第3話 色んな初めて

歩美の服を買い暇になった2人は近くにあるゲームセンターに向かった。

「すご〜い!ゲーセンなんて初めて来た!」

「まじ?初めて来たのか?」

「小さい頃は連れてって貰えなかったから、、」

「そうか、じゃあ今日は今までの分も思う存分楽しんでいいからな!」

「やった〜!」

(まじで情緒どうなっとんねんこいつ)

そして歩美は可愛い熊のぬいぐるみのクレーンゲームを始めた。

「うーん、こんな感じ?」

クレーンを動かした歩美は凄い自信ありげだったが、クレーンは掴むどころか全く別のところに行っていた。

「あれ〜?おかしいな〜」

「まあ任せろ、見てな」

そして歩美と交代した佑はクレーンを動かした。クレーンゲームの王(?)の呼ばれてきた佑にはちょろいもんだ。

「ほら」

佑が動かしたクレーンは見事熊のぬいぐるみを掴み、ゲットすることができた。

「うわ!すご〜い!天才じゃん!」

「ほら、やるよ」

「え?いいの?」

「俺が熊のぬいぐるみ持っててもしょうがないだろ」

「確かに!ありがたく貰っちゃうね!」

「おう!」

今日イチの歩美の笑顔に佑も思わず笑顔になった。

「ねえ!次はあれやろ!」

歩美が指さしたのはパンチングマシーンだった。凄いチョイスだなとは思ったが歩美がやりたいならついて行くことにした。

「普通に殴ればいいんだよね?」

「そうだと思うぞ」

「じゃあ勝負しよ!私が勝ったらジュース買って!」

「別に勝たなくても飲み物くらい買ってやるが」

「も〜それじゃ面白くないでしょ!」

「わかったよ、じゃあ俺が手本見せてやる」

佑はグローブを握りパンチングマシーンに渾身の一撃をお見舞いした。

「180kgか、悪くないな」

「じゃあ次うちやるね〜」

そして歩美はグローブをはめて、パンチした。

「は?250kg?」

「どう?すごいの?」

「ああ、、女子だったらだいぶ強いと思うぞ?」

「やった〜じゃあジュース買って!」

「ああ、何が飲みたいんだ?」

「この、コーラってやつ?飲んだことないんだよね」

「コーラ飲んだことないのか?珍しいな」

「飲み物は水以外あまり飲んだことないかな〜、いつかジュースも飲んでみたいな〜って思ってたんだ!」

(こいつはまじでどんな人生を過ごしてきたんだ?)

さすがにジュースを飲んだことない人はあまり聞いたことがない。佑は少し心配になったが、歩美がとても嬉しそうなのでそんなことはとりあえずどうでもよかった。

「ほらよ、飲んでみな」

歩美は貰ったコーラを豪快に飲んだ。

「ぷはぁ〜凄いね炭酸って!めっちゃ美味しいよ!」

「そりゃ良かった」


十分にゲーセンを満喫した2人はお昼ご飯を食べることにした。

「なんか食べたいもんあるか?」

「うーん、、あ!あれ食べたい!」

歩美が指さしたのはハンバーガー屋だった。

「ハンバーガー食べたことないんだよね〜新聞とかでたまに見たりするけど美味しそうで食べてみたかったんだよね〜」

(新聞を読んでるギャルって存在するんだ)

そんなことを思ったが、これも深い事情がありそうなので触れないでおく。

「よし、じゃあここにするか」

そして2人はハンバーガー屋に入店した。

佑はこのハンバーガー屋はよく来るのでいつも食べてるものを注文した。

「歩美は何食べるんだ?」

「うーん、、何があるかわかんないから佑と同じの食べる!」

「わかった」

そして2人は注文した商品を受け取り席に着いた。そして歩美は真っ先にハンバーガーにかぶりついた。

「すごい!めっちゃ美味しいねこれ!」

「だろ?ポテトも美味いぞ」

「ほんとだ!美味しい!」

まるで小学生小学生みたいに頬張る歩美に、佑は思わず笑みがこぼれた。

ハンバーガーを堪能し満足した2人は今日の夕飯を買いに行くことにした。

「夕飯買いに行こうと思うけど何か食いたいもんあるか?」

「うーん、、私は特にはないかな」

「そうか、うーんどうしようかな」

「じゃあさ!私が1番得意な料理をお見舞いしてあげるよ!」

「そうか?じゃあそうしようかな」

そして2人は夕飯の買い物をし、家へと帰った。

「ふぅー疲れたー」

「うん、、、」

「どうした!?」

帰ってきた瞬間に歩美は涙をこぼした。

「どうした?なんか嫌なことでもあったか?」

「ごめん、、、なんかめっちゃ久しぶりに楽しかったから、、嬉しくって、、」

(そうか、、)

今日の朝歩美は言っていた。生きてて楽しいことがないと。もう死んでしまいたいと。

(出会ったばっかりで何様な気もするが、俺がこいつを守りたい、幸せにしたい)

佑はそう思った。今日一緒に過ごしていて、歩美がどれだけ辛い人生を送ってきたか、薄々分かっていた。

「でも、、佑のおかげで生きる気力が少し湧いてきた気がするよ、ありがとう」

「そうか。それは良かった」

歩美の言葉に佑も少し涙をこぼしそうになった。

「なあ歩美」

「、、、なに?」

「お前は人に迷惑をかけないように生きようって思ってるだろうが、別に迷惑かけてもいいと思うぞ」

「、、、そうかな」

「ああそうだ。だから俺にはもっと迷惑かけろ、わがままをもっと言え。今までわがまま出来なかった分も全部だ」

「いいの、、?もっと迷惑かけても、、」

「ああいいさ。ここで厳しくしてお前を追い出したりしたらまた同じ道を歩むだろうからな。俺が居なくても今日みたいに楽しいことができるようになるまで、傍にいてやるよ」

「ありがとう、、この借りはいつか返すから、、今は存分に甘えさせて頂くね、、?」

「ああ、別に借りも返さなくてもいいけどな」

「いや?絶対に返すけどね!」

(やっぱこいつ情緒どうなってんだよ)

またいきなり元気になった歩美に佑は困惑したが、同時に安心した。

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