だいふくドラゴンの生態

山戸

第1話 だいふくドラゴン、生まれる

 どこかの世界にだいふくの卵が一つありました。


 まるくて白いだいふく。

 当然もちもちしてる、と言いたいのですが、それは違います。

 どうやら何かのコーティングで、表面はしっかりとしているようですね。


 ちょこんと小さく、野原の上に転がっています。

 

 どこからともなく、鳥がやってきました。どうやらだいふくを食べるみたいです。

 でも、仕方ないですよね。弱肉強食。動けない卵は、食べられてしまうのが自然の摂理です。


 鳥は、だいふくの卵をツンツンつついています。

 コーティングされていますから、コツコツと本物の卵を叩くような硬い音がしています。

(注意:だいふくの卵もれっきとした本物の卵です!)


 けれど中々割れません。何かのコーティングは結構頑丈なようです。

 ちなみなんですが、だいふくの卵は、中身と、生地の層と、コーティングの層に別れています。


 パキッ!


 あ!とうとう、コーティングの層が割れてしまいました。こうなれば、もう時間の問題。もちもちとした生地なんて、保護には何の役にも立ちません。


 早速、鳥は生地をついばんで食べようとしています。でもよく伸びる。よく伸びる。

 全然、千切れる様子はありません。


 前言撤回。もちもちとした生地の層も保護に役立っています。

 硬さをものともしない、剛力の持ち主相手なら、柔らかく、受け流してしまえばいいのです。


 それにしても、よく伸びています。10cm、20cm、30cm......。あまりに伸びるので、遂に鳥は諦めて飛び立ってしまいました。


 勝者は卵。そうですよね。卵とはいえ、自分の身は自分で守るものです。


 でも、だいふくの卵は変な形になってしまいました。

 一部がすごく伸びてしまって、芽が生え始めた種みたいになってしまっています。

 まあ、これからこの卵も孵化するので、同じようなものです。むしろ良いことでしょう。


 あっ!卵が少し動きました。どうやらそろそろ誕生の時みたいです。


 だんだんと、動きが大きくなっています。

 最初は、少し動いて、止まって、動いて、止まって...、だったのが、動いて、動いて、動いて、動いて、になっています!

 

 生まれます!


 ......


 ...動きが止まってしまいました。急にびくともしなくなりました。誕生は、しないのでしょうか?


 静寂が、ずっとずっと続きます。


 けれど、これも仕方のないことです。弱者淘汰も自然の摂理。悲しいけれど、この子はよく頑張りました。




 突然、だいふくの卵の形が変わりました。

 ギザギザの口、丸っこい角、点みたいなつぶらな赤い目、小さな翼、短い4つの足、そしてちょっとだけ長い尻尾。

 あと、鳥に引っ張られたところは、ほっぺたからヒゲのように残っています。


 ちゃんと生まれていました!

 これぞまさしく、「だいふくドラゴン」です。

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