第13話 圧力の影

会見後、UDIラボには重苦しい空気が漂っていた。真実を公表したことで、ようやく人々に事実を伝えることができた。だが、その安堵もつかの間、UDIラボのメンバーたちは次々と差し迫る危機の影に気づき始めていた。


「ミコト、ちょっと来てくれ。」中堂が神経質な表情で呼びかける。彼の手元には、製薬会社と厚生省の関係者から送られてきた文書があった。


「これは……。」ミコトが文書を手に取り、目を通した途端、表情が強張った。内容はUDIラボに対する法的な調査を示唆するものだった。報告書の内容が「科学的根拠に基づいていない」とされ、ラボの調査そのものを取り締まろうとする意図が明らかだった。


「彼らがここまで動き出すとは思っていなかった……。」中堂は唸るように言った。「政府と製薬会社は、真実を隠そうとしている。俺たちの活動そのものを止めるつもりだ。」


ミコトは目を閉じ、深呼吸した。圧力がかかることは予想していたが、ここまで早く、そして直接的な行動を取ってくるとは思っていなかった。


「このままでは、UDIラボが潰される危険がある。」東海林が声を潜めて言った。「彼らがこの調査を強行すれば、ラボの全データを押収されるかもしれない。」


「そうはさせない。」ミコトは力強く言い切った。「私たちは真実を暴くためにここまで来た。圧力に屈するわけにはいかない。」


「でも、どうやって?」東海林は不安げに尋ねる。「相手は巨大な組織だ。私たちだけで立ち向かえるの?」


「立ち向かうしかない。」中堂が冷静に答えた。「だが、今は証拠を守ることが最優先だ。彼らが動き出す前に、全てのデータを安全な場所に移す必要がある。」


ミコトはしばらく考えた後、毅然と立ち上がった。「東海林、データを外部にバックアップする準備をして。中堂は法的に対抗するための証拠をさらに集めて。彼らに私たちの調査が科学的に確固たるものであることを示すしかない。」


「了解。」東海林は即座にコンピュータに向かい、データのバックアップを始めた。彼女は、政府の監視や圧力を想定して、高度な暗号化システムを使い、データの保護に全力を注いだ。


一方、中堂は急いでUDIラボに関する過去のすべての研究と報告を集め、調査の正当性を証明するための資料を整え始めた。彼らの全てがこの証拠にかかっていた。


「もし、彼らが私たちを封じ込めることに成功すれば、この真実は永遠に闇の中に葬られてしまう。だからこそ、私たちはすべてのリスクを負ってでも、この情報を守らなければならない。」ミコトの声には、これまで以上の決意が込められていた。


その時、ラボの電話が突然鳴り響いた。東海林が素早く受話器を取ると、顔が一瞬で緊張に包まれた。


「どうした?」中堂が尋ねると、東海林は焦りを隠せずに答えた。


「彼らが動き出した……製薬会社と厚生省が合同で、UDIラボに調査チームを送り込んでくるそうです。時間がない。」


全員が一瞬静まり返った後、ミコトが再び口を開いた。「私たちにはまだ時間がある。彼らが到着する前に、全てを安全な場所に移し、私たちの活動を止められないようにするのよ。」


「そうだな、動けるうちに動くしかない。」中堂が立ち上がり、緊張した顔をしているメンバーたちに指示を飛ばす。


「データのバックアップが終わり次第、全員退避する準備をして。」ミコトは続ける。「私たちはここから逃げるわけではない。ただ、彼らに真実を封じられるわけにはいかないから、全ての証拠を守り抜くために行動するのよ。」


UDIラボ全体が急速に動き出した。彼らにはわずかな時間しか残されていない。政府と製薬会社の調査チームが到着する前に、全てを完了させなければ、真実は闇の中に消え去ってしまうだろう。

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