新たなキラー

 白百合騎士団に翼がやってきてから半年がたった。

 騎士の生活にも慣れ、騎士に必要な知識も覚えた。

 そんなある日、


「実戦訓練……ですか?」


 団長の鐘子から「実戦訓練に参加しろ」と言われた。


「嵐翼……あんたはそこらへんの騎士より強い。一人でジャイアントを数体は倒せる実力もある。だが……そんなアンタに足りないものがある。それはなんだい?」

「えっと……冷静さ?」

「それもある。だがアンタに一番必要なのは……経験だ。ありとあらゆることを経験しなくてはならない。そうすれば色々な状況に対応できる」

「分かり……ました。それでいつやるんです?」

「今日だ」

「今日!?いきなり?」

「こういうのは早い方がいい」

「いや、でも」

「心配するな。最初は低級の野良ジャイアントと戦わせる」

「それなら……まぁ」

「あと青葉ローズもあんたと一緒に同行させる」

「え?青葉さんを?」

「青葉は戦うことはできないが、お前にアドバイスは出来るだろう。なにせアイツは元白百合騎士団のエースだったから」

「そうなんですか!?」


 まさかローズがエースだったとは知らず、翼は驚いた。


「アイツは騎士の天才だった。どんな敵も稲妻の如き速さで倒した。言うなれば……最速の騎士だ」

「そんな人が……なぜあんな風に」

「……あるキラーにやられたんだ。しかもそのキラーはローズよりも速かったそうだ」

「!!」

「この話はこれで終わりにしよう……さぁ、行ってこい。移動用のヘリは用意してある」

「……分かりました」


<><><><>


 それから翼はローズと共にヘリでとある無人島にやってきた。

 その無人島は林があり、ジャイアントが三体ほどいる。

 だがジャイアントから襲って来ようとする気配はない。

 というかジャイアント達は翼たちに気付いていない。


「襲ってきませんね」

「あのジャイアント達は視力とかが低くて、こっちから近づかないと気づかないよ~」


 無人島の地面に降りたローズはノートパソコンとドローンを準備する。


「じゃあ訓練開始するからアビリティを発動して~」

「分かりました」


 翼はアビリティを発動。

 彼の背中から美しく、大きな赤い金属の翼が生える。


「はい、今度はこれをつけてね~」


 ローズはマイク付きのイヤホンを渡してきた。


「これは?」

「それは通信機だよ~。それで支持をするから頑張って~」

「分かりました」


 翼はイヤホンを耳に装着し、空を飛ぶ。

 空を飛びながら、彼はジャイアントに接近する。


『嵐くん、聞こえる~?』

「はい」

『今回、倒すのは初心者騎士でも倒せるジャイアント。だからまずは自由に倒してみて~』

「了解」


 彼は身体を回転させ、赤き翼でジャイアントの首を斬り飛ばす。

 正確で、速い一撃。

 それをドローンで見ていたローズは目を見開く。


『……嵐くん~。戦い方はどこで覚えたの~?』

「母から教わりました。あの……どうでしたか?」

『ハッキリ言って~、教えることないね~』

「え?」

『嵐くんの戦い方は完璧と言っていいね~。そこらへんの騎士よりも戦闘技術が高い~。君に戦い方を教えた人はとても優秀な~……!!きゃあ!!』

「青葉さん!?」


 イヤホンから聞こえたローズの悲鳴。

 慌てて翼は空を飛び、ローズのところに向かう。

 そして見えたのは、ローズの首を掴み、持ち上げる少女の姿をした白い石像。

 髪はツインテールにしており、フリルがついた可愛らしいドレスを着ていた。


「あれは…キラー!?なんでここに!というかその前に助けないと!!」


 翼はローズに高速接近。

 そしてローズをキラーから奪い取り、距離を取る。


「青葉さん!大丈夫ですか!?」

「あ…ああ……」

「青葉さん?」


 ローズの様子がおかしかった。

 身体を震わせており、怯えている。


「に、逃げよう~!嵐くん~!」

「落ち着いてください!いったいどうしたんですか」

「あのキラーは……私の仲間を、第四小隊のみんなを殺した化け物なの~」

「!!マジかよ……」


 翼は汗を流しながら、キラーに視線を向ける。


「マジで最悪だな」

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