第9話

 シュンジュの奴、随分とはぐらかすじゃないか。

 ドラゴンの卵の世話だって?

 そういえば、私は、ドラゴンの生態については、ほとんど知らなかったな。

 シュンジュがいなければ、道すがら、調べてまわるのだが…

 いっそのこと、宮廷まで連れていくか?

 きっとこいつは、直接、皇帝にドラゴンの牙の話を持ち掛けたいのだろう。

 いいだろう。お前の企みに乗っかってやろうじゃないか。この、シオンを欺くとはいい度胸だ。お手並み拝見といこう。


 都に近づくと、砂埃の匂いは減り、その代わりに、交易と市の喧騒で耳が痛い。

 シュンジュは、いい年をして、随分とはしゃいで回り、宿に着いたら、湯あみも夕餉も無視して、眠り込んでしまった。

 隣の寝台に腰掛け、足湯を使っているとき、シュンジュが寝返りを打った拍子に、胸元から、何かが転がり落ちた。それは、寝台の向こう側へ、派手な音を立てて滑り落ちた。

 しかし、それが落ちる一瞬、私は、はっきりと見て取った。あれは間違いなく牙だ!

 やおら、シュンジュが跳ね起きた。

「み、見たのか!?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る