赤き翼

「ロ、ロボット!?」


 突然現れ、ジャイアントを殴り飛ばした人型ロボット。

 そのロボットは黒く染まっており、人間の女性の身体と同じ形をしていた。

 頭の部分からは長い黒髪のようなものが伸びている。

 そんなロボットは翼を見る。


『そこのあなた。早く逃げなさい!』

「ロボットが喋った!?」

『ここは騎士である私が時間を稼ぐから安全な所へ』

「騎士……」


 ロボットの言葉を聞いて、翼はようやく理解した。

 今、目の前にいるのはアビリティによって姿を変えた女性騎士だと。


(アビリティには肉体を別のものに変えて戦う騎士がいるのは知ってたけど、こんなに大きなものになる奴がいるなんて)


 翼が呆然としていると、


『早く逃げなさい!死にたいの!?』


 ロボットは大声で怒鳴った。


「す、すみませ……!騎士さん、後ろ!!」

『え?後ろ?』


 ロボットが振り返った。

 その直後、牛の形をしたジャイアントがロボットに体当たりした。


「キャア!!」


 吹き飛ばされたロボットはビルに激突。

 大きな衝突音が鳴り響き、ビルの全てのガラスが割れる。

 牛型ジャイアントロボットに角を向け、突撃する。

 このままではジャイアントの角でロボットは串刺しになってしまう。


「危ない!……クソ、仕方ない」


 翼は覚悟を決め、告げる。


「アビリティ……発動!」


 次の瞬間、彼の背中から大きな金属の翼が生えた。

 その翼は炎の如く赤く、そしてとても美しい。

 まるで不死鳥のよう。


「ごめん、母さん。約束を破る!」


 今、ここにいない母に謝り、彼は赤い翼を羽ばたかせて飛翔。

 弾丸の如き速さで牛型ジャイアントに突撃。

 そして身体を回転させ、赤き金属の翼で牛型ジャイアントの首を斬り飛ばす。

 頭を失ったジャイアントは盛大に転び、ビルに衝突し、動かなくなる。


『す、すごい……一瞬で』

「驚いているとこ悪いんですが、急いで立ってもらってもいいですか?敵がたくさん来てしまったので」


 翼の言う通り、空や陸から無数のジャイアント達が近づいてきていた。

 鳥の形をしたやつや、犬や猫の形をしたやつもいる。


 ジャイアントの数は約三十体。


「こんなに多いなんて……最悪」

『そこの女の子』

「誰が女の子ですか!これでも男ですけど!?」

『え?嘘でしょう?どう見ても女の子にしか……というかなんで男がアビリティを!?』

「それよりなんですか?なんか言いたいことがあるんじゃないんですか?」

『そうだったわ。……あなた、空を飛べるんでしょう?ならあなただけでも』

「……そうですね。それが一番かもしれませんね」


 確かに翼だけなら逃げることができる。

 しかし、


「悪いですけど、あなたを見捨てるほどクズじゃないんですよね」

『でもこのままじゃあ!』

「……騎士さん。今からやる事、他言無用でお願いします」

『え?それはどういう……』


 翼はロボットの腹の部分に触れる。


「アビリティブースト……発動!!」


 大声で叫んだ。

 すると彼の赤い翼は粒子と化した。

 粒子はロボットの身体に吸い込まれた。

 直後、ロボットの腕と脚がぶ厚い装甲に覆われ、頭に縦長の帽子のようなものが現れる。

 それと同時にロボットの腹の部分からコックピットのようなものが出現する。


「……なるほど。ということか」

『これはいったい……あなたはなにを』

「すみませんが話している時間はないので」

『ちょ、ちょっと!』


 翼がコックピットの中に乗り込む。

 するとコックピットはロボットの中に収納され、ハッチが閉じる。

 目の前に大きな画面が現れ、外の景色を映し出す。


「さて……ロボットを操縦するなんてゲームでしかやったことないけど……不思議と使い方は分かるな」


 翼は操縦桿を握り締める。


「さぁて……ジャイアント狩りの始まりだな」

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