第10話「銭湯で睾丸スキル全開!」

町内会の祭りを無事に乗り切ったタマオ。今回は睾丸スキルの話題を控えめにしながらも、周りと協力することで祭りを盛り上げることができた。これに気をよくしたタマオは、「次のステージ」へと向かうことを決意していた。


「リョウ!次は俺の睾丸スキルを極限まで高めるために、男の力を磨く場へ行こうと思う!」と、朝からタマオが宣言した。


リョウは一瞬、嫌な予感を感じたものの、「次は一体何をするつもりなんだ?」と聞き返す。するとタマオは、拳を握りしめて力強く答えた。


「銭湯だ!銭湯で男たちと共に汗を流し、睾丸スキルを温めることで、新たな力を手に入れるのだ!」


「……いや、ただ銭湯に行くって言えばいいだろ!」リョウは即座にツッコミを入れた。頭を抱えつつも、もう何を言ってもタマオが行動を変えるとは思えなかったので、「わかったよ。じゃあ今日は銭湯でゆっくりしてこい。くれぐれも変なことするなよ?」と念を押した。



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その日の夕方、リョウとタマオは街の古い銭湯にやってきた。男湯からは湯気が立ち上り、のれんをくぐった先からは、にぎやかな話し声が聞こえてくる。


「ここか……男たちの力が集まる場所……」とタマオは感慨深げにうなずき、リョウと共に脱衣所へ向かった。


浴場に入ると、タマオは大きく息を吸い込んだ。「ああ……この湿った空気、そしてこの熱さ!まさに男の聖域だ!」と、すでにテンションは最高潮だ。リョウはその様子に内心不安を覚えつつも、周りの客に迷惑をかけないようにと目を光らせていた。



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湯船に浸かると、タマオはその体を伸ばし、目を閉じてリラックスし始めた。「ふむ……湯の熱が、俺の睾丸スキルをさらに高めている……!」と呟く。


リョウは周りの男性たちに聞こえていないか冷や汗をかきつつ、「だから、ここでその話をするなって!」と注意した。


「すまん、リョウ。だが、俺の中で湧き上がるこの力を抑えるのは容易ではない……!」タマオは目を開け、周りを見渡しながら言った。


そのとき、タマオはふと何かを思いついたように体を前傾させた。湯船の縁に両手をつき、腰を落とす。そして――


「これだ!睾丸スキルでお湯の波動を生み出す!」と宣言し、股間のあたりをお湯に叩きつけるように動かし始めた。


バシャッ、バシャッとお湯を叩く音が響き、周りの男性たちは一瞬何が起こっているのかわからず固まった。そして、徐々にその行動が理解されると、視線はタマオへと集中した。


「え、ちょっと待て……あれって……」「おいおい、何してんだよ……?」と、湯船にいた男性たちがざわつき始める。(まさか、こんなところでそんなことを……!?)


リョウは顔を押さえ、「お前、マジか……」と小声で呟いた。(お願いだから普通に湯船に浸かっててくれよ……!)


「これぞ、睾丸スキルを活性化させる秘技、『湯の波動叩き』だ!」タマオは満面の笑みで自信たっぷりに言う。


周りの客たちはその様子に驚きつつも、目をそらし始めた。「何だあいつ……?」「関わらない方がいいな……」と、小声で囁き合っている。



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リョウは慌ててタマオに駆け寄り、彼の肩を掴んで引き止めた。「いい加減にしろよ!お前、こんなところで何やってんだ!?」


タマオはキョトンとした表情でリョウを見つめ、「何を言う、リョウ。俺はただ、睾丸スキルの力を引き出すために、お湯の力を活かしているだけだ!」


リョウは頭を抱え、「だから!それをここでやる必要はないって言ってんだよ!」と強く言い返す。


しかし、タマオはまったく怯むことなく、真剣な顔で続けた。「お湯の熱を使って睾丸を叩くことで、体の中から力が溢れ出すんだ!これこそが真の男の力を引き出す技だ!」


リョウはその熱弁に一瞬返す言葉を失い、深くため息をついた。「……お前、どこまで本気で言ってんだよ。いいか、普通の人はそんなことしないんだ。睾丸スキルとか言って、お湯を叩くなんて……!」


「では、リョウ!」と、タマオが急に真顔でリョウに向き直った。「お前は睾丸の力を信じないというのか?」


「いやいや、そういうことじゃなくて!」リョウは必死に説明しようとする。(もう本当にやめてくれよ……これ以上恥をかかないでくれ……!)



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その時、番台に座っていた銭湯の主人がのれんをくぐって現れた。初老の男性で、彼は湯気の中から二人をじっと見つめている。


「お客さん、あんまり騒がないでくれよ。ここはみんながゆっくりする場所だからさ。」と優しい口調で注意を促した。


タマオは主人に向き直り、真剣な表情で言った。「すまない。しかし、俺はこの銭湯の熱さに触れて、睾丸スキルを極限まで高めたくて……!」


その言葉を聞いた主人は一瞬目を見開き、リョウは「もう終わった……」と心の中で叫んだ。


しかし、主人はしばらくタマオを見つめた後、急に笑い出した。「ははは!お兄さん、面白いこと言うな!まあ、ここでは静かに楽しんでくれよな。」


その予想外の反応に、タマオは少し驚いたようだったが、すぐににっこりと笑った。「うむ、わかった!この銭湯で、皆と共に力を高めていく!」


リョウはため息をつきながらも、主人が彼を許してくれたことにホッとした。(ふう……なんとか追い出されずに済んだか……)



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その後、タマオはようやく湯船に戻り、他の客たちとともにおとなしく湯に浸かった。しかし、タマオの睾丸スキルへのこだわりは収まらず、彼の周りには微妙な空気が漂っていた。


その後、リョウとタマオはなんとか銭湯を後にして夜道を歩いていた。銭湯の外で待っていた美沙が、二人の姿を見つけて近寄ってくる。


「どうだった?」と美沙が尋ねると、リョウは疲れ切った顔で肩をすくめて首を振った。「どうって……まあ、色々ありすぎてな……。何とか追い出されずには済んだけどさ……」と言いながら、大きくため息をついた。


「そんなに大変だったの?」と、美沙が首を傾げる。


リョウは一瞬躊躇し、タマオの顔を横目で見てから、決心したように口を開いた。「……ああ、実はな。タマオ、湯船の中で、いきなり『睾丸スキル』とか言い出してさ……」


「えっ……?」美沙の顔が驚きと困惑で固まる。(またその話……!?)


リョウは続ける。「いや、それだけならまだ良かったんだ。問題はその後なんだよ……。こいつ、湯船で自分の股間を使ってお湯を叩き始めて……」


「ええっ!?ほ、ほんとに……?」美沙は顔を真っ赤にし、口元に手を当てた。(いやいやいや、嘘でしょ……?何考えてるの、この人!?)


リョウはため息をつきながら頷く。「マジだよ。『これぞ睾丸スキルの真髄、湯の波動叩きだ!』とか言ってさ……。周りの客がドン引きしてたのは言うまでもない。俺、止めるのに必死だったんだよ!」


美沙は思わず頭を抱え、「うそ……本当にそこまでやるなんて……」と呟いた。(やっぱりタマオさんの思考回路って、普通じゃないのよね……。)


リョウは続けて、「俺もどう説明すればいいか悩んだよ。まさか、睾丸をお湯で叩くなんて予想外すぎるだろ?番台の親父さんもびっくりしてたけど、なんとか笑って許してくれたよ……。」


美沙は呆れながらも、「よく追い出されなかったわね……。」と感心するように言った。(ほんと、この人の勢いはどこから来るのかしら。でも、だからこそ憎めないのかも……。)


「でもまあ、なんとか収まったよ。」リョウはそう言って、タマオの方を見た。「なあ、タマオ。お前ももう少し周りを見て行動しようぜ。銭湯で睾丸の話をするのは、さすがにアウトだ。」


「うむ……確かにリョウの言うことも一理あるな。睾丸スキルの力をみんなに伝えたいあまり、少し暴走してしまったのかもしれない。」タマオは反省したようにうなずき、美沙の方を向いた。「美沙、すまない。俺は少しばかり熱くなりすぎたようだ……。」


美沙は彼の真剣な表情に少し驚きつつも、ため息をついた。「まあ、わかってくれたならいいの。だけど、これからは本当に気をつけてね。どこでも睾丸スキルの話をしちゃだめだってば。」(この人、ほんとに真面目すぎておかしいんだけど……でも、そこがいいのかも。)


リョウも少し笑いながら、「そうそう。次からはやりすぎないように頼むよ、タマオ。俺の胃がもたないからな。」と肩を叩いた。


タマオはうなずきながらも、拳を握りしめた。「わかった!次こそは、俺の睾丸スキルをより効果的に伝える方法を見つけるぞ!」と、相変わらずの前向きな姿勢を見せる。


リョウと美沙はその勢いに少し呆れながらも、彼の純粋さに微笑んだ。


「まあ、いつものタマオさんだね。でも、本当に気をつけてよ。」美沙はそう言って、三人で夜道を歩き始めた。


タマオの冒険はまだまだ続く。果たして彼の「睾丸スキル」がいつか現代社会で受け入れられる日は来るのだろうか……。

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