第10話

 シュンジュの疑問に答える代わりに、言ってやった。

「皇帝に会わせてやろうか」

 ぎょっ!とした顔をするシュンジュ。

「任せてくれ。ちょっとしたツテがあるんだ」

 ?マークを顔に浮かべて、戸惑っているシュンジュ。

「ヘタな仕事を選ぶより、皇帝に近い場所で、お仕えしたほうが、実入りもいいぜ」

 今の言葉に、あからさまに食いついたシュンジュ。

「本当だろうな。うまくいかなかったら、恨むぞ」

「まあ、会わせてやれることは、確実だ。気に入られるかどうかは、お前次第だがな」


 翌朝、宮廷へ向かう2人。

 衛兵に、シオンが持っている札を見せると、途端に態度を変えた。

 宦官が、出迎えに来る。

 シュンジュがここぞとばかりに、(お前って、えらい奴だったんだな)とシオンにささやく。

 シオン達は、謁見の間へ通され、そこで皇帝を待つ。

 皇帝が現れたが、陽も高い時刻だというのに、寝間着のままである。

 シオンは内心、(勘弁してくれ)と空を仰ぎ見たい気持ちだった。

 女遊びに、国家予算の4分の1も使ったことがあるぐらいなのだ。

「陛下、ご報告に上がりました」

「どうだった」

「そのまえに、一人、紹介したい男がおります」

「誰だ」

「シュンジュと申す、ドラゴンに詳しいものでございます」

「何!」と皇帝は色めき立つ。

 シュンジュは、大して慌ててはいない。おそらく、自分の胸の内を、シオンに読まれていることに、勘づいていたのだろう。

「シュンジュか。さっそく、ドラゴンの話を聞かせよ」

「もちろんでございます」

 シュンジュの眼が、怪しく燃え上がるのを、シオンは見たような気がした。



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