第10話 一緒に遊ぼ

Oさんが小学生の頃の話。


ある夏休みの午後、地元の小さな公園で一人で遊んでいた。


すると一人の男の子が「一緒に遊ぼ」と言ってきた。


Oさんと同じくらいの年頃に見えるが、地元では見たことのない子だった。


「いいよー」と言って一緒に遊ぶことに。


砂場でいろいろ作って遊ぼうかと言うと男の子は笑ってうなづいた。



Oさんが「名前は?」と聞くと男の子は「ユウキだよ」と答えた。


砂場で遊びながらいろいろ話をした。


学校であった話。


好きな女子の話。


お父さんと遊んだ話。


お母さんにちょっと叱られた話。


普段はそんなに話すほうではないOさんだったが、ユウキが楽しそうに聞いてくれるからいつもより饒舌になって話し続けた。


話すのはもっぱらOさんばかりで、ユウキは興味ありげにそれを聞いていた。


「お父さんとお母さんのこと、好き?」


ユウキがそう聞いてくるので、Oさんは「うん、好きだよ」と笑顔で答えた。


ユウキも一緒になって笑顔になっていた。



夢中になって遊んでいたが、気がつくと辺りはもう夕方の装いを見せていた。


そろそろ夕方6時の放送が流れるだろうな、とOさんは思った。


「僕、もうそろそろ帰らないと」


砂場に完成した傑作であるお城から顔を上げると、辺りにはユウキの姿がなかった。


(あれ?いつの間に帰っちゃったのかな)


Oさんは不思議に思いながらも、家に帰ることに。



その日の夜、公園でユウキという男の子と遊んだ話を両親に話した。


すると、にわかに両親の顔色が変わった。


まだOさんが産まれる前…一人目の子供を両親は死産で亡くしていた。


産まれたら名づけようと考えていた名前が、ユウキだったのだ。


Oさんがユウキと楽しく遊んだという話を両親は感慨深そうに、時に涙しながら聞いていた。


「今日はお盆だから…兄弟で一緒に遊びたくなったのかもね」


お母さんは涙ながらにそう言った。

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