第5話銀髪の魔女 - 新たな脅威と真実への扉
月明かりが照らす薄暗い部屋で、3人の魔女たちは集まっていた。魔女の中でも大魔女と呼ばれている4人のうちの3人だ。彼女たちは冷たく静かな表情を浮かべ、その裏に焦燥の色を隠していた。テーブルの上には古びた書物と魔法の道具が散乱しており、部屋全体には張り詰めた緊張感が漂っていた。
「なんか…変じゃない?」一人の魔女が言った。彼女の声には冷たさの中に、不安が混じっていた。
「わからない。でも、何か起こった気がする。」別の魔女が答えた。彼女の目は不安で泳ぎ、手の中の魔石をじっと見つめていた。
突然、魔石が眩い光を放ち、一瞬で粉々に砕けた。大魔女たちは驚きの声を上げ、光と粉々になった魔石に見入った。
「これは…!」一人の魔女が叫んだ。「まさか…ミリディアの呪いが解けたの?」
「ありえない…呪いが解けるなんて。」別の魔女が信じられない様子で呟いた。
「あの時、確かに呪いを施したはず。どうして!」一人の魔女が怒りを滲ませて叫んだ。
「誰かが…その呪いを解いたのよ。」最年長の魔女が冷静に言った。「ミリディアの魂が……解放されたのならば…」
言葉が途切れると、部屋の空気が一層重くなった。彼女たちは互いに視線を交わし、状況の深刻さを認識した。 「計画が全部ダメになるわけ?扉はどうなるの?」 「落ち着いて。」最年長の魔女が手を挙げ、沈黙を促した。「ミリディアの魂の解放が確認された今、私たちは他の手を考えなければならないわ。彼女の光の力を手に入れるための方法を探さなければ。」 魔女たちは再び静かに考え込み、計画の立案に取り掛かる。ミリディアの魂が解放されたことによって、新たな脅威が現れることを予感しつつ、彼女たちはその対策を講じる必要があると痛感していた。
一方、彩子は日常の中で平穏な時間を過ごしていた。ミリディアが呪いから解放されたことに、彩子は心から安堵し、彼女は新たな生活に希望を見出していた。しかし、暗雲は徐々に近づいていた。 ルビーナにはわかっていた。呪いを解いた時に3人の魔女たちに彩子の存在が知られたこと。そして、3人の魔女たちがおそらく彩子を狙い襲ってくることも。ルビーナはかつてのミリディアとの会話を思い出していた。 「ルビーナ。私の力を解放出来ればこの世界の全てを手に入れられるのよ?でも呪いのせいで解放どころかまともに使うことも出来ない。」ミリディアは悔しそうに続けた「闇を抑えるだけで精一杯なのよ。だからルビーナ、後継者が見つかったら、まずね時の支配者として覚醒させてそれから………」ルビーナも世界の全てがなんなのかはわからない。ミリディアは教えてはくれなかった。ただ、後継者にはある程度の段階を踏んで成長させる事を強く言われた。そうすればおのずとわかると笑った。(3人の魔女たちが彩子の引き継いだ力を狙ってくるのは必然よね。警戒を強めないと危ないわね。彩子にも近い内に、ちゃんと話をしたほうがいいわよねぇ)ルビーナは思った。
ある夜、彩子はふと目を覚ました。外は月明かりが静かに部屋を照らしている。彼女はベッドから静かに起き上がり、窓の外を見ると、薄暗い森の中に奇妙な光が瞬いているのが見えた。 「ルビーナ。何か変なものが見えるわ。」彩子の声はかすかに震えていた。何かが起こる予感が彼女の胸に広がった。不安と興奮が入り混じった。 「何の光なの?わからないけど良くない力を感じるわよ。これはもしかしたら…」とルビーナが答えた時、彩子は一瞬立ち止まった。心の中では、進むべきか留まるべきかを葛藤していた。何か危険なことが待ち受けていると直感していたが、その光の正体を確かめずにはいられなかった。 「だけど、確かめなきゃ。」彩子は小さな声で言い、決意を固めた。自分の内なる恐れに打ち勝つために、彼女は一歩を踏み出した。何かを確かめたいという強い気持ちが彼女を突き動かしていた。 「彩子!駄目よ!駄目!」ルビーナが止めるのも聞かずに進む彩子に、ルビーナはため息をついた。彩子の決意の固さを感じ取り、彼女の側で守るしかないと覚悟を決めた。 その光は次第に強くなり、彼女を誘うように深くへと導いていた。やがて、森の中ほどにある古びた石碑の前にたどり着いた。その石碑には、見慣れない文字が刻まれて光っていた。 「これは一体…?」彩子が不安げに呟いた瞬間、突如、石碑から放たれた光が収束すると、森の中に三つの異なる気配が立ち込めた。彩子の目の前に、それぞれ強大な力を纏った三人の魔女が姿を現した。 最初に現れたのは、長いストレートな白髪を持つ年長の魔女、アウラだった。彼女の周りには、幾多の魂が蒼白い光となって漂っている。その蒼い瞳は深い知恵を湛え、彩子を見つめる眼差しには、彼女の魂の奥底まで見通すような鋭さがあった。 「お前が…ミリディアの呪いを解いた者か」アウラの声は、まるで無数の魂が同時に語りかけるかのように、不思議な残響を伴っていた。 次に現れたのは、深緑の長い髪が軽くウェーブしている魔女、テラノアだった。彼女の足元では大地が僅かに揺れ、周囲の植物が突如として成長を始めた。テラノアの手には、大地の力が凝縮されたかのような光沢を放つ宝石が握られ、真っ赤に燃えるような瞳が彩子に向けられていた。 「この森の大地が、お前の存在を我らに告げたのだ」テラノアは低く唸るような声で言った。 最後に姿を現したのは、漆黒の衣をまとった魔女、ノクティスだった。フードから時折見える髪は馴染みのある黒髪だったが、酷い癖毛のようにあちこちにはねているようだ。彼女の周りには常に闇が渦巻いており、その姿は月明かりの中でさえ、はっきりとは見えなかった。ノクティスの黒目は輝き、その瞳に彩子の姿が映った。 「私がミリディアに呪いをかけたのよ…そしてお前はその呪いを解いた。」ノクティスの声は闇そのもののように冷たく、聞く者の心に恐怖を植え付けた。 三人の魔女たちは、それぞれの力を纏い彩子を取り囲んだ。
彩子はすぐに、この三人がミリディアを呪い苦しめた魔女たちだとわかった。
アウラの周りでは魂の光が明滅し、テラノアの足元では植物が蠢き、ノクティスの影からは闇のエネルギーが溢れ出ていた。 「ミリディアの光の力を手に入れたというの?」テラノアが嘲笑うように問いかけた。 「そうよ。このまま帰ってくれるならば何もしないわ。けれども私の邪魔をするなら全力で阻止する。」彩子の言葉にルビーナも力強く光った。 「愚かな。ミリディアの力だけで私達に勝てると思っているの?」アウラが冷たく笑った。 「巨大な力だからこそミリディアに呪いをかけてまで欲しかったんじゃないの?」彩子の言葉に3人の魔女たちは苦々しい顔をした。 「成功したのに!あと少しで手に入ったのに!お前が、お前さえいなければ!」ノクティスが叫び、闇の力が一気に膨れ上がった。 彩子は身構えた。ルビーナが「来るわよぉ、彩子。」 と言ったとたんに、森全体が闇の魔力で満ち溢れた。アウラの魂の共有により互いの力を共有した3人の魔女たちは機敏さと強さが上昇していた。 光と闇の力が激しくぶつかり合う中、彩子は意識を急激に広げていった。「ルビーナ!」彩子は叫んだ!「わかってるわよぉ」ルビーナが光り彩子と魔力を重ねた。時の力は彩子の目の前で、時空の流れを可視化していく。過去、現在、未来が一つの大河となり繋がり流れていき、彼女の周りを取り巻いていた。彩子は静かに素早く呼吸を整え、流れる大河に溶け込むように意識を合わせた。 三人の魔女たちは、彩子の変化に気づき、一瞬躊躇した。 「まさか、こんなに早く時の番人になっているとは!もう…もう時の力を使いこなしているの?」アウラが驚きの声を上げた。
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