覚悟

「マジで最悪だな」


 翼は自分の運の悪さを呪った。

 今、彼とローズの視線の先にいたのは最も危険で最悪な人型ジャイアント―――キラー。

 そのキラーは可愛らしく、キャハ♡と笑う。


「人間ガ増エタ!ララ、嬉シイ!」

「……なんでお前がここにいる」

「ココ、ララノ家ダヨ」

「家……」


 どうやら今、翼たちがいる無人島はキラー……ララの住処だたようだ。


(チッ、本当に運がない)


 舌打ちした翼は今の状況を何とかする方法を考える。


(こいつはとても速いキラーだったはず。つまり逃げても無駄。すぐに追いつかれる。となれば助かる方法はこのキラーを倒すこと。そしてアイツを倒せるのは)


 翼は怯えているローズに視線を向ける。


「……青葉さん。しっかり摑まってください」

「嵐くん~?」


 彼は赤き翼を羽ばたかせて、砂煙を発生させる。

 ララは腕を振るい、砂煙を吹き飛ばす。

 だがその時には、二人の姿はなかった。


「フ~ン、カクレンボカ」


 ララは邪悪な笑みを浮かべる。


「イイヨ~。遊ンデア・ゲ・ル♡」


<><><><>


「ハァハァ……なんとか一時的に逃げられたか」


 無人島の森の中に逃げた翼は、抱えているローズに視線を向ける。


「青葉さん」

「怖い…怖いよ~」


 涙を流しながら怯えるローズ。

 どうやら本気でララのことが怖いのだろう。

 だがそんな彼女に……翼は残酷なことを告げる。


「青葉さん……あのキラーと戦ってください」

「!!む、無理だよ~!嵐くんはあのキラーの恐ろしさを知らないからそんなこと言えるんだよ~。それに私は足が」

「俺が動かせるようにします。俺のアビリティなら不可能ではありません」

「で、でも~…私には~……」


 身体を震わせるローズ。

 そんな彼女に翼は優しく、言葉を伝える。


「青葉さん。あなたは最速の騎士だと聞きました。そんなあなたが負けるはずありません」

「嵐くん……」

「あなたが戦うのなら、俺は貴方の武器になります」

「……分かった~」


 ローズの目には怯えはなくなった。

 蒼い瞳に宿っているのは、覚悟だった。


「じゃあ……行きますよ。アビリティブースト!」


<><><><>


「オ~イ、ドコニイルノカナ~♡」


 森の中を歩きながら、二人の人間を探すキラーのララ。

 彼女は可愛らしく、そして邪悪な笑みを浮かべており、まるで悪魔のよう。

 そんな彼女……一人の少女が近づく。


「ン?カクレンボハ……終ワリ?」

「うん。そうかな~」


 ララの前に現れたのは、金色の髪を伸ばした少女。

 その少女の両足には金色に輝く金属ブーツが装備されており、激しく放電している。


「仲間の仇……とらせてもらうね~」


 声は穏やかだが、目には覚悟と怒りが宿っていた。


「名前……ナンテイウノ?」

「青葉ローズだよ~」

「ローズ……今カラ殺シ合オウカ」


 ララは身体から台風の如く強い風を発生させる。


「いいよ~…まぁ勝つのは私達だけどね~」

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