第6話ルビーナとの別れそして新たな出会い

3人の魔女が態勢を整えて迫る。彩子は深く息を吸い込み、心を落ち着けた。彼女は自分の光の力と時を司る守護者の力を解放するための覚悟を決めた。ルビーナの声が頭の中に響く。


「彩子、今よ。」


指輪が眩しい光を放った。


「自分の光の力と時の力を信じて。」


彩子は胸の中に眠る光の力と時を操る力を感じ取り、それを解放するために集中した。彼女の体から光と時を操るエネルギーが放たれ、森の中を照らし出した。


「そんな…!」テラノアが驚きの声を上げた。「これがミリディアの力と時の力…!」


アウラも驚きを隠せない。ノクティスは闇の力をさらに強め、彩子に向かって放った。黒い稲妻のようなエネルギーが彩子に襲いかかるが、彩子の光と時の力がそれを跳ね返し、3人の魔女たちを後退させた。


アウラは冷たい笑みを浮かべ、彩子に向かって手をかざした。「魂の共鳴」の力を使い始めると、彼女の手から放たれるエネルギーが彩子に触れた。彩子の記憶や感情がアウラに吸い取られる感覚が広がる。しかし、彩子はその干渉に抗い、自らの意志でそれを拒絶した。


「私の魂を操ることはできないわ、アウラ!」彩子は強く叫び、光の力をさらに強めてアウラを押し返した。アウラは驚きの表情を浮かべ、後退する。


次に、テラノアが大地の支配の力を発動した。地面が激しく揺れ動き、巨大な岩の壁が立ち上がって彩子を囲む。植物が急速に成長し、彩子を絡め取ろうとする。だが、彩子は時の力を使い、植物の成長を一瞬で止め、岩の壁を時間の流れで風化させた。


「大地の力も私には通じないわ!」彩子の声が響く中、ノクティスは闇の支配の力を使い、周囲に濃密な暗闇を作り出した。視界を奪われた彩子は一瞬動揺したが、彼女の光の力が暗闇を打ち破り、再び明るさを取り戻した。


ノクティスは影を操り、鋭い矢のように彩子に向かって攻撃を仕掛ける。しかし、彩子の光の奔流がそれを跳ね返し、ノクティスの攻撃は無効化された。


「行くわよ、ルビーナ!」彩子は叫び、全力で光と時の力を放った。光の奔流と時間の流れが3人の魔女たちを襲い呑み込んで、その力を無力化する。魔女たちは必死に抵抗するが、時を司る力の前には歯が立たない。


「これで終わりよ!」彩子は時の力に光の力を溶け込ませ練り上げるように回し、光と時間の渦を引き起こした。魔女たちはその力に引き込まれ、消え去った。


戦いが終わり、静寂が戻った森の中で、彩子は疲れ果てた様子で立ち尽くしていた。ルビーナが優しく声をかけた。


「よくやったわ、彩子。これでミリディアの力と時の守護者の力は完全にあなたの力よ。」


突然、彩子の指にはめられていた指輪が輝き熱を持ち始めた。光が収まると熱も無くなり、指輪は小さな妖精の姿に変わっていた。妖精は男の子で、輝く瞳といたずらっぽい笑顔を浮かべていた。


「あなたが、私の新しいマスターなのね。」妖精が笑顔で言った。「私はルビーナの力と記憶を持つ妖精、これからもあなたを助けるわ。」妖精は可愛くウインクをした。


彩子は驚きと喜びを感じつつ、妖精を見つめた。


「ねぇ、名前を頂戴。契約しましょう。」


彩子は妖精を改めてじっと見つめた。妖精は男の子で……確かに男の子だと思う。けれども妖精の髪は鮮やかなオレンジ色で髪を一つの三つ編みにして肩からたらしている。何気につけている柔らかなパステルグリーンのリボンが可愛い。良く見るとリボンには細かな刺繍が施されていて小さな花の模様が浮かび上がる。


妖精のシャツは薄いクリーム色で、襟元には同じくパステルグリーンのリボンが結ばれている。シャツの袖口と裾にはレースがあしらわれており、動くたびに揺れる。その上に、オレンジ色の小さなボタンが並んでいる。ズボンはシャツと同じくクリーム色で、膝の部分にリボンと同じ色の刺繍が入っている。リボンと合わせたシャツとズボンがとても似合っている。


(うん、ワンピースではないのね。)妙に納得して頷いた。


「うん。決めたわ。あなたの名前はリオよ。いいかしら?」彩子は妖精に聞いた。


「まあ。ありがとう。とても素敵な名前よ。」リオが喜んで空中でクルクルと舞った。


リオは活発で好奇心旺盛な性格で、いつも新しい冒険を求めている。しかし、その可愛らしい外見とは裏腹に、リオは意外と冷静で、困難な状況でも落ち着いて対処することができる。ルビーナの要素もしっかり受け継いでいる。


リオと契約した彩子は、これから大いなる力を得るための決意を新たにした。


「ありがとう、彩子。これからも一緒に頑張りましょう。」リオがニッコリ笑って彩子に言った。


そうして、彩子とリオの大いなる力を手に入れるための新たな試練が始まった。彼女はミリディアの力と時の守護者の力を完全に使いこなした。しかし、気になっていることもあるのだ。大いなる力とは何なんだろうか?ミリディアの記憶を探っても具体的なことはわからない。


考え事をして止まってしまった彩子をリオは静かに見守っていた。ふと彩子は自分を見つめているリオの視線を感じ、リオをみた。優しくも強い眼差しで彩子を見つめているリオは、決心したように頷き、彩子に聞いた。


「聞きたいことがあるんでしょう?」 「答えられることは答えるわ。」


リオの言葉に、彩子は気になっていることを尋ねてみた。


「ねえ、大いなる力って、なんなの?」


彩子の問いかけにリオは、 「そうね、ちゃんと話をしたほうがいいわね。」といって彩子の肩にちょこんと座った。


「もともと、地球人だった彩子には多分、こういったほうがわかりやすいかしら?大いなる力はね、森羅万象のことよ。」


彩子は、一瞬頭がフリーズした。(え?え~~待って待って!あの孫たちがゲームでやっていた?なんかわけわかんない能力?え?)思わず「嘘!本当にそんなものあるの?」とマジで聞いてしまった。いや、時を操る力も大概だとは思ってはいるけど森羅万象?余りの事に頭が追いついていかない。


リオは話を続けた。「もちろん、すぐに手に入るわけじゃないわよ?」 「私はまだ生まれたての妖精でしょう?これからあなたの力で私を成長させてもらうのよ。そして精霊になるの。精霊へと成長しながら、星の女神、月の女神、太陽の女神の試練を受けるの。そして、私と私を成長させた彩子がそれぞれの試練を乗り越えた時に扉が現れるのよ。それから先は神の領域だから私にはわからないけど、多分……まだ何かあるのかもしれないわねぇ。でもとりあえずは、そこまでいかなきゃならないわね。」


森羅万象は、自然界のあらゆる現象を操る力だ。大地を揺るがし、風を呼び、雨を降らせることができる。この世の全てが森羅万象だと言っても良い。自然現象や宇宙の物理現象。生物の相互作用、哲学や時間と歴史など。


何かサラリと恐ろしいことをリオが言っている。いやいや、いらないから。彩子はそう思った。それなのに、ミリディアの記憶がやる気満々なのだ。受け継いだミリディアの記憶が熱く滾っている?


「はあ~~」と彩子はため息をついた。(ここまできて「もういいわ」は通じないわよね。)諦めて森羅万象に挑むことを決意した彩子だった。



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