけたくないからであって、チャンスがあるということではない。
私は途端にそんな彼に会ってみたくなった。
まだ話したことがなくて不安だったけど、好奇心しは逆らえなかった。
彼のいるクラスのドアを開け、彼が座っている席の方を見てみた。
彼は誰にも囲われておらず、一人で本を読んでいた。
クラスの女子達はそれを遠くのほうで眺めて目の保養にしているかのようだった。
私はそのまま声をかけてみた。
生憎私は彼の名前を知らなかった。今まで興味がなかったから。
「あの……」
私が声を掛けると、周りの女子は口々に『きゃー!イケメンと美女が並んだわー!』とか言ってるけど。
「ん? 僕に何か用?」
冷たい声だった。明らかに好意を持っておらず、こちらに無関心なことがわかった。
大抵、イケメンというのは可愛い女の子に話しかけられると、話を長くして
出来るだけ一緒にいようとする。
でも彼は違った。まるで突き放すかのように私のを見てくる。
「あぁ……えっと……」
話しかけたのは良いものの、話すことを考えていなかった。
それはそうだ、なぜなら名前も知らなかったんだから。
私が黙っていると、彼が本を閉じてこちらを向いた。
「用がないなら話しかけてこないでくれ」
彼はそう言うと、立ち上がって教室を出ていった。
普通の女子なら唖然としてショックを受けるのだろうけど、私はショックを受けるどころか、逆に嬉しかった。
ここまで私に無関心で、ましてや嫌うような口ぶりをするイケメンは。
人間不信? 女性恐怖症? いや違う。
彼は心の底から私という存在と近づきたくないと思っている。
話してみてわかった。
彼が私の欲する人間だと、私の運命の人だと。
私は自覚していた。私は尽くしたいタイプなのだ。
彼に尽くしたい。
そう思った。
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