第3話「合コンでモテるための睾丸スキル」
リョウがタマオをスーパーに連れ出してから数日が経った。しかし、タマオは相変わらずの「睾丸スキル」発言を繰り返し、リョウの頭を悩ませていた。そんな中、リョウは思い切ってタマオを合コンに参加させることにした。友人の美沙からの誘いに、「大丈夫、彼は少し変わってるけど気にしないで」と説明したものの、リョウは不安を隠せなかった。
「タマオ、今日は本当に頼むぞ。普通に振る舞ってくれよ……!」リョウは念を押した。
「任せろ!俺の睾丸スキルで、必ず女性たちを魅了してみせる!」と、タマオは自信に満ちた笑顔で答える。
リョウはその言葉に頭を抱えた。(やっぱり、ダメかも……いや、奇跡を信じるしかない!)
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合コンの会場は、落ち着いた雰囲気のカフェバー。テーブルにはカクテルや軽食がすでに並び、薄暗い照明が大人の空間を演出している。リョウとタマオが席に着くと、数人の女性たちがにこやかに挨拶してきた。
「初めまして、白川美沙です。今日はよろしくお願いします!」と、美沙がまず自己紹介をする。リョウは軽く会釈しながら、「こちらこそ、よろしくお願いします!」と返した。
続いて、他の女性たちも順番に自己紹介をしていく。タマオの順番が来ると、リョウは心の中で祈った。(頼む、今度こそ普通に!)
タマオは堂々と立ち上がり、胸を張って自己紹介を始めた。「俺の名はタマオ!今日は俺の睾丸スキルで皆を魅了するつもりだ!」
その瞬間、場の空気が凍りついた。女性たちはポカンと口を開けてタマオを見つめる。
「え、ちょっと待って……今、睾丸スキルって言いました?」と美沙が困惑した表情で聞き返す。(いやいや、いきなり何言ってるのこの人!?)
リョウは慌ててフォローに入った。「あ、あはは……こいつはちょっと変わったジョークが好きなんだ!まあまあ、乾杯しよう!」
「そ、そうですね……乾杯!」と、ほかの女性たちは無理やり笑顔を作り、グラスを持ち上げる。(え、ジョークだとしてもやばくない!?)
乾杯の後、しばらくは無難な話題で会話が進んだ。好きな映画や趣味の話が飛び交い、リョウは(よし、何とか普通に戻った……)と胸をなでおろした。
しかし、タマオはやはり黙っていなかった。「俺の趣味は鍛錬だ!特に睾丸スキルの向上に力を入れている!」
再び、場の空気がピタリと止まる。
「え……それって、何なんですか?」と一人の女性が恐る恐る聞く。(もう絶対に聞かないほうが良かった……!)
「睾丸スキルとは、男の誇りであり、力の源だ!」とタマオは熱く語り始める。「これを鍛えることで、どんな困難も乗り越えられるようになるのだ!」
「……えっと、それはすごいですね……」と、女性の一人が何とか返事をするが、心の中では(怖い!もうこの話題、やめて……!)と悲鳴を上げていた。
美沙は顔を真っ赤にして俯き、足をそわそわさせている。「タ、タマオさん、それって……本当に話す必要が……?」と恥ずかしさをこらえきれない様子で問いかける。(こんな話を初対面で堂々とするなんて……やばすぎるよ!)
他の女性たちはさらに冷たい視線を送り、無言の圧力でタマオを制しようとしている。「……まあ、いろんな考え方があるってことですよね」と、別の女性が冷ややかに言った。(絶対この人、普通じゃない!変人確定だわ!)
リョウは必死に場を立て直そうと、話題を変える。「えっと、じゃあみんなの好きな食べ物って何?僕はパスタが好きなんだけど!」
女性たちはホッとした表情で、「私はケーキかな!」や「お寿司が好きです!」と明るく答え始める。(よかった、なんとか話題が普通に戻った……)
しかし、タマオはまたもや強烈な一撃を放つ。「俺は肉だ!特に、睾丸スキルを最大限に発揮するには、たんぱく質が必要だからな!」
場の空気が一瞬で凍りついた。女性たちの視線が一気にタマオに集中する。美沙は顔を両手で覆い、もう何も見たくないという表情だ。(だからなんで睾丸スキルに結びつけるのよ!恥ずかしすぎる……!)
一人の女性は、完全に見下すような目でタマオをじっと見ている。「……睾丸スキルって、本当に必要な話題なんですか?」と、冷たく問いかける。(こいつ、マジで頭おかしいんじゃないの?)
「当然だ!」とタマオは自信満々に答える。「睾丸スキルは、男の本質を知るために不可欠なものだからな!」
「……はあ、そうですか」と女性は目を逸らし、他の女性たちと目を合わせる。(もう無理!この人と話すのは無理!)
リョウはまたもや頭を抱え、「頼むから睾丸スキルの話はやめてくれって……」と小声でタマオに懇願した。
「なぜだ?」タマオは真顔で問い返す。「俺の睾丸スキルを語らずして、どうやって自分を伝えればいいというのだ?」
(だから、そういう問題じゃないんだよ……!)リョウは内心で叫びつつ、どうすればこの場を収められるか必死に考えた。しかし、もう遅すぎた。女性たちの目には明らかに「ドン引き」の文字が浮かび、次々とスマホを取り出して何かを始めている。
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その後、合コンはほぼ気まずい空気の中で続けられ、ついに終了の時間が来た。女性たちはさっさと帰り支度をし、無言で店を出ていく。美沙だけがため息をつきながらリョウに近づき、「……ごめん、今日はちょっと……また別の機会にね」と苦笑いを浮かべた。
「うん、本当にごめん……」リョウは深々と頭を下げ、彼女の後ろ姿を見送った。
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合コン会場を後にしたタマオとリョウ。タマオは満足げな顔をしている。「どうだリョウ、俺の睾丸スキルは伝わっただろうか!」
「いや、むしろ伝わりすぎてドン引きだよ!」リョウは思わず叫んだ。「頼むから次は普通の話をしてくれ!」
「普通の話って何だ?」タマオは首をかしげてリョウに問い返す。「俺の睾丸スキルこそが俺の全てだ。それを語らずして、どうやって自分を伝えればいいのだ?」
リョウは深くため息をつき、顔を手で覆った。「……だから、その『睾丸スキル』がこの世界では普通じゃないんだよ!君が考えている以上に、みんなドン引きしてるのがわからないのか?」
「ドン引き……?」タマオは眉をひそめて考え込んだ。「ということは、俺のスキルが強大すぎて、皆が圧倒されてしまったということか!」
「ちがーう!」リョウは声を張り上げ、思わずタマオの肩を掴んだ。「違うんだよ!睾丸スキルの話なんて、初対面の女性にする内容じゃないってことなんだ!」
しかし、タマオの表情は依然として困惑したままだ。「なぜだ?男の誇りを語ることが悪いことだとでも言うのか?」
リョウは頭を抱え、「ああもう、だからそれが普通じゃないって!」と叫びたくなる気持ちをぐっとこらえた。そして、何とか説明しようと口を開く。「たとえば、女性と初めて話すときは、趣味とか好きな食べ物とか、共通の話題を見つけて少しずつ仲良くなるものなんだよ。いきなり睾丸の話なんて……もうダメだって!」
タマオはじっとリョウの言葉を聞きながら、腕を組んで考え込む。「ふむ……この世界では、そういった『前置き』が必要というわけか……。なるほど、俺はそこを理解していなかったようだ。だが、俺の睾丸スキルは一朝一夕に語れるものではない。それを相手に伝えるにはどうすればよいのだ?」
リョウは言葉に詰まりながらも、必死で言い返す。「うん、だからさ!その睾丸スキルを話さなくても、まずは普通にコミュニケーションを取るんだよ!なんでこんな当たり前のことが通じないんだ……!」
その時、タマオは何かを思い出したかのように手を打った。「そうか!ならば、まずは俺の睾丸スキルを『少しずつ』伝えればいいのだな!」
リョウは絶望的な表情で肩を落とした。「ああもう……そうじゃないんだけど……もういい、今日はとりあえず帰ろう」
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帰り道、タマオは何やら真剣な顔で独り言をつぶやいている。「睾丸スキル……少しずつ……だが、男の本質を語るにはそれでは不十分だ……」
リョウは彼の背中を見ながら、これからの困難な日々に思いを馳せていた。(こいつを現代社会に適応させるのは、果てしない道のりになりそうだ……)
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その頃、合コンを終えた美沙と他の女性たちはカフェバーを後にして歩きながら、口々に今日の出来事を語っていた。
「ねえ、あのタマオさんって、本気で睾丸スキルとか言ってたけど……あれって何だったの?」美沙が困惑顔で問いかける。
「さあ……私も最初は冗談かと思ったけど、彼のあの真剣な表情を見たら、ちょっと怖くなってきたわ……」と、一人の女性が答える。(あんなこと堂々と言うなんて、ありえないよ!)
「ねえ、リョウさんはどうしてあの人を連れてきたのかしら?」もう一人が冷たい目で言う。(リョウさん、あんな人と友達なんて……信じられない)
美沙はため息をつきながら、「リョウも苦労してるんじゃない?でも、次に会うときはちゃんと睾丸スキル以外の話ができるようになっててほしいよね……」とつぶやいた。(頼むから、次はまともに話してほしい……本当に)
女性たちはうなずきながら、それぞれの帰路に着いた。
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その夜、タマオとリョウの部屋では、タマオが黙々と何かをノートに書き込んでいた。リョウがふとその様子を見て、「何してるんだ?」と声をかけた。
タマオは真剣な顔で答えた。「俺は、今日の反省を記録しているのだ。どうやら、この世界では『徐々に』睾丸スキルを伝える必要があるらしいからな」
「いや、反省の方向性が違うんだって……」リョウはがっくりとうなだれた。(こいつ、どこまでも真剣に睾丸スキルを語る気か……)
タマオはそのままノートに書き続ける。「まずは、睾丸スキルの『エピソード1』から始めるべきか……いや、しかし、それでは伝わりきらないかもしれない……」
リョウはもう諦めたようにベッドに横たわり、「もう好きにしろ……俺は寝る」とだけ言った。
タマオはリョウの言葉に構わず、ノートに書き込み続けた。「リョウ、ありがとう。お前のおかげで少し見えてきた気がする。この世界で俺の睾丸スキルをどう広めるか……」
リョウは布団をかぶりながら小さく呟いた。「やめろ……もう、寝かせてくれ……」
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こうして、タマオの「睾丸スキル」全開の合コンは大失敗に終わった。しかし、彼の熱意と純粋さに一抹の希望を感じたリョウ。彼の突拍子もない行動に、周囲は驚きと戸惑い、そして少しの興味を抱かずにはいられない。
タマオの現代社会での冒険は、まだ始まったばかりだ。果たして、彼の睾丸スキルはこの世界で理解される日が来るのか?そして、リョウの苦労とタマオの暴走が交錯する日々は続く――。
次回、タマオはさらに新たな舞台で「睾丸スキル」を炸裂させる!
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