第7話星の女神の国へ
彩子は決意を固めたものの、その重さに少しの不安が心の中に広がっていた。森羅万象という途方もない力を手に入れるための試練は、想像を超えるものになるだろう。彼女は深呼吸をして気持ちを落ち着けると、リオに尋ねた。
「まず、どこから始めればいいのかしら?」
リオは空中に舞い上がり、光を放ちながら答えた。
「そうねぇ~最初に向かうべき場所は、星の女神の国よねぇ。天空に浮かぶ無数の星々が輝く美しい場所だと伝えられているわぁ。」
星の女神の加護を受けた者だけが入ることが許される神聖な国であり、そこでは星の力が満ち溢れているという。彩子はリオの言葉に頷いた。
「星の女神か…。彼女の試練がどれほど厳しいものになるか想像もつかないけど、やるしかないわね。」
リオは微笑んで彩子の肩に降り立ち、安心させるように言った。
「大丈夫よぉ、心配しないで。あなたはすでにぃミリディアの力と時の守護者の力を持っているのよぉ。自分を信じて進むのよぉ。」
彩子はリオの言葉に勇気をもらい、星の女神の国へと向かうための準備を整えた。リオが地図を広げ、彩子に道を示す。
「星の女神の国に行くにはね~この星の道をたどらなければならないのよぉ。地上からわぁ直接行くことはできないのよ。まず、星の道を見つけてぇ、そこを通っていくのよ~。」
彩子は頷き、星の道を探し始めた。リオの指示に従って進むうちに、森の中に微かに輝く星のような光が見えてきた。それはまるで空の星が地上に降りてきたかのように美しい光景だった。
「これが星の道ね。」彩子が小さく息を漏らした。「そうよぉ。この道を進んで行けば、星の女神の国にたどり着くはずだから。気をつけてね、途中で迷わないようにねぇ。」リオが彩子に優しく微笑みかけた。
二人は星の道を慎重に歩んでいった。道は次第に細くなり、周囲の景色も変わり始めた。木々の間から見える空がますます星で埋め尽くされ、やがて彼らの足元にも無数の星が瞬くようになった。道の果てに、輝く門が現れた。それは星の女神の国への入口だった。彩子が門に手をかざすと、静かに開かれた。中に広がるのは、夜空のように暗くも美しい世界。星々が光り輝く中、遠くに大きな宮殿がそびえているのが見えた。
星の女神の国宮殿に近づくと、星の守護者たちが彩子を迎え入れた。彼らは12人の星の力を持つ者たちで、星の女神を守り、国を統治している。
「あなたが彩子様ですね。お待ちしておりました。」星の守護者の一人が言った。
「ええ、私は彩子です。この国に来たのは、星の女神の試練を受けるためです。」
「そうですか。この国にはもう一人、聖女がいます。日本という異世界から召喚された少女です。星の女神の試練には彼女の力が必要です。」
彩子はその言葉に驚きつつも、その少女についての話を聞いた。
「その聖女はどこにいるのですか?」
「宮殿の奥に住んでおります。しかし、彼女はこの国の人々や星の女神に対して、何か思うところがあるようです。協力的ではなく、何も言わずに距離を置いています。」
リオが小さく頷いた。
「星の女神の試練を受ける為にもぉ、その少女に会ってみるべきかもしれないわね~。彼女の心の内を知ることができれば、彩子にとっても何かの助けになるかもしれないわよぉ。」
彩子はリオの言葉に頷くと、少女に会いに行くことを決めた。宮殿の奥深くへと進み、やがて少女が住む部屋にたどり着いた。彩子がドアをノックすると、中から静かな声が聞こえた。
「どうぞ。」
彩子が部屋に入ると、そこには黒髪の少女が座っていた。彼女の瞳は深い憂いを帯びており、心の中に何か重いものを抱えていることが見て取れた。
「こんにちは、私は彩子。じつは、日本からの転生者なの。」
彩子が自己紹介すると、少女は一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに無表情に戻った。
「私は、ただの召喚された者で、星の女神が望む聖女の役割を果たすつもりは無いわ。」
彩子は彼女の言葉に驚きつつも、その理由を探ろうとした。
「なぜそんなにこの国や星の女神を嫌っているの?」
少女は彩子を見つめ、そして叫ぶように答えた。
「あたりまえでしょう?この国の人々や星の女神は、私を無理やりこの世界に連れてきたのよ。拉致監禁しておいて、彼らは私を勝手に聖女にして期待を押し付ける。私の意思を無視して聖女の役目を果たせと言うのよ。そして帰れないからこの国の為に聖女として生きていくしかないのだと言うのよ?笑顔で!私は彼らを信用しないし、協力するつもりもないよ。」
彩子はその言葉に胸が痛くなった。自分もまた、この世界で様々な困難に直面してきたけれど彩子にはルビーナが居たし拉致監禁で、家族と引き離されたわけではない。まぁ、多少強引な転生だったけど。
「わかるわ、あなたの気持ち。誘拐と変わらないわよね。でも、私も星の女神の試練を乗り越えなければならないの。あなたの力を貸してくれないかしら?」
少女はしばらく考え込んだ後、キッパリと言った。
「悪いけど嫌よ。関係ないし私はこの国やこの世界の為に何もする気はないわ。」
彩子は少女を真っ直ぐ見つめると静かに小さな声で、けれどハッキリと言った。
「私ならあなたを元の地球に、それも召喚されるその瞬間でも帰して上げられるわ。」
「え?」少女は一瞬何を言われたかわからなかった。
「本当なの?ホントに帰れるの?どうして?だって帰れないって。召喚出来ても……」興奮のあまり言葉が続かない。
「落ち着いて。嘘じゃないから。とにかく落ち着いて。」
少女は息を整えると周りを見回し、溜め息をついた。
「ごめんなさい。びっくりしすぎて。大きな声をだしたら気づかれるわ。」
「とりあえず座って話しましょう。」
ソファに並んで座り、リオは彩子の肩から降りて、テーブルの端に座った。
「どういうことか説明してくれる?」少女が言った。
彩子はリオのことやこの世界に転生したいきさつ、時の番人の力の事を手短に説明した。
「時を操る?時空を自由に行き来出来る…」少女は呟くように言うと、ポロポロと涙をこぼした。「帰れる……」嗚咽を漏らしながら「お母さん--お父さん--」と声を震わせた。
彩子は黙って少女の背中をさすって落ち着くのを待った。しばらくして落ち着いた少女は「ごめんなさい。もう大丈夫。」と言って微笑んだ。
彩子は少女に「あなたを地球に帰す前に星の女神の試練に協力してほしいの。ごめんなさい。なんか交換条件みたいなことを言って。」と申し訳なさそうに言った。
少女は頷いて「大丈夫よ、もちろん。帰してくれるなら何でもするわよ。」と言った。
こうして、彩子とリオは少女の力を借りて、星の女神の試練へと向かうことになった。試練の内容はまだ不明だが、彩子の心には、新たな決意と仲間との絆が芽生えていた。彼女はこの試練を乗り越え、さらなる力を手に入れるため、全力を尽くし、そして少女を必ず地球に帰すのだと心の中で誓った。
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