第2話 だいふくドラゴン、走る

 赤ちゃんのだいふくドラゴンが歩いています。 

 とても小さいです。卵と同じ大きさ。


 卵を割って生まれるのではなく、卵が変化して、幼体の姿になるんですね。


 さて、このドラゴンには、本来ドラゴンが持っていそうなウロコがありません。牙もありません。爪もありません。


 なぜなら彼らは、ドラゴンである前にだいふくだからです。


 ウロコの代わりに、何かのコーティングで体を硬く守り、柔軟なもちもち生地で、更に守ります。

 ここは卵と同じですね。


 牙はありませんが、それっぽく口はギザギザしてます。爪も同様です。

 彼らは、基本的に他の動物を襲ったりしませんから必要ないのでしょう。


 あっ!赤ちゃんだいふくドラゴンが走っています。

 翼があるとはいえ、まだ幼体。小さすぎて飛べません。


 どこへ向かっているのでしょう?


 行き先は、水場でした。川に口をつけて飲んでいます。

 けれど、口に含むやいなや、吐き出してしまいました。受け付けないようです。


 この川、よく見ると流れが緩やかで、そんなに水質が綺麗ではありません。


 だいふくドラゴンは、綺麗な水を好むのです。


 この小さな幼体は、飲める水を求めて、旅立ちました。


 彼らは、生まれた時から、生きるために全てを自分でしなくてはなりません。

 ゆるい見た目をしていながらも、中身は超絶に必死なのです。

 まさしく、だいふくですね。


 あてのない旅は、ずっとずっと続きます。


 何回か、水源を見つけても、この子が満足いくものではないようです。

 それだけ、水にはこだわっているのです。


 7ヶ所目で、ようやく水を飲み始めました。

 少し生地が乾燥していたので、割と危ない状況でした。


 飲み終えただいふくドラゴンは、ホッと一息つきます。

 それも当然。生まれた直後に、水を求めて遠征することになったのですから。


 ん?どうやら何かを探しています。水の次は何でしょうか?


 まっすぐ行ったり、曲がったり、小さい足でバタバタと走り回ります。

 頭を左右に振って探してもいます。


 止まりました。慌ただしく動いていたのが、止まりました。


 視線の先は、草がたくさん生い茂っています。そこに一体何があるのでしょうか。


 走りだしました。ピタッと止まっていたのが、走り出しました。


 茂みの中に入り、体を丸めます。するとどうでしょう。いつのまにか、まんまるのだいふくそのものになってしまいました。

 見た目としては、卵にそっくりです。


 なるほど。卵から生まれた時、ちょっとだけ、眠っていたんですね。

 無理もないです。二度寝は気持ちいいですからね。

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