第18話 公表の瞬間 - 緊張のインタビュー
UDIラボは、メディアへの対応準備を進めながら、社会の混乱がピークに達している現状を見据えていた。シェディング現象に対する恐怖と不安は、連日ニュースのトップを飾り、厚生省や政府に対する批判は日増しに強まっている。今こそ、ミコトたちが掴んだ真実を公表し、状況を変えるべき時だった。
「準備は整った?」ミコトは東海林に確認しながら、自分自身も深呼吸をして気持ちを落ち着けようとしていた。
「すべてのデータは整理してあるし、報告書も用意したわ。」東海林が頷いた。「メディアもこちらに向かっている。あと数分で到着するはず。」
「それにしても、メディアがどう反応するかが心配だ。」中堂は腕を組みながら言った。「彼らがこちらの意図を正しく伝えてくれればいいが、視聴率を優先して過剰に煽る可能性もある。」
「だからこそ、私たちがコントロールする必要があるのよ。」ミコトは毅然とした口調で答えた。「今は混乱しているけど、私たちの調査結果と提案する対策が、パニックを抑えるために必要だと信じている。真実が曲げられないように、私たちがしっかりとした根拠を示して対応しなければ。」
その時、ラボのドアが開き、カメラマンと記者たちが慌ただしく入ってきた。彼らはUDIラボの設備と、真実を暴こうとするメンバーたちに興味津々だった。
「よろしくお願いします。」ミコトは微笑みながら、メディアチームを迎え入れた。「私たちは、シェディング現象に関するこれまでの調査結果を公表します。それは、レプコンワクチンがもたらした副作用の一つであり、私たちの調査によって明らかにされたものです。」
記者たちはメモを取り、カメラが回り始めた。ミコトは深呼吸し、今こそUDIラボが掴んだ真実を伝える瞬間が来たことを感じた。
「まず、私たちが行った実験と調査について説明します。」ミコトはスクリーンに映し出されたグラフやデータを指しながら続けた。「シェディング現象は、レプコンワクチン接種者から放出された有害な粒子が、未接種者に影響を与えることを指しています。これは接種者の呼気や汗を通じて拡散し、周囲の人々に感染性物質として作用することが確認されました。」
「感染性物質?」一人の記者が疑問を挟んだ。「それはウイルスのようなものですか?そして、なぜこれがワクチンの副作用だと断言できるのですか?」
「はい、ウイルスのように他者に影響を与える粒子が存在します。」ミコトは冷静に答えた。「私たちの調査では、レプコンワクチン接種者から放出される粒子の成分を分析し、それがmRNA由来のものであることを確認しました。接種者の体内でワクチンが自己増殖し、その結果として未接種者に影響が広がるという形です。」
「その影響とは具体的に何ですか?」別の記者が続けて尋ねた。「今、街中ではさまざまな症状が出ているようですが、それと関連性があると?」
「はい、症状には筋肉痛、倦怠感、発熱、免疫系の異常などが含まれます。」ミコトは資料を見せながら説明を続けた。「これらの症状は、シェディングによる影響の可能性が高いと考えられます。私たちはこれらの症状がワクチン接種者の周囲に集中していることを確認しており、他のウイルスや疾患とは明らかに異なるパターンを示しています。」
会場内は静まり返り、記者たちは次の質問を考えているようだった。だが、誰もがこの新たな事実に衝撃を受けていた。ミコトはその沈黙を感じながら、今こそUDIラボが示した真実が重く受け止められていることを実感していた。
「では、今後、私たち市民はどう対処すればいいのでしょうか?」一人の記者が声を震わせながら質問した。「ワクチン接種者との接触を避けるべきなのでしょうか?」
「私たちが提案するのは、冷静な対応です。」ミコトは毅然と答えた。「まずは、換気や個人の健康管理、そして症状が出た場合の早期の医療相談など、基本的な対策を徹底することです。また、ワクチン接種者を差別したり隔離するのではなく、共同で安全な環境を作る努力が必要です。私たちは対策を講じつつ、さらに詳細な調査を進め、社会全体が安全で健康な生活を続けられるようにサポートしていきます。」
取材を終えた後、記者たちはその場を去り、UDIラボ内には再び静寂が戻った。ミコトは深く息をつき、肩の力を抜いた。
「どうだった?」中堂が声をかけた。
「うまくいったと思う。」ミコトは小さく頷いた。「あとは、彼らがどう伝えるかだ。私たちは最善を尽くしたけど、情報がどう受け取られるかはもう私たちの手を離れている。」
「だが、これで一歩前進した。」東海林が静かに言った。「真実は少しずつ広がり始めている。私たちの声が届けば、状況は変わるかもしれない。」
「そうね。」ミコトは、彼らの手にあるデータを見つめながら答えた。「でも、これからが本当の勝負よ。彼らがどう動くか、そして私たちがどう守り抜けるか……。」
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