第3話  エンドマーク!

 よくメールをくれるのはふみえだったのに、先にもう一度大阪に来てくれたのは広子だった。勿論、大歓迎だった。だが、何故か広子はまた友人を連れて来た。里子。歳は広子と同じくらいだろう。僕個人の感想で言えば、全く好みではなかった。


 里子がいるので、また大阪観光。連休とはいえ、2~3日で案内するのは無理がある。連れて行きたいところが多い。その中から、女性陣が行きたい所を聞いて、優先順位をつけて回れるだけ回った。初日はそれで終わった。


 そして待ちに待った夜。ホテルのシングルの部屋で広子を待った。風呂も入って、ホテルの寝間着(浴衣)に着替えたので準備OKだ。


 やがて、ノックの音。


 ドアを開けたら、やっぱり浴衣姿の広子が立っていた。浴衣姿が色っぽい。


 言葉は要らなかった。


 2度、抱き合って、微睡んでいると広子が言った。


「今回で、終わりなの」

「え! どういうこと?」

「地元に彼氏が出来ちゃった。勿論、崔君のことも好きだけど、やっぱり近い方がいいからねー!」

「そう、そうなんや」

「明日の夜もあるから、元気だしてよ」

「う、うん」

「私と会えなくなるのは寂しい?」

「うん、寂しい」

「そう思ってもらえて良かった」

「広子さんは魅力的だから、他の男も放っておかないよね」

「魅力的? 私が?」

「うん、魅力的」

「崔君」

「何?」

「ありがと」

「あ、1つ聞きたいことがあるんやけど」

「何?」

「なんで1人で来ずに里子さんを連れて来たん?」

「ああ、電車に乗ってる間、1人じゃつまらないし、里子が大阪に行きたいって言ったからだけど、嫌だった?」

「どうせなら2人きりで会いたかったなぁ」

「そんなこと言わないでよ」

「まあ、ええんやけどね」



 翌々日の夕方、駅まで見送った。広子達は広島に帰る。


「崔君、さようなら」

「うん、さようならやね。もう、会えないもんね」

「うん、会えない。でも、崔君と出会えて良かった」

「ほんまに?」

「うん」

「楽しかったわ」

「私も」

「あ、電車が発車するね」

「うん」

「ほな、お元気で!」

「うん、元気でね!」



 列車は走り出し、すぐに加速して見えなくなってしまった。寂しかった。簡単に出会うと、簡単に別れが訪れるのだろうか? 本当にアッサリ終わってしまった。多分、広子は僕との関係にケジメをつけに来たのだろう。その気持ちは嬉しかった。適当に連絡を取らないようにして、自然消滅させる手もあったのだ。広子の誠意を感じた。でも、僕は広子と出会えて良かったと思う。しかし、寂しくてしょうがない。こういう時に、飲めない酒を飲んでしまうのだ。



 ということで、これは恋愛になる手前の物語でした。花の咲かない恋心もあるものです。いや、パッと咲いて、パッと消えたのでしょうか? でも、僕は広子を忘れない。きっと、これからも忘れない。そんな出会いもあるんです。







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作家は恥をかいてなんぼ? 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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