第7話 大会、そして揚げ物
「テラルド王国馬術大会、、?賞金は、、金貨100枚!?」
金貨100枚って、、銀貨7枚で金貨1枚分だから当分生活には困らないじゃないか。しかも大会はちょうど5日後だ。
「なんだキョースケ、興味あるのか?」
あまり大きな声を出したからか少し遠くにいたリゲルが寄って来る。
「まあ、少し馬には自信があって」
「ほお、面白いじゃないか、この馬術大会はなテラルド王が直々に開催する大会なんだ。テラルド王は馬術大会、剣術大会、魔術大会を毎年開催するんだ。国に娯楽を与えて経済を回すのが目的らしいが、どうやら国全体の武力の底上げと有望株のスカウトも兼ねているらしいぜ。決勝はテラルド王も見に来るらしくて相当盛り上がるんだぜ」
なるほど、、賞金も額が額だしこの規模だと相当レベルは高そうだ。
「でも馬術大会って一体何をするんだ」
「ルールは至って単純さ、一斉にスタートして一番早くゴールに達した者が勝ちだ。ただ一つミソになるのが直接命にかかわらないことなら何をしても良いってことさ。当然前を走る馬には邪魔をする魔法が飛んでくるし自分の馬にとんでもない強化魔法をかけるやつもいる。決勝は毎年最後まで接戦になって見物だぜ」
「要は一番早くゴールしたら勝ちの競争ってことだな?」
「そりゃぁそうだけど、、キョースケの兄ちゃん本当に出るのか?」
「ああ出るよ、レースは俺たちの専売特許だからな」
「そうか、それなら応援してるぜ!俺も当日は見に行くからよ」
またリゲルが大柄な体には似合わないさわやかな笑顔で親指を立てて仲間の方へと戻っていく。
「なんかあんまり期待はされていなそうだな」
それもそうだろう、初めてギルドに来た若造がいきなり国の猛者たちが覇を競う馬術大会に出るのだ。もしかしたら呆れられちゃったかもな。
「絶対勝てるわよ。キョースケとシンは凄いんだから!」
「こりゃ負けられないな」
なぜかリアの方が腰に両手を当てながら胸を張って得意げにしている。しかし実際これはまたとないチャンスだ。優勝することができれば当分生活に困ることはないだろう。
ちょうど大会の受付はギルドのカウンターで行なわれていたので俺たちはもう一度戻って受付を済ませギルドをあとにした。
それからお腹ペコペコだった俺たちは帰り道の途中で比較的安そうな飯屋を見つけてそこに入ることにした。
どうやらここは揚げ物が売りの店らしい、でかでかと書かれている”特選グルメ盛り”には心惹かれたがそんな贅沢はできないのでとりあえず看板メニューっぽい白身フライを頼む。少しだけ待つとイギリスで見たことがあるフィッシュアンドチップスとそっくりの物が出てくる。これなら不味くて食えないことはないだろうと油断しながらフォークで突き刺して口に運ぶ。
うっ、うまい!何というか、こういうので良いんだよ!
味付けは単純で非常にジャンキーな味だが無性にこういうのが食べたくなる時があるものだ。こういう食べ物って良い物ばっか食べてそうなリアの口には合うのかなとリアの方を見やる。
「何これ!美味しいわ!かなりいけるじゃない!」
また目をキラキラさせて嬉しそうな顔をしている。こういうジャンクフードをあまり食べたことがなかったのだろう。やっぱり王族といえどこの魅力には抗えないな。
「それで、とりあえず明日からはどうする?」
「そうね、まあ練習もかねてできそうな依頼をいくつかこなしてみましょ」
「そうしようか、俺が5日後に勝てる保証もないしな」
実際お金という観点だけでなくこの世界の社会に慣れておくという意味でも依頼をこなしてみるのは得策だろう。あっちにいたときもバイトなんかしたことなかったから少し不安である。
「それとあれだ、シンの餌のことも考えないとな。今日はじいさんがたらふく食べさせてやってたから大丈夫そうだけど明日からはどこかで調達しなきゃだ。大会で栄養不足のために力を発揮できなかったら困るしな」
「え?何言っているの?」
リアがフォークを持った手をピタッと止めて不思議な物を見るような目でこちらを見る。
「ん?」
「キョースケ、、まさかずっと一緒にいるのに気付いてないの!?」
「え?何にだ?」
リアがもう呆れたという風にハァとため息をついている。
「シンにはずっと魔法がかけられているじゃない、というか体に組み込まれていると言った方が正確ね。私から見るにおそらくあれはシンの血液に魔法が組み込まれているんだと思うわ。それもとびきり高度なものね」
「ま、魔法、、?どういうことだ?」
「その内容まではあまりに複雑な魔法だから私には読み取れないけどシンには魔力が常にエネルギーに変換されて供給され続けているわ。まあ一瞬一瞬で見たらもの凄い微量のエネルギーだから普通の人は気付けないかもしれないけど、、はぁ、、あなた何年一緒にいるのよ」
な、、一体なんてったってシンにそんな能力があるんだ。そ、、それに仕方ないだろ!向こうでは2年くらい一緒にいたけどこっちの世界に来てからはまだ一日なんだから!
とは言えるはずもなくただ口をぽかーーんと開けてアホ面をしていると
「まあ良いわよ。とにかく餌はあげなくても良いってこと。でも、、それにしても不思議なのよね、、魔力を持ってるのって人間か魔獣だけのはずなのに。シンはどう見ても魔獣ではない普通の馬だし。魔法が組み込まれていることは100歩譲ってあり得るとして、それを発動させてる魔力は一体どこから来てるのかしら」
リアが可愛らしく顎に手を当ててうーんとうなっている。
なんか俺にはもうさっぱりその詳細は分からないがやっぱり転生が関係しているのではないか。もう昨日から色んな事が起こりすぎてどんなイレギュラーもあり得る気がしてきた。
「そ、そうか、、とりあえず良かった良かった」
「もう!あんまり何も考えてないでしょ!」
何が何だか分からなくなって思考停止していたがどうやらリアにはお見通しだったようだ。なんか俺三つも年上なのに怒られてばっかじゃないか?
「す、すみません」
ハハ、と俺は分かりやすく苦笑いを浮かべる。
「まぁ良いわ、とりあえず餌のこともこれで解決ね」
腰に手を当ててフンと言いながら返事が返ってくる。
それから俺たちはフィッシュアンドチップスを食べ終えると会計を済ませ宿屋に戻った。部屋に上がる前に馬小屋のシンのところへ行ったがたしかにシンはお腹が減っている様子もなく元気そうに俺の顔を舐めて出迎えてくれた。
それから俺たちは部屋に戻るとちょっと会話をしたくらいですぐに床に就いた。
「そういえばキョースケ、、その、、ごめんなさいね。私、、最初に会った時、、天罰が下るなんて、、」
暗くしているのでその表情は見えないが隣のベッドからリアが謝ってくる。
「あ、あれか。なんだ気にしてたのか。あれは仕方なかったからな。誰だってあの状況なら敵だと思うだろう?俺も気にしてないし」
「うん、ありがとう。それじゃあおやすみなさい」
「うん、おやすみ」
それから程なくして隣からかすかな寝息が聞こえてくる。それもそうだ、いくら所々で休んだとはいえお互いここ1日でこれだけのことがあったのだ。心も体もとうに限界を超えているだろう。
菊花賞出たと思ったら死んで転生して姫様助けて王国に侵入してギルドまで行って、とても24時間の中の出来事とは思えないな。
あと、あのフィッシュアンドチップスはリピート確定だなぁ。あと”特選グルメ盛り”あれは絶対いつか食べてやる。
そんなことを考えた次の瞬間どっと疲労感に押しつぶされ俺はもう深い眠りに落ちていた。
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