後日談2:「伝染する睾丸スキル」

タマオの「睾丸スキル」が、まさかの形で世間に伝播し始めていた。最初は、タマオの奇妙な主張を聞いた人々が「まったく、なんだあの人は……」と呆れる程度だった。しかし、合コンでの出来事やタマオの街頭演説がSNSで拡散されるにつれ、周囲の反応が少しずつ変わっていくことになる。


それは、リョウと美沙が一緒にショッピングに出かけたある日だった。


「この店、セールしてるって聞いたから見てみようよ」と、美沙がウインドウショッピングを楽しむために入った服屋。すると、店内でお客同士が雑談しているのが耳に入った。


「いやー、マジで最近、心が折れそうなことが多くてさ。でもさ……俺も“睾丸スキル”を信じてみようかと思ってるんだよね!」と若い男性が真面目な顔で語る。


美沙は思わず立ち止まり、目を丸くした。「今……睾丸スキルって言った?」


リョウもギョッとした表情でその会話を聞き、「おいおい、マジかよ……タマオの言葉が伝染してるのか?」と内心で驚いた。


隣にいた美沙は困惑しながらも、その男性たちの会話に耳を傾ける。どうやら彼らはタマオのことをSNSで知り、その「睾丸スキル」に影響を受けているようだ。


「俺もさ、この間さ、思い切って『心の奥の力を信じるんだ』って自分に言い聞かせたんだよ。そしたらなんか元気が出てきてさ、これが“睾丸スキル”ってやつかなって!」と笑顔で語る男性の言葉に、相手の女性も「え、意外といいじゃん、それ。私も試してみようかな……」と興味津々だ。


美沙は思わずため息をつき、「嘘でしょ……」と呟いた。(まさか、タマオくんのあのトンデモ理論がこんなところで広まってるなんて……)


リョウは頭を抱えつつ、「なんだかなぁ……どうやら本当に伝染しちまってるみたいだな」と苦笑した。



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その後も、町中で「睾丸スキル」を口にする人たちが増えていることに気づく。カフェのテラス席では、若い女性たちが話し合っていた。


「ねぇ、聞いた?“睾丸スキル”って、自分を信じる力のことらしいよ!私たちもやってみない?」


「え、いいじゃん!それ、ちょっと面白いし、元気出そう!」


美沙はそれを聞いて思わず吹き出しそうになり、「なんでこんなに浸透してるの!?」と心の中で叫んだ。(タマオくん、あなたは一体どれだけの人に影響を与えちゃったの……?)


一方、リョウは冷静に観察していた。「どうやら、“睾丸スキル”っていう言葉そのものじゃなくて、その本質……要は『自分を信じる力』みたいな意味で捉えられてるみたいだな」と分析している。



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数日後、リョウと美沙は、とうとうタマオに直接この現象を伝えることにした。いつもの居酒屋で3人が席につく。


「タマオ、聞いてくれよ。お前の“睾丸スキル”が、世間で広まってるんだ」とリョウが切り出すと、タマオの目が輝いた。


「なんだと!?やはり俺の睾丸スキルは皆に伝わったんだな!」と、タマオは嬉しそうに拳を握りしめた。


「いや、ちょっと待って……」と美沙が苦笑いしながら、「みんな、その言葉を使ってはいるんだけど、あなたが思っているのとは少し違うかも……」と慎重に説明し始めた。


「ふむ……どういうことだ、美沙?」タマオは真剣な顔で彼女を見つめる。


美沙は溜め息をつき、「みんな、あなたの睾丸スキルを『自分を信じる力』として捉えているの。それで、『頑張ろう!』って元気を出してるみたい。だから、直接あなたの“睾丸”のことを考えているわけじゃなくて……」と続ける。


一瞬の沈黙の後、タマオは満面の笑みを浮かべ、「つまり!俺の睾丸スキルの本質が、みんなの心に伝わったってことじゃないか!」と大声で叫んだ。


リョウは顔をしかめながら、「そういうことなんだろうか……まあ、タマオ流に言えばそうかもしれないけどさ」と呆れたように笑った。


「すごいわ、タマオくん……あなたの言葉がこんな形で広まるなんて、予想もしなかったわ」と美沙も微笑みながら頷く。(タマオくんの不器用だけど真っ直ぐな気持ちが、少しずつ伝わってるのね)


タマオは誇らしげに、「よし、これからも俺の睾丸スキルをどんどん広めていくぞ!」と拳を掲げた。その姿に、美沙とリョウは苦笑いしながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべた。



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こうして、タマオの「睾丸スキル」は、彼が思う形とは違ったが、徐々に人々の心に伝わり始めていた。タマオの不器用な情熱が、これからもどんな影響をもたらすのか……彼の道はまだまだ続く。

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タマオの睾丸スキル冒険譚〜異世界から現代への挑戦〜 足雄 @tasi507

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