第3話 入学初日 ②

 

 (うわぁ、いるいる、入学式でテンションがおかしくなっちゃう人。いやでもあれは通常運転か?よく入学できたな、、、)



 気付いたら入学してた僕がいえることではないけど。



 (たのむからこっち来るなよぉ、まだ入学式すら始まってないんだから。)



 そう思い、しばらくはここにいようと思ったが、、



 あれ?こっち来てない??



 校門前では誰にも相手にされなかったのだろう。(当然だ)


 諦めて大人しくなるわけでなく、また次の人へ決闘を挑みに行ってる。


 今下手に動いても奴の目に留まり絡まれる。


 座って黙っててもいずれはここに来る。


 八方塞がりの状態でどうしようかと焦っていると、、


 遂に僕のすぐ目の前まで来て…



 通りすぎて行った。



 たまたま彼が僕に気付かなかったのか。


 否。


 今彼は、僕の存在を認識できていないはずだ。


 そう、今僕が使っているのは潜伏魔法、『黄昏』


 『黄昏』という名前は子供の頃の僕が勝手に付けた名前なのだか、


 (いや、やっぱ恥ずかしいな。この名前。)


 こういう名前がかっこいい!!と思っていた時期真っ最中に付けたのだから仕方がない。


 いまさら名前を変えるのも、頑張って技名を考えた子供の頃の僕に申し訳ないので、このままにしてある。


 そんなこの魔法は、子供の時に身につけた、自分の魔力を最大限抑え、かつ、わずかな魔力で自分を覆い、周りと自然に同化する魔法。


 敵国へのスパイや潜伏などに向いている魔法である。


 なぜそんな魔法を僕が使えるのかというと―――


 エドワード家は山岳地帯ということもあり近所には温泉がある。


 僕も家族でたまに行くことがあったのだが、僕たちがそこに行く度、毎回と言っていいほど同じおじさんがいた。


 しかも、ただのおじさんではなく、潜伏魔法を発動させながらうろちょろしてるおじさんだ。


 僕はまだ小さかったからなぜそんなことをしていたのか分からなかったが、今なら分かる、というか分かりたくなかった。


 いやいや、それは僕の早とちりかもしれない。


 きっと大いなる目的のために必死になって身につけたのであろう。


 そんな不審者おじさんを見てたら僕も使えるようになってたわけで―――



 と、まぁ、そんな感じで修得したからか、あまりこの魔法を使うのには気が進まない、が…



 今はそんなことを言っている場合じゃない。


 僕の平穏な学園生活のスタートを、こんなところで失敗していられないからね。



 そして俺に気付くことなく通りすぎていった男子生徒は、相変わらず新入生に絡みまくっていた。

 

 だが、それも時間の問題で、遂に騒ぎに気付き駆けつけた学園の関係者と思われる人に拘束されていた。


 (あ、やっと捕まった。というかみんなスルースキル高くない??)


 そんなことを考えながら、ひとまず息を吐く。



 「ふぅ~」



 なんかこの魔法使うと息が詰まるんだよね。


 そうして、一部始終を見届けた僕は魔法を解き、



 「入学式前からこんなんで大丈夫か、、?」



 そう、愚痴をこぼすのであった。



 






 


 











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