第11話 開会、そして歓声
それからの1時間半はあっという間だった。リアがあっちこっちの出店やショーに駆けていくので必死にはぐれないように右に左に追っかけていたら開会式の時間になっていた。とは言っても正直なところ俺もかなり楽しんでしまった。祭りは競馬学校に行き始めてからは行ったことがなかったし久々にお祭りというものを味わった。特に凄かったのは魔法を使ったショーだった、エレメント系の魔術師が様々な魔法を使って空中に模様を描いていく様は圧巻だった。思わず俺も投げ銭をしてしまったがリアも大興奮で気にしていなかったようだ。それと結局気分に乗せられて食べ物もお互い3つずつ買ってしまった。クソッ、恐るべしお祭り効果、、。
まあでも落ち込んでたリアがこれだけ楽しそうなんだ。これくらい安い出費だろう。隣で焼きトウモロコシをがっついているリアを見てそんなことを思っていると
「「それでは、本日のメインイベント馬術大会の開会式を始めまーーーす!」」
今回の会場となる大草原の端の方、スタートラインの手前でショートカットの元気そうなお姉さんがマイクを持って話し始める。
もうすでに会場中の人がこの辺りに集まってきている。やっぱり皆のお目当てはこの大会のようだ。
「「えーーーではまず、今大会のルール説明をします!
まず、形式についてですが今回の参加人数は39名で予選は全部で6組になります。1組6人もしくは7人で競っていただき1位のみが決勝へと進みことができます。また、予選全6組が終了した後予選各組2位の方々6名で敗者復活戦を行っていただきその1位も決勝進出となります。以上決勝は計7名で競技を行っていただき無論1位だった方が優勝となります」」
なるほど、予選は2位への救済もあるってわけか。一気に抜けれれば案外逆に皆2位争いにシフトして1位は狙われないなんてこともあるかもしれないな。
「「次に、競技についてですが至って単純、ここにあるスタートから向こうの丘の奥の折り返し地点を折り返していただき真っ直ぐ返ってきて横に見えますゴールに辿り着いた順番で順位をつけさせてもらいます。なお、用意されたコース脇のロープに馬体が触れた場合はコースアウトとなり失格になるのでご注意ください」」
ざっと見たところコースの距離は折り返し地点までちょうど1000mといったところだ。丘の後ろを半周して折り返し第二直線を返ってくるようだ。そうするとちょうど隣に見えるゴールまでは計2000mくらいだろう。皐月とちょうど同じだ、全く心配はない。コースも起伏は少なく草もきれいに刈り揃えられている。左右の幅も7頭が間隔をあけて並んでも3分の1くらいしか埋まらないほどでコースアウトの心配もなさそうだ。
「「そして最後に!一番重要な禁止事項についてです!本大会の禁止事項は「騎手ならびに馬の命に直接関わる行い」と「競技スタート前の強化・妨害」です。逆に言えば!これ以外の魔法、攻撃、妨害は行っても良いことなっています!今年もどんな攻防が繰り広げられるのか見物ですね~」」
リゲルも強調して言っていたがやはり直接命に関わる行い以外は何でもありのようだ。強化魔法しか使えない俺がどう敵の妨害を裁くかが大事だな。
「「はーーい!では私からは以上になります!!最後に現騎馬隊長アルフレッド・ミル様にご挨拶と開会の宣言をしていただきまーす!」」
お姉さんが元気よく端の方に手を振りながら走り去っていく。
「え、ていうか「直接」命に関わるってことは邪魔されて転んだりして死ぬのはしょうがないってこと?」
俺はふと気付いて慌てて隣にいるリアに小声で囁く。正直この世界でまた同じような死に方をするのはまっぴらごめんだ。
「いいえ、死者は出ないようになっているはずよ。たしかに転倒して放置していたら命を落とすこともあるかもしれないけど。ほら、スタートラインの奥の方に白いマントを着た人たちがいるでしょ」
リアが指す方を見るとたしかに青い線の模様が入った白いマントを着た人たちがさっと10人くらいきれいに整列している。
「あれか、あれがどうしたんだ?」
「あの人たちはこの国の国王軍の魔術隊の精鋭たちね。あの人たちが本気で治癒魔法を使えば転倒くらいのけがなら治せちゃうのよ。だから直接命に関わるような強い攻撃で即死しない限りは死なないってことね。それに、、ほら、あそこ見て」
今度はさっきと違って具体的な説明もなくリアが指差しだがリアが一体どこを見てほしいのかが一目で分かった。本部陣営の人の中に明らかに格が違うオーラを放っている女性がいる。
彼女は左眼に眼帯を付けていて、魔術隊と似た白マントを着ているがその模様は他の魔術師よりもより複雑で綺麗に描かれている。そして驚くのはその姿の美しさだ。赤く艶やかなロングの髪に意思の揺るぎを一切感じさせない右眼の赤い瞳、それに加えて毅然とした顔立ちは見る者全てを引き付けるだろう。しかも年齢は若く俺と同じくらいのように見える。
「見えるよ。あの赤い髪の女性だろ?」
「ええ、彼女はアミレア・アミオット、ちょうどこの前20歳にして魔術師隊長に任命された超天才魔術師よ。何でも前魔術師長はその実力を見て自ら魔術師長の席を譲ったそうよ」
「20歳で魔術師長か、、とんでもない天才がいたもんだな」
「彼女がいるってことは尚更安心ってことよ。まあとにかく安心して思いっ切り走ってきなさい」
「ああ、安心して走れそうだ。任せてくれ」
そうこうしているうちにマイクの前には今度は緑色の模様が描かれている白いマントを着た40歳くらいのこれまた強そうな男が立っていた。この人が騎馬隊長様だろう。
「今年も熱い闘いが繰り広げられることを期待している。ではただいまを持って馬術大会開会とします」
あまり抑揚のない不愛想な声で騎馬隊長がそう告げるとその声とは裏腹に会場には割れんばかりの歓声が響く。何やら指笛やらクラッカーやら騒がしい音があちこちから聞こえてくる。
その歓声にあっちの世界でのレースを思い出した俺の感情は静かに高ぶっていた。
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