9
「その女の人は、どんな顔をしてますか?」
「少しだけ、白藤の宮に似ています」今気が付いたばかりのことを、若竹姫は(素直に、正直に)言う。
「私に?」と自分の顔を綺麗な指で指差しながら、不思議な顔をして白藤の宮は言った。
「はい。初めはそうは思わなかったんですけど、今日、こうして白藤の宮とお会いして、今はそう思います。もしかしたら、実際には顔や姿はそれほど似ている、と言うわけでは無いのかもしれないですけど、雰囲気がよく似ています。表情とか、仕草とか、目の動きとか、そのせいで、なんとなく顔も白藤の宮に似ているような気がします」と白藤の宮の顔を見ながら、若竹姫は言う。
「私に、ですか?」と自分の綺麗な形をした鼻のあたりをずっと指さしたままで、白藤の宮は言う。
「はい。とてもよく似ています。なんだか本当に玉姫とお話をしているみたい」にっこりと笑って、若竹姫は言った。
「その玉ちゃんと出会ったときのことを教えてくれませんか? もし二人だけの大切な秘密だと言うのなら、無理に教えてくれなくてもいいんですけど……、」と言いながらすっごく教えてもらいたそうな顔をして、白藤の宮は若竹姫に言う。
「はい。別に構いませんよ」(そんな白藤の宮を見て)くすっと笑いながら、若竹姫は言う。
それから若竹姫は頑張り屋さんの自分と同い年の花火職人の女の子、玉姫と出会ったときのことを、そのときのことをゆっくりと思い出しながら、白藤の宮にお話しした。
(それから、別に構いません、と言ったのだけど、白藤の宮に玉姫の話をしようとして、二人の出会いの記憶を、透き通っている湖の水を救い上げるようにして思い出しているときに、ふと若竹姫は、確かにこの思い出は、『あまり人には話したくない』、と言う自分の感情が、そこに隠れていることに気がついて、自分でも少しだけ驚いた。記憶の湖に映りこんでいる若竹姫の顔は、少しだけ不満そうなかわいくない顔をしていた)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます