第7話「医療費の全額負担にショック」

タマオが運送会社でのバイトを始めてから数週間が経ち、リョウは少しだけ安堵していた。毎回騒ぎを起こすとはいえ、なんとかタマオも現代社会に順応しつつある。リョウが内心「よし、この調子で問題を起こさずに生活してくれよ……」と祈っていた矢先、またもや予想外の事態が起こった。


その日はバイト中に事件が起きた。重い荷物を運んでいたタマオが、つまずいて足をひねってしまったのだ。運送会社の同僚たちはすぐに駆け寄り、「大丈夫か?」と心配そうに声をかける。


「うむ、俺の睾丸スキルでなんとか……」とタマオが言いかけたところで、周囲は一斉に無言で固まった。(またそれか……。さすがに睾丸スキルじゃ怪我は治らないよな……)同僚たちの頭には一斉に同じツッコミが浮かぶ。


「いや、病院行こう。さすがに放っておけないし」と、一人がタマオの肩を支えながら、彼を近くの病院に連れて行くことにした。



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病院に着くと、リョウも仕事を抜け出して駆けつけていた。「おい、タマオ、大丈夫かよ。ほら、受付行くぞ」とタマオを促し、受付のカウンターへ向かう。


受付の女性が落ち着いた笑顔で対応してくれる。「こんにちは。今日はどうされましたか?」


タマオは痛みをこらえながらも、自信満々に口を開く。「俺は睾丸スキルで怪我を乗り越える!」


受付の女性は一瞬目を見開いた。「え、えっと……こ、睾丸……ですか?」(なんだこの人!?睾丸スキルって、どういうこと!?)


リョウはすかさず割り込み、頭を下げる。「す、すみません、足をひねったみたいで……。診察をお願いしたいんですけど、保険証がなくて……」と説明する。


受付の女性は困惑しながらも、冷静を保とうとする。「ええと、保険証がない場合は、全額自己負担となりますが……よろしいでしょうか?」(この人たち、なんか怪しいけど、とりあえず仕事だし対応しないと……)


「なにぃ!?」タマオは驚愕の表情を浮かべた。「この俺が全額負担だと!?睾丸スキルで何とかならないのか!」


その瞬間、待合室の患者たちが一斉に振り返り、タマオを見た。(え……今、睾丸って聞こえたよね……。何の話?)(スキルって……睾丸にスキルなんてあるの?)ざわざわと待合室に不穏な空気が漂う。


リョウは顔を赤くして、「もう、やめろって……!」とタマオの腕を掴む。「いいから普通に診察受けて、後で俺が何とかするから……!」


しかし、タマオは納得していない様子で腕を組んだ。「睾丸スキルで全額負担を免除できないとは、この病院もなかなか手ごわいな……。だが、俺は諦めない!」


リョウは頭を抱えながら、受付の女性に目を向ける。(お願いだから、普通に手続きを進めてくれ……)すると、受付の女性は少し困惑しながらも淡々と対応してくれた。「では、診察費は全額負担で処理させていただきますね。少しお待ちください。」(睾丸スキルって何……。まあ、気にしないでおこう……)



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しばらくして、タマオは診察室から出てきた。足を固定するギプスをつけており、少しばかり痛々しい姿だ。リョウはそれを見てため息をついた。「お前なぁ……。普通に怪我してるんだから、無茶するなよ……」


「うむ、確かに睾丸スキルでは完全に回復しなかったようだ。しかし、このスキルはまだ本来の力を発揮していないだけだ!」タマオはギプスを見つめながら真剣に言う。


リョウはもう何も言うまいと決め込み、「まあ、いいから帰るぞ。お前の分の医療費は俺が立て替えるから……」と財布を取り出した。


その時、突然聞き覚えのある声がかかった。「タマオさん、大丈夫ですか?」振り向くと、そこには美沙が立っていた。


「美沙……!なぜここに?」リョウが驚きつつ問いかける。


「たまたま近くに用事があって……それより、どうしたんですか?」美沙は心配そうにタマオの足元を見つめる。(この人、また何かやらかしたんじゃ……?)


リョウは事の経緯を簡単に説明し、美沙は呆れたようにため息をついた。「やっぱり……。でも、怪我をしたならちゃんと治療しないとダメですよ、タマオさん。睾丸スキルじゃなくて、ちゃんと現代の医療に頼りましょう。」と、優しく諭す。


「うむ、確かに現代医療の力を感じた……」タマオは少し考え込み、やがて頷いた。「しかし、それでも俺の睾丸スキルを磨くためには、さらなる試練が必要だということもわかった!」


リョウは呆れ顔でタマオを見つめる。「いや、だからそういう話じゃなくて……。まずは現実を見てくれって……」


美沙は苦笑しつつ、リョウに近づいてこっそり耳打ちした。「医療費、私が立て替えておきますから、後で分割で返してくれていいですよ。」


リョウはホッとしたように「ありがとう……助かるよ。もうタマオのせいで胃が痛くてさ……」と感謝を伝えた。



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帰り道、タマオはギプスをつけた足を引きずりながら、何やら考え込んでいる様子だった。「睾丸スキルだけでは、この世界の壁を越えるのは難しい……。だが、俺はこのスキルを捨てるわけにはいかない!」


「いや、捨てるとかそういう問題じゃないんだよ……」リョウは苦笑しながら肩をすくめる。「お前が睾丸スキルをどう思ってるかはわかるけどさ、現実的なこともちゃんと考えていこうぜ。」


「うむ……」タマオはしばらく黙って歩いた後、ふいに顔を上げた。「わかった!俺は睾丸スキルと現代の知識を融合させ、新たな力を手に入れる!」


リョウはその言葉に驚きつつも、少しだけ期待する。「おお、なんかいい感じに進歩してきたんじゃないか?次はもう少しまともにやれるかも……」


美沙は微笑んで、「そうですね、まずは現代社会のルールを学んでから、タマオさんのスキルを生かせる方法を探していきましょう」と優しく言った。(まあ、この人の勢いにはもう慣れてきたけど……)


タマオの冒険はまだまだ続く。そして、彼の睾丸スキルが現代社会に認められる日は果たして訪れるのだろうか?


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