第14話 包囲網

UDIラボは緊迫した空気の中、時間との戦いを繰り広げていた。外部からの圧力が急速に強まり、ラボに調査チームが到着するまでの時間が限られていることは明らかだった。メンバーたちは、データの保護と自身の安全を確保するために、全力を尽くしていた。


「進捗はどう?」ミコトは急いで東海林の隣に駆け寄り、データのバックアップ作業を確認した。


「あと少し……でも、この量のデータを暗号化しながらバックアップするのは時間がかかります。」東海林は焦りを隠せない表情で答えた。「でも、なんとか間に合うようにするわ。」


「中堂、調査チームが到着するまでどのくらい?」ミコトが背後に控えている中堂に声をかけた。


「30分もない。調査チームが到着したという情報が既に流れている。すぐにでも来るはずだ。」中堂はラボのセキュリティカメラを確認しながら答えた。


「彼らが到着する前に、すべてのデータを移し終える必要がある。」ミコトは強い決意を込めて言った。「何があっても、この真実を守り抜かなければならない。」


外部では、調査チームがUDIラボに向かって進んでいるという報道が流れ始めていた。製薬会社と厚生省の合同チームは、真実を隠蔽するためにラボの証拠を押収し、活動を停止させることを目的としている。その情報を得たメディアが押し寄せる中、UDIラボの周囲は異様な状況となっていた。


「状況は最悪だな……。」中堂が低くつぶやく。「彼らの狙いは明白だ。俺たちの活動を完全に封じ込めるつもりだ。」


「でも、私たちは負けない。」ミコトは強い口調で言い返す。「彼らがどう動こうと、私たちは真実を伝える。」


その時、ラボのドアを叩く音が聞こえた。全員が一斉に緊張し、動きを止めた。調査チームが到着したのだ。


「時間切れか……。」中堂が腕を組み、厳しい表情で言った。


「待って。」東海林が急いでパソコンの画面を確認する。「バックアップがもうすぐ終わる。あと少しだけ時間が欲しい!」


ミコトは深く息を吸い込んだ。「東海林、頼むわ。彼らを引き留める方法を考える。中堂、一緒に行きましょう。」


ミコトと中堂はドアの方に向かい、調査チームを迎える準備をした。外にはスーツ姿の調査官たちが、厳しい表情で立っていた。


「UDIラボの調査に来ました。」リーダーと思しき調査官が冷静に言い放つ。「ここで行われた研究と、すべてのデータを確認するため、すぐに協力してもらいたい。」


「もちろん、私たちも協力するつもりです。」ミコトは落ち着いた声で答えた。「ただ、今内部で重要な作業を進めています。それが終わるまで少しだけ時間をください。すぐに中に案内します。」


調査官は冷静ながらも厳しい視線を向け、腕時計を見た。「時間はない。我々には命令があり、それに従ってすぐに作業を開始しなければならない。」


「お願いです。データの保護は私たちにとっても重要です。それを台無しにすることはお互いにとって無益です。」ミコトは丁寧に言葉を選びながら、時間を稼ごうとした。


調査官は少し考え込むが、やがて深いため息をついた。「わかりました。少しだけ時間を取りますが、無駄な行動は許されません。」


ミコトと中堂は内部に戻り、東海林の元に駆け寄った。「どう?まだ時間が稼げるわ。」


「もうすぐ……あと数分で完了する。」東海林の手は汗ばんでおり、緊張が頂点に達している。


「なんとしても持ちこたえるんだ。」中堂が静かに励ました。


ついに、バックアップが完了したというメッセージがパソコンの画面に表示された。東海林が大きく息をつき、手を離す。「終わったわ!」


「よし、データは安全だ。」ミコトは大きくうなずき、全員に目を向けた。「これで、彼らにデータを奪われることはない。私たちは次のステージに進める。」


その瞬間、ドアが再び激しく叩かれ、調査官たちが中に入ろうとしていた。


「行こう、時間だ。」中堂が静かに言った。「真実を守り抜くための次のステップに進むんだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る