第5話「バイト先での睾丸スキル発揮!」
タマオのカウンセリングから数日が経った。リョウはタマオの成長を信じたい気持ちと不安が入り混じっていた。とはいえ、彼もずっとタマオを居候させるわけにはいかない。そこで、リョウは知り合いの運送会社にタマオを紹介し、日雇いバイトをさせることにした。
「タマオ、今日からはバイトだ。とりあえず社会経験を積んでくれ。」リョウはそう言いながらタマオの肩を叩いた。
「うむ、任せておけ!」タマオは胸を張って答えた。「俺はこの世界でのバイトという試練を乗り越えてみせる。そして、カウンセリングで学んだことを活かし、睾丸スキルを封印して……少しずつだな!」
リョウは(封印してくれるのか……?いや、期待はするな、期待は……)と内心で不安を抱えつつも、「そうそう、まずは普通の仕事の仕方を覚えてくれ。あくまで少しずつ、な」と念を押した。
---
バイト先の運送会社は、荷物の仕分けや運搬など、体力を使う仕事がメインだ。倉庫には大小さまざまな荷物が積まれており、スタッフたちが忙しそうに動き回っていた。
タマオは早速、現場の担当者に挨拶をした。「俺の名はタマオだ!今日からここでバイトさせてもらう。よろしく頼む!」と元気よく挨拶する。
担当者の男性は一瞬目を丸くしたが、「お、おう。元気がいいのはいいことだ」と苦笑しながら答えた。(ちょっと変わったやつだけど、まあ元気ならいいか……)
仕事が始まると、タマオは自慢の体力を活かして黙々と荷物を運び始めた。その姿を見た周囲のスタッフたちは、「あいつ、なかなか力あるな……」と感心しつつも、どこか不安そうな表情を浮かべていた。(なんか、妙なオーラを感じるんだけど……気のせいだよな?)
---
しばらくは順調に仕事が進んでいた。タマオもカウンセリングで学んだことを思い出し、「まずは普通の会話から……」と自分に言い聞かせながら作業を続けていた。しかし、数時間が経ち、疲れが出てくると、彼の中の「睾丸スキル」がムクムクと顔を出し始める。
「よし、次はこの荷物だな!」と、大きな段ボール箱を持ち上げたタマオは、突然自分に言い聞かせるように叫んだ。「俺の睾丸スキルよ、力を与えたまえ……!」
周囲にいたスタッフたちは一瞬で固まり、タマオを見つめた。「え、今……何て言った?」と、一人が戸惑いながら他のスタッフに目を向ける。(今、睾丸って……聞き間違いだよな!?)
タマオはそんな周囲の視線に気づくこともなく、さらに自分を鼓舞し始める。「よし!睾丸の力で、この重い荷物も軽々だ!」
「……おいおい、あいつ、何言ってんだ?」近くにいた先輩スタッフが、呆然としながら声を上げた。(なんだこいつ……。頭がおかしいんじゃないか?)
「ちょっとタマオ君、大丈夫か?」と、担当者の男性が慌てて近寄り、声をかける。(まさかこんな奴だったとは……リョウの紹介だからって信用したけど、大丈夫なのか?)
タマオは満面の笑みで振り返り、「大丈夫です!俺の睾丸スキルは健在ですから!」と自信満々に答える。
「いやいやいや……!」担当者は困惑しながら言葉を続ける。「そういうことを言わなくていいから、普通にやってくれ……」
「わかりました!」タマオは気を取り直して答えた。「では、普通に……睾丸スキルを封印して運びます!」
「だから睾丸の話はもういいって!」担当者は思わず叫びながら頭を抱えた。(こいつ、全然普通になってないじゃないか……!)
---
その後も、タマオの「睾丸スキル」発言は続いた。大きな荷物を持ち上げるたびに、「俺の睾丸の力で……」「睾丸スキル、全開!」と、つい口から飛び出してしまう。
周囲のスタッフたちは、そのたびに顔を見合わせ、困惑の色を濃くしていく。「ちょっとあれ、やばくない?」「うん……普通じゃないよね、あれは」と、ひそひそと話し始めた。
タマオはその会話に気づかず、黙々と仕事をこなしている。「ふむ……やはり封印した状態では力が出し切れないか……?」と一人ごとをつぶやきながら、さらなるパワーを発揮して荷物を運んでいた。
そんな中、昼休憩の時間が訪れた。食堂で昼食を食べながら、タマオはリョウからのアドバイスを思い出し、「まずは普通の会話からだな……」と周りを見渡す。そして近くのスタッフに話しかけることにした。
「なあ、君たちの好きな食べ物は何だ?」タマオは笑顔で尋ねた。
スタッフたちは一瞬顔を見合わせたが、「えっと、ラーメンとかかな……」と、一人が答えた。(普通の会話……?もしかして、まともな話もできるのか?)
「ラーメンか!いいな!」タマオは笑顔を浮かべてうなずいた。「俺も肉が好きだ!特に、睾丸スキルを高めるためにはたんぱく質が欠かせない!」
「……え?」スタッフたちはまたしても顔を引きつらせ、微妙な空気が漂い始めた。(やっぱりダメだ……!話の流れがおかしい!)
リョウが弁当を食べながらその光景を遠目に見て、「ああ、やっぱりそうなるか……」と肩を落とす。(カウンセリングで少しは変わったと思ったんだけどな……)
---
午後の仕事が始まると、タマオはますます張り切りだした。大きな荷物を持ち上げながら、またもや「睾丸スキル、全開!」と叫ぶ。
ついに、担当者は堪りかねてタマオに近づいた。「ちょっとタマオ君、あのさ……頼むから、もう『睾丸』の話はやめてくれないか?」
タマオは真剣な表情で担当者を見つめ、「封印しているつもりなのだが、つい溢れ出してしまうのだ……」と頭を抱えた。
担当者は呆れたようにため息をつき、「とにかく、仕事に集中してくれ。それだけでいいから」と言い残し、その場を去っていった。
---
バイト初日は、タマオの「睾丸スキル」発言による混乱と周囲の困惑の連続であった。周囲のスタッフたちはタマオの異様な発言に振り回されつつも、彼の驚異的な運搬能力には一目置かざるを得なかった。
---
仕事が終わり、バイト終了の合図が倉庫内に響くと、スタッフたちはほっとした様子で片付けを始めた。タマオも汗だくになりながら荷物を運び終え、ほっと一息ついていた。
リョウがタマオに近づき、「お疲れ、初日の感想はどうだ?」と尋ねた。タマオは額の汗を拭いながら、誇らしげに言った。
「うむ、今日のバイトはとても有意義だった。だが、睾丸スキルを封印するのはやはり難しいな……」
リョウは顔をしかめて、「だからその話はいいって!でもまあ、何とか仕事はこなせたみたいだし、今日はこれでよしとするか」とため息をついた。
すると、担当者がタマオとリョウの元へやってきた。「タマオ君、今日はよく頑張ってくれたな。ありがとう。ただ、ちょっとアドバイスさせてくれ。職場では、あまりその……“睾丸スキル”の話は控えてくれないか?」
タマオは真剣な表情で担当者を見つめ、「わかりました……。封印するのが難しいが、カウンセリングで学んだように、徐々に伝えていくように心がけます!」
担当者は苦笑しつつ、リョウに目で助けを求めた。(頼むから、ちゃんと彼に説明してくれ……!)
リョウは頭を下げながら、「すみません、彼、まだ色々と学んでいる途中でして……。次回は、もう少し普通にできるように頑張らせます」と必死に謝罪した。
担当者は疲れた顔でため息をつきながら、「うん……まあ、彼のやる気は買うよ。次もよろしくな」と言って去っていった。
---
バイトを終えて、二人は帰路についた。夕暮れの空がオレンジ色に染まり、静かな風が頬を撫でていく。タマオは腕を組み、今日の出来事を振り返りながら歩いていた。
「リョウ、今日は睾丸スキルを封印しようと努力したが、やはり完全には抑えられなかった……」タマオは反省した様子で呟いた。
「まあ、少しずつでいいんだよ」とリョウは肩をすくめて答える。「確かに、まだまだ道のりは長そうだけど、今日もなんとか乗り切ったじゃないか。ちょっとずつ変わればいいんだ。」
「うむ、そうだな!」タマオは気を取り直し、拳を握りしめた。「俺はこれからも少しずつ学び、睾丸スキルを封印しつつ、この世界で生きていく!」
リョウは彼の意気込みに苦笑しながら、「それでいいさ。でも、次のバイトではもう少し封印を強めてくれよな」と念を押した。
「任せておけ!俺は日々成長しているのだから!」とタマオは胸を張り、自信に満ちた笑顔を見せた。
(こいつ、どこまでも前向きだな……)リョウはそう思いながらも、彼のその純粋さに少しだけ感化されている自分に気づいた。「じゃあ、帰って飯にしようか。今日もお疲れさん。」
タマオは大きくうなずき、「そうだな!しっかり食べて、次のバイトに備えなければ!」と元気よく歩き出した。
---
こうして、タマオのバイト初日は幕を閉じた。彼の「睾丸スキル」への熱意は相変わらずだが、少しずつ社会のルールを学んでいく姿には、わずかながら成長の兆しが見え始めていた。
次回、タマオは新たな職場でさらなる「睾丸スキル」封印に挑む……が、果たしてうまくいくのか!?彼の突飛な冒険は、まだまだ続く――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます