第2話

 汗びっしょりで、目が覚めた。

(またか…)

 このところ、同じ夢を見続けている。

 しかしながら、夢の内容は覚えていない。

 ただ、感情のレベルで、怖かったという感覚だけが、残っている。

 ハルカはシャワーを浴びに、バスルームへと向かう。


 建国25年の若き国の大統領、ハルカ・ギリネス。

 彼女は、ギリネス大佐の一人娘として、聡明に育てられた。

 大佐は、娘を賢く育てようとは思わなかった。中途半端な賢さは、小賢しくなるだけだと思ったから。聡くて先見の明がある人間に育んでやりたいと思い、実際に娘は、共和国一と謳われるほどの聡明な女性となった。

 大佐は、娘が政治の道を志すことを応援し、実際に政治家になったときに、引退を決意し、今日にいたる。


 大佐の部屋に、ハルカの主治医がやってきた。

「大佐、お嬢様はどうやら、例のことを、思い出し始めているご様子…」

「!?」

「もう一度、あの術をおかけするべきかどうか…」

「いや、もう隠すべきではないのだろう」

 大佐の顔が、翳りを帯びた。

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