訓練所

 次に案内されたのは白く、そして広い空間。


 天井は高く、壁は強固な装甲に覆われている。




「ここは?」


「ここは訓練所。ジャイアントと戦うことができるわ」


「ジャイアント!?」


「見てて。ジャイアントLV1。数は一体」




 ルルがそう言うと、なにもないところから猿型ジャイアントが出現した。


 突然、十メートルの猿の石像が現れ、翼は驚く。




「うわっ!どっから出てきた」


「最新の技術で作られたバーチャル映像。みんなこれで訓練しているの」


「へぇ~」


「翼。今日はこのバーチャル映像のジャイアントと何度も戦ってもらうわ」


「え?なんで?」


「あなたがどこまで戦えるか知りたいみたいなの。ここでは戦闘データがとれるから」


「そういうことか」


「とりあえず戦ってみて」


「了解。とりあえずアビリティを発動するよ」




 翼はジャイアントに近付き、アビリティを発動させる。




「アビリティ発動」




 彼の背中から赤く……そして大きな金属の翼が生える。


 その翼はとても美しく、ルルを魅了する。




「綺麗……」


「どうも。さぁ、ルル。始めてくれ」


「わ、分かったわ。じゃあ……始め!」




 ルルが合図すると、猿型ジャイアントは翼に向かって拳を振り下ろす。


 迫りくる拳を翼は紙一重で躱す。


 そして空中を飛び、彼は赤き翼でジャイアントの身体を切り刻んだ。


 ジャイアントは粒子と化して消滅。


 無駄がなく、そして速い。


 敵を素早く倒すことに特化した翼の動き、ルルは見惚れた。




「すごい。あなた……どこで戦い方を?」


「母から教わったんだ」


「母親から?騎士だったの?」


「まぁな。俺がアビリティを使えるようになってからは毎日鍛えられたよ。めっちゃ大変だったな~」




 昔のことを思い出した翼は肩を落としながら、苦笑いする。


 どうやら母との特訓は彼にとっていい物ではないようだ。




「そうなのね。翼の母親……どんな人なの?」


「鬼だな」


「鬼?オーガ?」


「そう。それもただの鬼じゃない。鬼の女王だな。普段はどこにでもいるお母さんって感じなんだけど……訓練の時と起こった時がとても怖くて」


「へぇ~……会ってみたいわね」


「あまりオススメしないぞ」




 それから少し話をした後、今度はルルと一緒にジャイアントと戦うことになった。




「アビリティ発動」




 ルルがそう言うと、彼女の身体が機械のものへと変わり、巨大化した。


 巨大ロボットになったルルを見て、翼は驚く。




「本当にいつ見てもびっくりするほどデカいな」


『女の子にデカいは失礼よ』


「ご、ごめん」


『本当に悪いと思ってる?』


「思ってる思ってる」


『じゃあ今度、買い物に付き合って』


「え?なんで?」


『いいから!付き合いなさい!』


「わ、分かったよ」




 ルルは「よし」と言って、ガッツポーズを取る。




「じゃあ……とりあえず始めるか。アビリティブースト」




 直後、彼の赤き翼は粒子と化した。


 粒子はルルの大きな機械の身体に吸い込まれる。


 するとルルの腕と脚がぶ厚い装甲に覆われ、彼女の頭に縦長の帽子のようなものが現れた。


 そしてルルの腹の部分からコックピットが出現。


 翼がコックピットに乗ると、ハッチが閉まる。




「それじゃあ……やるか」


『ええ』




 ルルの目の前にゾウ型ジャイアントが出現。


 ゾウ型ジャイアントはルルに向かって突撃する。大きな足音を立てながら迫りくるジャイアント。

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