第11話

 シュンジュの話が終わり、彼を下がらせた後、焦れた皇帝が、

「どういうことだ。結局、奴は牙を持っているのか、いないのか?」と言った。


 シュンジュは、核心を突くことは言わずにいた。

 まさかこんなにすんなりと、事が運ぶとは思ってもみなかった。

 自分が、重大な情報を握っているうちは、あちらも粗末な扱いはしないだろう。

 まずは、自分がドラゴンの牙を試してみようと思っている。


 今から、5カ月前、シュンジュは、砂漠をとびだした。

 2本のドラゴンの牙と共に。

 シュンジュは知らなかったのだが、この2本の牙のうち1本は、虫歯の毒素が抜けきっていなかった。


 ドラゴンは、虫歯予防として、清潔な砂を用いて、牙を研ぐ。

 それでも虫歯になってしまったら、抜くしかない。

 虫歯になった牙は、そのままにはしておかず、砂漠に埋めておく。

 すると、虫歯の毒素が抜けた状態の牙が残る。

 虫歯の進行具合にもよるが、一番軽い虫歯でも、1年は埋めておかなければならない。

 毒素が抜けた牙を、笛に作り変える。

 この笛は、ドラゴンが暴れたときに吹くことで、鎮めることができる。

 もし、毒素が抜けきっていないものを使ってしまうと、笛の吹き手は、たちどころに干からびてしまう、という言い伝えが残っている。


 シュンジュが、商人に牙を見せても、色よい返事が返ってこなかったのは、牙に虫歯の毒素が残っていることを見抜かれていたからである。

 商人たちは、いくつもの持ち込み品を見てきており、粗悪品には、敏感である。

 虫歯が残っていると、その独特な匂いで気づいてしまうのである。


 皇帝に謁見したその夜、シュンジュは客間で、一人脂汗を浮かべていた。

 噂は、あくまで噂に過ぎなかったのか?

 臍を噛むシュンジュだった。


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