第17話 広がる感染、強まる批判
日が経つごとに、街は一層騒然とした雰囲気に包まれていった。シェディング現象による感染が次々と報告され、症状を訴える未接種者が増加していた。ワクチン接種者とその周囲で起こる異常事態に、多くの人々が恐怖と不安を抱き始め、メディアもその動きを敏感に捉えた。
「最新の報告では、シェディング現象による感染が疑われる患者が急増しているということです。未接種者の間で免疫異常や倦怠感、筋肉痛などの症状が報告されており、全国的に広がりを見せています。」ニュースキャスターの声がテレビから流れ、UDIラボのミコトたちも耳を傾けていた。
「ついに、世間もこの問題を無視できなくなってきたか……」中堂がモニターを見つめながら言った。「この現象を隠しきれなくなっているのは明らかだな。」
東海林がデータをチェックしながら、画面に映る街の混乱を見つめていた。「ここ数日の報道は、シェディングによる感染の疑いを取り上げるものが増えているわ。厚生省も対応に追われているはず。」
その通り、政府や厚生省に対する批判が急速に高まりつつあった。SNSやメディアでは、「なぜレプコンワクチンのリスクを隠蔽したのか」「厚生省は何をしているのか」という声が日に日に増え、ニュース番組では有識者たちが厚生省の対応を厳しく批判する様子が連日放送されていた。
「厚生省は、このシェディング現象について早期に警告を出すべきだったはずです。しかし、彼らはワクチンの安全性を優先し、問題を隠蔽してきた疑いがあります。」テレビに映る医療ジャーナリストが鋭い口調で指摘している。
「もう彼らも逃げ場がない。」中堂は冷静に言った。「シェディングの影響がこれだけ広がれば、政府も製薬会社も責任を取らざるを得ない。」
「でも、ここからが本当の戦いね。」ミコトは厳しい表情で続けた。「批判が強まっている今こそ、私たちが掴んだ真実を公にし、状況を変える必要がある。政府が対応に追われる前に、UDIラボが持っている情報を提示することで、社会全体を守るための対策を立てるべきだわ。」
「問題はタイミングだ。」東海林が心配そうに口を挟んだ。「これだけ混乱している中で、私たちが情報を公開すれば、さらにパニックが広がる可能性もある。」
「それでもやらなければならない。」ミコトは力強く言った。「私たちはシェディング現象が現実であることを明らかにした。これ以上、放置しておくわけにはいかない。政府や厚生省が本格的に動く前に、正しい情報を広める必要があるわ。」
その瞬間、ラボの電話が鳴り響いた。ミコトが受話器を取ると、彼女の顔が険しくなった。
「どうした?」中堂が尋ねる。
「メディアからだ。ついに、私たちの調査に注目している。取材を受けて、シェディング現象について公表してほしいと言っているわ。」
「それは好機かもしれないな。」中堂がうなずく。「だが、リスクも大きい。彼らがこの情報をどう扱うかによる。」
「私たちが情報をコントロールするしかない。」ミコトは決意を込めて答えた。「メディアに訴えるのは賭けだが、私たちの研究を信頼できる形で伝えられれば、混乱を抑えつつ真実を伝えられる可能性がある。」
「具体的にはどうする?」東海林が尋ねた。
「まずはメディアに正確なデータを提供し、私たちが行った調査と実験の信頼性を裏付ける証拠を提示する。シェディング現象が確実に存在すること、そしてその対策をどうすべきかを明確に示すわ。恐怖を煽るのではなく、冷静な対応を促すために。」
メディアとの取材の準備を進める中、UDIラボ内には再び緊張感が漂い始めた。政府の対応が遅れる一方で、彼らが伝える真実が状況をどう変えるかは、今後の行動にかかっていた。
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