赤き翼を持つ少年~世界で唯一男でありながらアビリティを持つ少年は、女騎士達を強くする!!~

@gurenn1950

第一章

プロローグ

「ルル。準備はいいか?」


 可愛らしい声でそう問い掛けたのは茶色の短い髪を伸ばした若い少年。

 茶色の瞳は大きく、顔も小さい。

 少年というより少女の見た目をしていた。

 そんな彼がいるのは狭いコックピット。

 操縦桿とペダルがあり、目の前には大きな画面があった。


『いつでもいいわよ』


 そう答えたのは少年が乗っている女性人型ロボット。

 そのロボットは顔と胴体が人間の女性のものと同じ形をしていた。

 だが両腕と両脚は分厚い装甲に覆われており、頭には縦長の帽子のようなものを被っていた。

 ロボットの大きさは十メートルはあり、美しく……そして戦士の如く勇ましい。


「じゃあ……行くか」


 少年は操縦桿を握り、ペダルを踏んだ。

 するとロボットは地面を強く蹴り、駆け出す。

 十メートルはある大きさなのに、猛スピードで走るロボット。

 そんなロボットの先になにかがいた。

 そのなにかは……白い石像だった。

 石像は十メートルはあり、ゴリラの形をしている。

 しかも……動いていた。


「まずは……一体目!」


 少年は操縦桿を強く引いた。

 同時にロボットは拳を放ち、ゴリラ型石像を粉砕する。

 石像は動かなくなり、ただの瓦礫と化す。


「グオオオオォォォォォォォォォォォ!!」

「ガアアァァァァァァァァァァァァァ!!」


 近くにいた虎型石像と狼型石像がロボットに襲い掛かる。


「仲間を殺されて怒っているのか?」

『そんな仲間意識なんてやつらにないわよ』

「それもそうだな」


 少年はペダルを強く踏み、操縦桿を押した。

 するとロボットは虎型石像の首を掴み、地面に叩きつけた。

 そして狼型石像の頭を強く蹴り、破壊する。


「これで三体目……と、またぞろぞろ来たな」


 コックピットに設置された画面には、迫りくる無数の石像たちが映し出されていた。


「うわ~……百体はいるぞ」

『問題ないわ……あなたがいるから』

「そうか……」


 少年は笑みを浮かべ、操縦桿を握り締める。


「まったく……まさか俺が騎士として戦うことになるとは……あの時は思わなかったな」

 

 少年—――嵐翼あらしつばさは思い出す。

 自分が騎士になる前のことを。


<><><><>


「いや~二時間並んでようやく買えたわ~…」


 鼻歌を歌いながら、新作ゲームカセットが入った袋を抱き締める翼。

 先ほどまで彼はとあるゲームショップで長時間、並んでいた。

 そして目当てのゲームをようやく買うことができたのだ。


「早く帰ってこのゲームをしよ~と……ん?」


 家に帰ろうとした時、視線の先で人だかりができている事に気が付く。

 

「なんだ?」


 彼らはビルに設置されたスクリーンを見ていた。

 スクリーンには白い石像の怪物と、それと戦う女性たちが映し出されていた。

 

「騎士とジャイアントの戦闘映像を見ていたのか」


 この世にはジャイアントと呼ばれる石像の怪物が存在する。

 ジャイアントは人を襲い、通常兵器で倒すことができない。

 倒すことができるのは、アビリティという特殊能力を持っている女性のみ。

 そしてアビリティで戦う女性達を騎士と呼ぶ。


「俺には関係ないな」


 翼は歩むのを再開し、家に向かう。

 

 アビリティは女性のみが使え、男が使うことはできない。

 つまり騎士になることができないのだ。


 だからと言って翼は別に気にしていない。

 普通に家族がいて、普通にゲームで遊んで、普通に高校生活する。

 それで十分だった。寧ろ好きだった。

 翼に不満があるとすれば、見た目と声が女の子みたいでよく女子と間違われることだけ。

 別にヒーローになりたいとかという望みはない。

 ただ……平穏に暮らせればそれでいい。と、翼は考えている。


「さっさと家に帰ってゲームしよ~う!」


 軽くスキップしていたその時、


 ドカアアァァァァァァァァァァァ!!


 突然、遠くにあったビルが大きな音を立てて爆発した。

 誰もが足を止め、爆発したビルに視線を向ける。


「な、なんだ!?」

「爆発!?」

「お、おい!アレを見ろ!」


 一人の男性が人差し指を空に向ける。

 翼は彼が指差した方向に視線を向けた。

 そして……目を大きく見開く。


「あれは……」


 視線の先にいたのは、空を飛ぶ巨大な白い石像。

 その石像は鷹の形をしており、口から炎が漏れ出ていた。


「ジャイアント!?」


 そう。ジャイアント。

 人類の敵が、翼がいる街の上を飛んでいた。


「キャアアアァァァァァァァァァァァ!!」


 耳を塞ぎたくなるような雄叫びを上げながら、鷹型ジャイアントは口から炎の球を放つ。

 炎の球はビルに直撃し、爆発。

 人々は悲鳴を上げ、逃げる。

 翼も急いで逃げようとした。

 だが誰かとぶつかり、地面に転ぶ。

 慌てて立ち上がろうとした。

 しかしそれよりも早く、ジャイアントが翼に襲い掛かってきた。


「やばっ!」


 間に合わない!

 そう思った時、


『ハアアアァァァァァァァァ!』


 人間の女性の姿をした巨大ロボットが現れ、ジャイアントを殴り飛ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る