第四小隊の部屋
一時間ぐらいかけて鐘子に誤解を解いた翼。
朝から無駄に疲れた翼は鐘子に渡されたねずみ色の軍服のような服に着替えた。
「こんなものか」
姿見鏡で自分の恰好を翼は確認する。
服のデザインはいたってシンプル。
しかし男の子心をくずぐるようなカッコよさもある。
「なんで俺、ねずみ色の服なんだ?てっきり白かと」
「それはあなたが騎士見習いだからよ」
「うわぁ!?」
いつのまにか背後にルルがいて、驚く翼。
ルルは白い軍服のような服を着ている。
デザインはだいたい同じだが、下にはいているのはズボンではなく、スカート。
「ルルさん?なんでここに?」
「今日からあなたの教育係をすることになったの」
「そ、そうなんですか」
「で、さっきの話だけどこの騎士服は特別製でとても頑丈でできているから車にはねられるていどでは傷一つできないし、なによりアビリティを発動しても服が破けたりなんてこともないわ」
「そいつはすごい」
「で、色のことなんだけど……騎士服は色によって所属する騎士団が違うの。例えばここだと白百合騎士団は白い騎士服を着ることになっているの」
「そうなんですか」
「あなたは騎士になったばかりだからねずみ色なの。あるていど騎士としての知識を覚えたら、その服も白になるわ」
「へぇ~」
「じゃあ次はこの白百合騎士団本部の案内をするわね。ついてきて」
「は、はい」
<><><><>
それから翼はルル白百合騎士団本部の中を案内された。
トイレがある場所、風呂場がある場所、食堂がある場所。
ルルは全ての場所を教えた。
廊下を歩いている最中、多くの騎士達とすれ違う。
すれ違う時、翼を見てヒソヒソと話す。
当然の反応だよなと思いながら、翼は歩く。
「と、こんな感じで……全部、話したかしら」
「はい。ありがとうございます。ルルさん」
「……ルル」
「え?」
「ルルでいいわ。敬語もいらない」
「いや、そういうわけには」
「ル・ル」
顔を近づけて、言葉を強調するルル。
「分かったよ……ルル」
「よろしい。じゃあ次はあそこね」
「あそこ?」
「私達……第四小隊の部屋よ」
<><><><>
「この扉が第四小隊の部屋よ」
ルルに案内されたのは、『第四小隊』と書かれた扉の前だった。
「えっと……第四小隊って?」
「騎士団には小隊がいくつもあって、ここはその一つ。私達第四小隊はあなたが立派な騎士になるまで面倒みるように言われているの」
「へぇ~」
「さぁ、入って……二人もあなたと会いたがっていたわ」
そう言ってルルは翼の背中を押す。
扉は自動で開き、彼は部屋に入った。
「ここが……第四小隊」
「めっちゃ汚い」
そう。汚い。それもめちゃくちゃ。
お菓子のゴミがたくさん床に散らばっており、本やゲーム機、そして酒瓶やビールの缶などが転がっている。
そしてなにより……臭い。
「なんでこんなに汚いんだ」
「それには深い理由があるの」
「理由?それはいったい」
「それは……第四小隊には誰一人、掃除ができる人がいないの」
「真剣な顔で言うな」
翼はハァとため息を吐いた後、腕をまくる。
「まずは掃除からだな」
翼は騎士として最初に、掃除をすることにした。
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