白百合騎士団
ジャイアント達と激しい戦闘した後、家に向かって飛翔する翼。
彼は今回のことを思い出し、ハァとため息を吐く。
「やっちゃったな……」
人前で、しかも騎士の前でアビリティを使ったことに後悔していた。
アビリティは女性にしか使うことができない。
だが翼はアビリティを使うことができるのだ。
「母さんには使うなって言われてたけど……今回は仕方ないよな。うん」
自分にそう言い聞かせて、翼は空を飛ぶ。
暫く飛び続けると、街が見えてきた。
その街は翼が住んでいる場所。
「さぁって……さっさと家に帰って新作のゲームを!」
買ったばかりのゲームで遊ぼうと思った時—――少年の背中から生えていた赤い翼が突如消えた。
「え?」
突然の事に呆然とする翼は、地面に向かって落下した。
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
勢いよく落下していく翼。
彼が地面に直撃しようとした時、翼は空中で止まった。
「い、いったいなにが?」
なにがなんだか分からず頭に?マークを浮かべていると、軍服のような白い服を着た女性たちがなにもないところから現れた。
女性たちは空中を浮遊している翼を囲む。
「き、騎士団!?」
翼を取り囲んだのはジャイアントを討伐し、人々を守る騎士の組織―――騎士団。
一人の女性が翼に近付く。
「嵐翼くん。君には我々と共に来てもらう」
「ちょ、いきなりなに言って!」
「君に拒否権はない」
女性が指をパチンと鳴らすと、翼は眠気に襲られた。
眠気に抗えず、彼は意識を失う。
<><><><>
「ん……んん……ここは?」
気が付くと翼は知らない部屋にいた。
壁や天井は白く、翼は椅子に座っていた。そして目の前には机に肘をつけ、両手を組んだ女性がいた。
その女性は軍服のような白い服を肩に羽織っており、顔には少し皺ができている。
白い髪が混じった黒髪をお団子にしている。
六十代に見えるその女性は、歴戦の猛者のような威圧を醸し出していた。
「おはよう、嵐翼。少しババアと話そうか」
「あなたは……白百合騎士団団長の……」
「おや?知っているのかい?あたしのことを」
「はい……ニュースでよく出ていましたから」
騎士団は無数に存在し、その中で白百合騎士団は日本で二番目にジャイアントの討伐数が多い。
つまり実力者ぞろいということ。
そのトップに立っているのが、翼の目の前にいる女性—――白百合騎士団団長、
もう何十年も騎士をしており、ニュースにもよく出ている。
「あの……そんな人がなんで俺の前に?」
「なーに……少し話がしたくてね。あと礼がしたくて」
「礼……ですか?」
「ああ。ウチの騎士を助けてくれて、ありがとね」
「ウチの騎士……ああ、あのロボットの」
翼は思い出す。女性人型ロボットのことを。
どうやらロボットになれるあの騎士は白百合騎士団の所属らしい。
「あんたのおかげでウチの新人は死ななくてすんだよ」
「ああ、そうなんですね」
「と、本題はここから。まさか男なのにアビリティが使えるとは……長年生きていたがこんなのを見るのは初めてだよ」
「……」
翼は黙り込む。
確かにアビリティが使える男など、ありえないことだ。
そんな異例な存在である翼を騎士団が放っておくはずがない。
「アンタのことは調べさせてもらったよ。嵐翼、十六歳。8月8日生まれ。父と母と三人暮らし。普通の高校に通っており、成績は中の下。見た目と声が女の子みたいで気にしている。好きなものはゲームとアニメ、そして漫画。嫌いなものはトマト。……まぁ調べた感じどこにでもいる少年だが、三つだけ普通じゃないことがある」
鐘子は指をパチンと鳴らした。
すると翼の目の前にウィンドウのようなものが投影された。
そのウィンドウには赤い金属の翼を生やした彼の映像が映し出されている。
「男でありながらアビリティが使える。しかもとんでもないアビリティを使っているね」
「……なんのことですか?」
「隠しても無駄だよ。監視カメラで色々見せてもらったし。それにアンタのアビリティも調べさせてもらったよ」
鐘子は目を細めて、口を動かす。
「アンタのアビリティは……
「……」
翼は何も言えなかった。
図星だったのだ。鐘子が言ったことはすべて正しい。
翼のアビリティは、他人のアビリティと戦闘能力を強化することができるのだ。
「あの娘にコックピットなんて存在しなかった。アレはアンタの能力だろう?」
「……はい。俺がパイロットになることが、彼女の最強の武器だったんだと思います」
「?どういうことだい?」
「俺はアビリティと戦闘能力を強化するだけじゃなく、武器にもなることができるんです」
「……詳しく聞かせておくれ」
「他人のアビリティと戦闘能力を強化したのは今回の合わせて四回だけですけど……その内、三階は肉体が刀になったり、斧になったり、鎧になったりしたんです」
翼のアビリティは他人のアビリティと戦闘能力を強化するだけじゃなく、己の肉体を強力な武器にすることができる。
「人によって形は違うんですけど……相手にあった武器になることができます。今回、ロボットの人に合った武器がパイロットだったということです」
「なるほど……つまりアンタのアビリティは超強化型というわけか」
「まぁ……そうなりますかね」
鐘子は腕を組み、考える。
(こいつは予想以上の大物だね。どうりで
長いため息を吐いた鐘子は、真剣な表情で翼を見る。
「嵐翼」
「は、はい」
「アンターーー」
「明日から騎士になってもらうよ」
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