第9話 実践、そして当日

それから俺はリアに具体的な魔法の発動の仕方を教わった。


どうやら発動の仕方自体は割と自由で体のどこかに魔力を出力する門をイメージして魔力を放出するイメージをすれば良いらしい。それは手でも脚でも頭でもどうやら臍でも良いらしい。じゃあ目で!って言ったらそんなことしたら目が焼き切れるわよとまたリアには呆れられてしまった。結局リアと同じ手の平で練習することにしたのだが、、


キュウウン、、


手の平で情けない音と共に小さな光が四散する。もう1時間も試しているのに一向にうまくいかない。トホホホ。シンも心なしかトボトボと歩いているように見える。


「んーーーー造形系もダメそうね。まあこの辺はイメージが難しいし練習すればここから使えるようになる可能性もあるわよ」


ここまでエレメント系、治癒系、造形系を試したがどうも同じように魔法が体現する前に魔力が分散してしまう。


「最後は強化系ね、見る限り魔力が足りないわけではないと思うわ。ちゃんと魔力は出ているもの」


「分かった。頑張ってみる」


俺は頼む!と心の中で祈りながら両手を前に突き出した。リアに教わったように体の中の流れを手の平に向けるように意識する。とりあえずシンを対象としてRPGでもあるようにシンを光で包み込むようなイメージで流れを作る。


キュイイイイン


「お!」


すると淡く黄色い光がシンの体を包み込む。途端にその光がシンの体に吸収されパリンという音を立てて光がはじけ飛ぶ。心なしかシンの体が少し黄色に発光しているように見える。


「こ、これって?」


俺が恐る恐るリアの方に振り返るとリア教官も目をキラキラさせて驚いている。弟子の成長を見守る師匠の気持ちだろうか。


「やったじゃない!!強化系の魔法よ!」


「ガフッガフッ」

シンも効果を実感したのか気持ち良さそうに喜んでいる。


「これはどんな効果なんだ!?」

俺はワクワクが抑えきれず食い気味で師匠に尋ねる。


「そうね!ちょっと元気になるくらいよ!」


「えっ、こんなに良い感じだったのに、、それだけ、、ですか?」


「まあね。でもきっと強化系に適性があるのよ。それに強化系が使えるってことはある程度の魔力と門もあるってことだからきっと練習すれば他の系統のものも使えるわよ」


「そ、そうか!俺頑張ってみるよ!」


「なんか強化系ってあなたらしくてとても良いわね!」

リアが屈託のない笑顔で俺にそう言う。


ん?これって褒められているのか?なんかディスられてないか?たしかに毎年初夢で他力本願寺に初詣に行くくらい他力本願ではあるが俺だってやるときはやるんだからね!


それから俺たちは目的地へと機械を届けて帰り道もみっちり魔法の練習をしながら帰ってきた。俺はその過程でいろいろなこと知ることができた。


まず俺に強化系の適性があること。


そしておそらく魔力門が小さいということ。どうやら俺の魔力門は有力な魔法を使えるギリギリの大きさの門の大きさらしい。絶大な魔法の才能で無双する、なんて展開は残念ながらなかったようだ。


そして最後はおそらく俺にはそこそこの魔力量があるということだ。魔力量を測定するのは特殊な装置を使わないといけなくて現時点では精密には分からないそうだが、往復で4時間魔法を使い続けても魔力が尽きないというのは中々大したものらしい。だからこそリアは俺の魔力門が小さいことを惜しいと嘆いていた。


それでも練習を続けた甲斐があったのか最後の方は5,6回に一回はシンへの身体強化魔法が成功するようになってきた。これがまた魔法門の大きさに合わせた魔力操作というのが難しくて何度も暴発しそうになりリアに止められたが、、。リアの話によるとどうやら魔力門を超える魔力を押し出そうとすると魔力回路がショートして色々本人にダメージが行くらしくてこれはマナブレイクと呼ばれているらしい。マナブレイクはさっきくらいの強化魔法なら気を失うくらいで済むらしいが、大きい魔法とかだと魔法が二度と使えなくなったり最悪の場合命にかかわることもあるそうだ。ちなみにこれも基本の基だとリアにしかられた。


そして俺たちは依頼主の元へと戻り荷車を返し報酬の銀貨10枚を受け取って途中でシンのための人参を買ってから宿屋へと向かった。


「ごめんな、シン、せっかく大活躍なのにこれくらいしか用意できなくて。大会で勝ったらたらふく食わしてやるからな」

宿屋の馬小屋でシンをねぎらいながら頭を撫でる。シンはそれでも幸せそうな顔をして口をもぐもぐしている。


「ガフゥ」

分かってるよ、というようにシンが頭を擦り付けてくる。ほんとに賢くて可愛いやつだ。こいつのためにも次の大会負けられないな。


「じゃあ俺たちは飯屋を探そうか」


「そうね、シンには悪いけど」

リアはちょっと申し訳なさそうな顔でシンの顔を見て街の方へと歩き出した。


それから俺たちはこれまたお手頃な定食屋を見つけて豚肉定食を頼んだ。いざ出てくるとまあいわゆる野菜炒め定食である。雑に野菜と豚肉を炒めて味付けしただけのこれまたジャンキーな物だ。


「うんうん!これも美味しいわね!何よ、街って美味しい物だらけじゃない」

どうやらまたリアはご満悦のようだ。こういう時のリアは歳相応に子供っぽく見える。


なんかこれ見てると高級料理が馬鹿らしく見えてくるな、、


「それでキョースケ、とりあえず大会までは今日と同じ感じで良い?」


「うん、とりあえずは少しの足しにしかならないかもしれないけどそうしよう」


「それと、、」

リアが真剣な面持ちになり、新聞を広げながら料理を待っている別テーブルの客を見やる。


「それと?」


「そろそろ革命の情報が入ってくる頃だと思うの、それについても情報を集めましょう」


「なるほど、それもそうだな。明日からは新聞屋にも行ってみよう」





それから俺たちは食べ終えると宿屋に帰って昨日は体力が無さすぎて浴びれなかった共用のシャワーを浴びてからそれぞれ床に就いた。


「ねえ、キョースケ」


「ん?」


「もう少しお金を稼いだらもう一着服を買わない?」


「全く同感だ」

シャワーの後に汗まみれの服を着る不快感を俺は初めて知った。これは最優先事項だろう。


「それじゃあ、おやすみ」


「ああ、おやすみ」




それから俺たちは大会まで朝は新聞屋に寄ってギルドに行き簡単な依頼を受けてこなす日々を繰り返した。依頼内容は荷物運びに人運び、あとは畑の耕作なんてものもあったがどれもシンが大活躍だった。ほんとはリアの魔法が活かせる依頼も受けたかったんだけどそれでリアの正体がばれるのも良くないしそれはやめることにした。報酬は大体初日と同じくらいのものを毎日もらえたのでとりあえず俺たちは簡素な衣服なんかも一着ずつ買い揃えた。


それと依頼の前後と隙間時間で俺はリアに教わりながら魔法の練習を続けた。とりあえず大会に間に合わせるために練習は適性の高い強化系に絞ったのだが前日になっても成功率は50%くらいまでしか伸びなかった。リアいわくこの短期間でそこまで伸びるのは相当凄い方らしいが俺としてはやはり大会までにもっと成功率を上げておきたかった。こっちに来てからというものシンが活躍してばっかで少しは俺も役に立ちたいものだ。しかし実際は何回かに一回はやはりマナブレイクしそうになるので大会で使うかは微妙なところだ。


一方、情報の方だが新聞でミワ王国のことについては一切報じられていなかった。リアによるとこういう情報は公式の声明と確定的な情報が入るまで国が報道を控えさせることはよくあることなのだそうだ。どうやら不確定な情報で国民の混乱を招くのを防ぐためらしい。


そして、その公式の声明と一連の出来事が報じられたのは大会の日の朝の出来事だった。








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