第12話 観戦、そして開戦

それからほどなくして予選第1組の準備が始まる。観衆は皆コースが一望できスタートとゴールが見える手前に陣取っている。俺も予選は第2組だからそこで1組目の様子を見ることができるのは幸いだ。間もなくして大テントの方から出場者と思われる人たちがぞろぞろと馬を連れて出てくる。


「お、あれ前回大会準優勝のデイヴィッドだぞ、今年は行けるんじゃないか」

後ろの方にいる観衆の中からそんな声が聞こえてくる。


よく見るとたしかにデイヴィッドが立派な馬を連れてスタートラインの方へと向かっている。というか、デイヴィッドって前回準優勝だったのか、自分の前にトップレベルの走りを見れるというのはラッキーかもしれない。


「私も馬術大会を見るのは初めてだからどんな展開になるのか興味があるわね」

隣でリアも出場者の方へと熱心に目線を向けている。


「そういえば今回は1人だけグリーンが出てるらしいぜ」

ふとさっきとは別の方向から雑談が聞こえてくる。これって、、俺のことだよな、、?


「命知らずなやつもいたもんだな。ここで出てるのは普通じゃ考えられない化け物ばっかなのによ」


「まあ世間知らずなんだろ。負けてどんな面するのか見物だな」

ハハハと馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。


するとそれを気にする暇もなく隣からすさまじい寒気が襲ってくる。恐る恐る隣を見るとリアの体が青い炎に包まれている、、気がする。なんか周りの人たちもちょっと引いてないか?


「あ、あの、、リアさん?」


「キョースケ、観客までぶちのめしなさい」

リアがプルプルと震えながら恐ろしいことを言い放つ。


「観客はぶちのめしちゃダメだろ、、まあでもあっと言わせられるように頑張るよ。おっ、そろそろ始まるみたいだぞ」


スタートラインを見るとこれまた立派な馬が7頭綺麗に横に並んでいる。乗っている人たちは皆剣なりなり防具なりを装備していて強そうだがやはり一際デイヴィッドが目立って見える。少し遠くではリゲルも笑顔でこちらを見つめている。


「「はーーーい!それでは実況は引き続きこの私が続けさせてもらいまーす!」」

元気の良いお姉さんが実況席で元気良く挨拶する。


さらに実況席の頭上に大きな映像が浮かび上がる。映像には綺麗に選手7人が入るように映し出されている。


「あれどうやってるんだ、、。凄いな」


「ええ、とんでもないわね。魔術師長の魔法ね。光の屈折を精密にコントロールして結像させているんだわ」

テントの魔術師長の方を見ると涼しい顔をしながら何やら指先で光を調整している。


「「それではいよいよ予選1回戦開始となりまーーす!!」」


スタートライン横にいる人がさっと銃を上に構える。そこは一緒なのか、、。


パンッ!


良く聞き慣れた乾いた音が良く晴れた青い空に響き渡る。一斉に7頭がスタートし間髪なく全員が各々の方法で魔法を使い始める。


「「さあ!一斉にスタートです!やはり早速全員魔法を使うか!?」」


「お、いきなり皆使うのか」

するとその発動時間にばらつきはあれど7頭全ての馬が様々な色の光りに包まれる。初心者の俺でも分かる、全て強化魔法だ。


「やっぱり最初はこうなるのね」

リアが顎に手を当てて呟く。


「これがセオリーなのか?」


「恐らくそうね。皆魔力は限られているから無闇やたらに序盤で他者を攻撃したりはしないんだわ。それよりかは最初に強化魔法で自分の走りに集中して魔力を温存するのよ。そして後半前にいる相手を集中的に攻撃するのね。おそらく折り返しのコーナー辺りから攻防が始まるわよ」

リアはそう言いながらよく選手たちが見える映像を見つめている。


なるほどな、たしかにリアの言うとおりそのセオリーが一番効率が良さそうだ。序盤じゃ誰を邪魔するべきかも分からないし後半に魔力が切れて敵の攻撃を防げなくなっては元も子もない。


ていうか、、全員当たり前に強化魔法使えるのね、、俺あんな練習して成功率5割なのに。


「「1位を走るのははやっぱりこの人!去年の準優勝者デイヴィッドだ!さあ後続はどーする!」」


レースは折り返しまでの第1直線の半分を過ぎている。すでにデイヴィッドが3馬身ほど差をつけて前に出ており残りの6頭が必死に追走している。


「そろそろコーナーだな」


「ええ、来るわよ」


デイヴィッドがさらに差をつけて折り返しのコーナーに差し掛かったその時だった。後続の集団のうちの1人が指先に青い光をともす。それからみるみるうちに指先に大きな水の塊が3つできる。


「「おうっと!ここで動きがありそうだ!」」


シュンッ


指先が勢いよく振られるとちょうどコーナーに差し掛かったデイヴィッドの横腹にめがけて一直線に飛んでいく。さらにそれが合図になったのか他の3人も魔法を使い始める。


「一体どうするんだ」

ゴクン、思わず唾を飲み込む。


シャキンッ

次の瞬間デイヴィッドが勢いよく剣を抜き出す。その刀身は赤く光り輝いている、強化系に違いないだろう。


ズバッッッッッッ!!

水の塊が3つ同時に激しく四散する音がここまで聞こえてくる。


「嘘だろ、、切ったのか、、」

信じられない、たしかにただの水ではあるがその速さは凄まじいものだった。あれを3つ同時に切ってしまうなんて、、。一瞬会場もシンと静まり返る。そして次の瞬間、、


ドワアアアアアアアアア!

今までとは比にならない歓声が上がる。これがこの大会の醍醐味のだろう観衆の興奮が肌に伝わってくる。

「「今年も出ました!デイヴィッドの剣術!信じられません!」」


他の選手の魔法が次々とデイヴィッドに襲いかかる。火の玉に岩石、氷の雨がデイヴィッドを襲うが今度は振り返ることもなく背後に大きなバリアを作って魔法が儚く散っていく。さらに後続の一人が長く溜めていた魔法を解き放つと今度はデイヴィッドではなくその先の地面へと飛んでいく。


ガガガガ

たちまちその地面は音を立てて隆起し岩山が現れる。


「おおおおおおおお!」

思わず周りの観衆からも声が上がる。


「「これはまた大きく仕掛けてきた!デイヴィッドはどう対処するのか!」


「よっと」

しかしあらか占め予測してたのだろうデイヴィッドが軽く手綱を引っ張ると馬は横にスライドし華麗に岩山を避ける。その後も次々と岩山が出現するが涼しい顔で全て躱していく。


「そろそろじゃないかしら」


「え?何が?」

リアがそんなことを言った直後だった。後続の中の一人が後続の中で先頭を走っていた馬に風圧の魔法を放った。


「「おっと!ここで初めてデイヴィッド以外に攻撃が飛んでいきます!」」


騎手は全く警戒していなかったのだろう、当たる直前になって気付き慌てて手綱を引っ張るが魔法は直撃する。馬体はその衝撃から大きくバランスを崩し地面に倒れ込んだ。外から白マントの魔術師が咄嗟に駆け寄っていく。普通なら大事故だがまあこの世界では大丈夫なのだろう。


「なるほど、2位争いが始まったってわけか」


「そうよ、あれだけ1位が離れていて魔法も効かないとなると予選はこうなるわね」


さっきの攻撃が皮切りになったのか、他の後続もお互いに攻撃と防御を始める。それからは壮絶な魔法の打ち合いだったがどれも不意打ちにはならなかったため転倒に至る馬はいなかった。結局1位は圧倒的な差でデイヴィッドがゴールし、僅差の末風圧の奇襲を仕掛けた男が2位でゴールした。


「これ、、思ってたより激しいな」


想像よりも何倍も激しい魔法の打ち合いに思わずたじろいでしまう。純粋な走力だけで見たらデイヴィッドにも余裕で勝てる自信があるがそこに攻防が入ってくると話は別だ。


これだけのメンツの中で俺はやれるのか、、


「そうね、どうするつもりなの?」


「序盤で一気に抜き出て射程外で逃げ切る」


逃げは俺たちの専門分野だし魔法が使えないのがばれる前に射程外まで逃げるのが一番だろう。


「まあたしかにそうね。いくら強者揃いといっても彼らの専門は魔法じゃないわ。彼らくらいだと100mも離れれば魔法は届かないはずよ」

発言の中にちゃっかりリアの強者感がにじみ出ている。リアさんは何mまで届くのか今度聞いてみよう。


「100mか、魔法を打たれるまでに距離をどれだけ離せるかが勝負だな」


まあ、それに仮に魔法が飛んできたところで俺が一発や二発くらい避けてみせるさ。それくらいして見せないとシンに乗るものとして示しがつかない。


「ところでキョースケ、強化魔法は使うの?」


「とりあえず使わない方針で行くよ。マナブレイクしたら大変だからな。本当にそれしか勝ち筋がなくなったら使うかもしれないけど」


「「それでは魔法隊によるコース修復を行った後2組の選手の整列を開始しまーす!2組の皆さんは移動の方お願いしまーす!」」

お姉さんから2組の準備のアナウンスが入る。


「そう。それじゃあ頑張りなさいよ!」

リアにパシッと背中を叩かれ再び気合いが入る。そのまま押し出されるように歩き出し俺はシンを連れてくるべく大テントの方へと向かった。







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