第12話 真実の発表

UDIラボの全員が集まり、最後の調整に入っていた。ミコトは、彼女たちがまとめた報告書を見直しながら、メンバーたちの表情を確認する。彼らの顔には、緊張と共に深い決意が刻まれていた。


「準備は整った?」ミコトが尋ねると、東海林はうなずき、資料を手に取った。


「これで、シェディング現象の証拠と、私たちが提案する対策が一通りまとめられました。どのメディアも注目する内容になっています。」東海林は少し緊張した様子で言ったが、その声には力強さもあった。


「よし、次は会見の場だ。」中堂が腕を組んで言った。「これでメディアがどう反応するか……そして社会がどう受け止めるかが鍵だな。」


ラボ内の緊張感がさらに高まり、全員が深呼吸して心を落ち着かせる。


「今は真実を隠そうとする勢力が動いているはず。だからこそ、私たちは正しい情報を迅速に、的確に届けなければならない。」ミコトは強い声で全員に語りかけた。「私たちは事実を明らかにし、パニックではなく、冷静な対応を促すためにここにいる。それを忘れないで。」


全員が頷き、最後のチェックを終えた。


数時間後、彼らはメディアの前に立っていた。カメラが回り、フラッシュが激しくたかれる中、UDIラボのメンバーは淡々と準備した内容を公表し始めた。ミコトがマイクに向かって一歩進み、報告書の冒頭を読み上げる。


「本日、私たちUDIラボは、レプコンワクチンに関連する『シェディング現象』の実態を発表します。これは、接種者の呼気や体液を通じて放出される微小な粒子が、周囲の人々に影響を与える現象です。私たちの検証により、これがレプコンワクチンによる免疫系への異常反応を引き起こしている可能性が確認されました。」


会場内がざわめく。記者たちの視線が鋭くミコトを捉え、その場の空気は一瞬で張り詰めたものになった。


「この現象により、接種者と未接種者双方に健康へのリスクが生じています。しかし、私たちはこれを恐怖の拡散ではなく、冷静な対応によって乗り越えるためのガイドラインを提案します。」


ミコトは一拍置いてから続けた。「重要なのは、正確な情報と対策です。私たちは、このシェディング現象に対する予防策として、接触を避ける方法や、換気などの基本的な対策を広めていくことを提案します。これにより、さらなる感染や影響を最小限に抑えることができます。」


中堂や東海林が次々と証拠データや実験結果を示しながら、報告の詳細を補足していく。報道陣は次々にメモを取り、質問の準備を始める。記者たちの顔には驚きと懐疑の色が混じっていたが、真剣な視線がUDIラボのメンバーたちに向けられていた。


「質問のある方は?」ミコトが呼びかけると、一斉に記者たちの手が上がった。


最初の記者が立ち上がり、質問を投げかける。「この発表が社会にどれほどの影響を与えるか考慮されていますか?パニックが広がる可能性もありますが、政府や製薬会社との対立は避けられないのでは?」


ミコトは少し考えてから、はっきりと答えた。「私たちは、真実を隠すことがさらなる被害を生むと考えています。社会が冷静に対応するためには、まず正確な情報が必要です。そして、私たちは今後、政府や製薬会社とも協力し、この現象に対応していくための最善の手段を模索するつもりです。」


次々に記者からの質問が続き、会見は熱を帯びていった。UDIラボは慎重に、しかし自信を持って、次々に答えていく。やがて、会見が終了すると、メディア各社はこの衝撃的なニュースを一斉に報じ始めた。


だが、その直後、UDIラボには新たな危機が迫っていた。会見を終えた数時間後、製薬会社や厚生省の幹部たちから次々に圧力がかけられ始めたのだ。


「これで終わりではない。」中堂が冷静に言った。「彼らがどう動くかを見極める必要がある。」


ミコトもまた、次なる戦いに備えていた。真実を伝えた後に待つのは、さらなる困難であり、UDIラボはその準備を整えなければならなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る