第12話
翌朝、シュンジュの寝室の前で、おろおろしている侍女がいた。
シオンが、侍女に声をかけると、呼んでも返事がなくて、困っている、という。
シオンは、遠慮なく勢いよく扉を開けると、シュンジュが、寝台の脇でうずくまっている。小さなうめき声をあげていた。
侍女に、医者を呼ぶように伝えると、シオンは素早く、部屋の中に目を走らせる。
すると、卓の上に、牙があった。
(やはり、持っていたのか)
シオンは、卓に近寄り、牙をよく見てみると、何かで削り取ったような、小さな傷がみてとれた。
(こいつ!自分で使ったのか!!?)
部屋の外で、声がする。医者が到着したに違いない。
シオンは、咄嗟に牙を隠した。
「いかがされましたか」との医者の言葉に
「腹痛のようだ。宮廷のごちそうに、胃もたれでもしたんじゃないのか?」とシオン。
「どれ」
医者が診察している間に、見られてまずいものはないか、もう一度、部屋を見渡してみる。
すると、牙が1本、窓際に転がっている。
(こいつ、2本持ってやがったのか!)
「う~む。食あたりにしては、ちと奇妙ですな。何か、持病をお持ちとか、聞いていらっしゃいませんか?」
「いや」
「では、念のため、毒をお調べしましょう」
(は?毒?まさかこいつ、皇帝を狙ってたんじゃないよな…)
どうにも、納得のいかない事態に、シオンはため息をついた。
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