第5話 記憶の再現と異世界の謎

脳波の解析


1ヶ月後の土曜日、精神科医の松田真人は、18歳の音楽の天才である諸星煌から、彼が最近見る夢について話を聞いていた。


「先生、最近、非常にリアルな夢を見るんです。夢の中で、僕は全く別の世界にいて、『アポロン』と呼ばれているんです」と諸星は告白した。


松田はこの話に強い興味を持ち、さらに詳しく聞いた。「その世界では、空がもっと広く、星が手に届きそうなほど近いんです。音楽が風のように流れていて、すべてが調和している感じがします」と諸星は続けた。


その話を聞いて、松田はすぐに物理学者の小泉悟志に連絡し、この件を共有した。彼らは理化学研究所に集まり、諸星の協力のもと、最新技術を使った記憶再現の実験を計画した。この技術は、大阪大学で開発された脳波を映像化するシステムをさらに進化させたもので、脳内のビジュアルデータを映像として再現することが可能だった。


記憶の再現

実験は慎重に進められ、ついに結果が出た。脳波を解析し、映像に変換した結果、広大な異世界の風景が映し出された。驚くべきことに、その映像は諸星の夢とほぼ一致していた。神殿や「アポロン」と呼ばれる声など、夢の中で見た風景が忠実に再現されていた。


「この結果を見てください。君の記憶が、実際に存在する別の世界のものかもしれない」と小泉は興奮気味に言った。


高原彗も興奮を抑えきれず、「これが本当なら、我々の研究は飛躍的に進展するはずです!」と声を弾ませた。


諸星の体験

諸星はさらに、満月の夜に異世界へ行く体験について語り始めた。目を輝かせながら、その描写は非常に鮮明で、まるで現実そのもののように感じられると話す。彼は夢の中で出会った人物や冒険についても詳しく語り続けた。


「その夢の中で、特定の場所や人物を覚えていることはあるか?」と小泉が尋ねると、諸星は考え込んでから頷いた。「はい、でもその記憶は霧がかかったようで、ぼんやりしていて…。まるで手を伸ばすとすり抜けてしまう感じなんです」と答えた。


そして突然、何かを思い出したように目を見開き、「そうだ…!夢の中で、誰かが『次の満月の夜、あの神社に集まれ』と囁いていた気がします」と話した。


WEB会議での李文強との連絡

その後、小泉は量子力学の権威である李文強に連絡を取った。李文強もこの件に興味を持ち、WEB会議が設定された。


「最近のデータを共有してもらったが、非常に興味深い結果が出ている」と李文強は画面越しに言った。


小泉は脳波データを示しながら、「これが実際に異世界の映像だとすれば、大きな発見です。どう思いますか?」と尋ねた。


李文強は慎重に答えた。「もちろん、夢の一部かもしれませんが、考慮に値するデータです。この脳波データに見られる異常なパターンは、無視できません。詳細な調査が必要です。」


科学的アプローチの確認

松田は冷静な視点から疑問を投げかけた。「これはただの夢に過ぎない可能性もあります。過去に、麻薬依存症患者が現実とは異なる世界を見たと報告した事例もあります」と指摘した。


小泉もその意見に同意し、「科学的根拠に基づいて、慎重に検証を進める必要があります」と応じた。


彼らは、一歩ずつ慎重に異世界の謎を解明しようと誓い合い、さらなる研究を進めていくことを決めた。

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