第8話 西宮葵と神楽更沙①
神楽更沙。
私は彼のことを小学生の頃から好きだ。
四大財閥の権力を使ってでも手に入れたいと思うほどに。
だけどそれはできない。
四大財閥というものを知っているだろうか。
四大財閥とは 西宮家、宵口家、星宮家、金剛寺家、計四つの家系のことをいう。
この四つの家系は。古くから日本の経済や政治までを支配している。
その力は恐ろしく、日本だけでは飽き足らず、海外進出にまで手を出しているとのこと。
そんな四大財閥を統治する一族がいる。その一族が、まさしく神楽家なのだ。
神楽家が四大財閥の関係を取り繕っている。
私の唯一の武器である西宮家の権力を使ったとしても、絶対と言えるほど
政略結婚なんて出来ない。
神楽家は裏から日本を操り、首脳会談の際に首相に同行するほどである。
そんな神楽家だから、もちろん護衛もいるわけで。
この前更沙とカラオケに行ったときも、影で護衛が私のことを見ていた。
神楽家であることも、更沙がラブコメ展開を嫌うようになった一因かもね。
だってまさにライトノベルの主人公みたいじゃない。
そもそも神楽家の人間と私が接触出来ている時点で奇跡だ。
四大財閥共有のルールの一つに、《絶対に神楽家の人間に近づくな》とある。
私が今更沙と仲良く出来ているのは、更沙が抑止力となっているから。
私が更沙に嫌われることがあれば、私どころか西宮家の存続に関わる。
なんで人間と関わるのにそんなリスクを追わないといけないんだって思うよね。
そんな人間と関わるより、別の人にしたらいいじゃないかと言うけど、
そんなことは絶対にありえない。私は更沙しか見てない。
更沙ことを意識しだしたのは、知ってると思うけど小学生のとき。
私はその小学校で、先生をもデレさせるほどの美少女だった。
これは自信満々で言えることだ。「私は美少女だ!」と。
もちろん美少女の私に告白してくる男子は少なくなかった。
その中に担任の先生がいたのは秘密ね。
数多の男子を振っているとき、〈神楽更沙〉の親友だという男子から告白された。
そのとき、私はドクンッと心臓が跳ね上がった。
私は猛スピードで思考を張り巡らせた。
このまま告白を断れば、親友がこのことを神楽更沙に報告し、
それにキレた神楽更沙に、神楽家の力を使われ、西宮家は破滅するかもしれない。
だけど、私は一度冷静になって思った。
本心で答えようと。私だって人間だ、個人の問題に家のことを挟むなと考えた。
そして私は神楽更沙の親友を壮大に振った。
その親友という男子は膝から崩れ落ちてガックリとした。
私がため息をつこうとしたとき、物陰から、神楽更沙が現れた。
今の告白を見ていたのだ。
私は一瞬頭が真っ白になった。
このままでは……西宮家が潰されると本気で焦ったからだ。
だけどそんな心配は杞憂に終わった。
神楽更沙は私に向かってではなく、その親友に向かって言葉を発した。
『慰めてやるから立てよ……』と。
彼はそのままその親友を連れて、その場を去ってしまった。
西宮家である私に何も言わず、しかも目もくれずに……。
神楽家は個人を尊重し、他人を敬うことのできるが、その反面誇り高い人間だ。
四大財閥の人間と会うときは必ず深々と挨拶をさせる。
そしてなにより神楽家の人間のことを御主人様と呼び、忠誠を誓っていることの
証として、神楽家の人間より頭を下げなければならない。
そんな神楽家の人間、しかもその当主の実息子である神楽更沙。
彼は私をいないものとし、スルーした。
私は感じた。彼は神楽家の人間達とはどこか違う。
「なんてかっこいい人……」
私はそのときに禁断の恋をしてしまった。
西宮家の人間が神楽家の人間にだ。
それから私は一度、彼に思い切って告白した。
家のことは考えず、一個人として。
彼の口からは
「ごめん……僕は君とはまだ付き合えない」
てっきり『神楽家の人間にいい度胸だな』とか言われるかと思った。
だってそれが当たり前なんだから。
しかも彼は私にチャンスがあるような口ぶりで振った。
そのときに私の心に火がついた。
必ず彼を堕としてみせると。
このことをお父様に言うと、口を開けてポカンとしていた。
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