第20話 見えない手 - 背後の力
UDIラボと厚生省との会談から数日が経ち、社会の関心はますますシェディング現象に向けられていた。メディアの報道は冷静さを保ちつつも、シェディングによる感染拡大とその影響に警鐘を鳴らしている。UDIラボは、政府との対話が進む中、依然として自分たちの調査と情報の信頼性を守り抜く使命感に燃えていた。
だが、その裏で、何か異変が起き始めていた。厚生省との協力体制が表向きは前進しているように見える一方で、UDIラボの動きに対して、目に見えない圧力が徐々に強まっていた。
「妙なことが起きている。」中堂はミコトに報告するため、彼女の元にやって来た。「UDIラボの関係者が、ここ数日でやたらとインタビューや問い合わせを断られるようになっている。ジャーナリストたちが急に態度を変えたんだ。」
「どういうこと?」ミコトは驚いた表情を見せた。「先週は、各メディアが積極的に取材を求めてきていたのに……なぜ急に?」
「圧力がかかっているんだろうな。政府か、それとも製薬会社か……裏で何かが動いているのは確かだ。」中堂は厳しい表情で言った。「メディアが突然手を引いたのは、何らかの大きな力が働いているからだ。」
「彼らは私たちの調査が世間に広まりすぎるのを恐れているんでしょうね。」東海林が不安そうに言った。「それに、政府が本当に協力的でいるかどうかも怪しいわ。」
「そうね、確かに。」ミコトは考え込んだ。「政府は表向きには協力を約束しているけど、実際には私たちを封じ込めようとしている可能性がある。シェディング現象の真実が明らかになれば、ワクチン政策全体が崩れるリスクがあるから。」
その時、ラボのドアが開き、久部が急いで駆け込んできた。「ミコトさん、ちょっと見てください!」彼が手にしていたのは、UDIラボのウェブサイトが突然停止されたことを示す通知だった。
「サイトが……ダウンしてる?」ミコトは驚いてモニターに目をやった。「どうして?」
「サーバーに何者かが不正アクセスを試みた形跡があるんです。今は復旧作業を進めていますが、誰かが意図的に私たちのデータを消そうとしている可能性が高い。」久部は焦りを隠せなかった。
「やっぱり……」中堂は低く唸った。「彼らはただ協力するつもりなんかじゃない。UDIラボそのものを潰しにかかっているんだ。」
「時間がない。」ミコトはすぐに決断を下した。「東海林、全てのデータを再度バックアップして。私たちの調査結果を安全な場所に保管するのよ。彼らがどんな手段を使っても、真実を隠させるわけにはいかない。」
「了解!」東海林は素早く動き出し、データを保護するための準備を進めた。
「これだけじゃない。」中堂は真剣な表情で続けた。「この状況は、単なるデータの消去だけにとどまらない。彼らはUDIラボを完全に封じ込めようとしている。つまり、私たち個人にも危険が迫っている可能性がある。」
「私たちが直接狙われる?」ミコトは冷静にその可能性を考え始めた。「ここまで来た以上、彼らは私たちを脅しにかかるつもりかもしれない。だけど、私たちは諦めるわけにはいかない。」
「そうだ、だが注意が必要だ。」中堂は慎重に言葉を選んだ。「もし私たちが狙われているなら、すべての行動を警戒しなければならない。敵がどこから来るかわからないんだから。」
その時、ミコトの携帯が鳴った。画面には、以前UDIラボに協力していたジャーナリスト、松本の名前が表示されている。彼はこの数日間、UDIラボの調査結果をメディアで取り上げようとしていたが、突然姿を消していた。
「松本さん?」ミコトは不安を感じながら電話に出た。「どうしましたか?」
「ミコトさん……聞いてくれ……俺のところにも圧力がかかってる……もう記事を出すことができないんだ。上からストップがかかってるんだ……誰がやってるのかはわからない……でも、何か大きな力が動いてる……」
松本の声は震えていた。ミコトはそれを聞いて、ますます状況が緊迫していることを感じ取った。
「わかりました、無理はしないでください。こちらで対処します。」ミコトはそう答えて電話を切った。
「松本も抑えられている……。」ミコトは言葉を失いながら、UDIラボに対する圧力がどこから来ているのかを考えていた。「私たちが立ち向かっているのは、単なる政府の圧力じゃない。もっと大きな力が背後にいるのかもしれない。」
「製薬会社か、あるいはそれ以上の……」中堂は険しい顔でつぶやいた。「奴らはこの真実を完全に葬ろうとしているんだ。」
「でも、私たちは負けない。」ミコトは静かに言った。「真実を守り抜くために、できることをすべてやるわ。彼らがどんな手段を使っても、私たちのデータを消すことはできない。」
彼らは次なる行動に向け、気を引き締め直した。外部からの見えない圧力に立ち向かうため、UDIラボは再び強固な決意を持って戦い続ける。
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