第2話「タマオ、居候生活スタート!」
警察署での一件から数日が経ち、タマオは異世界から転移してきた現実を受け入れていた。しかし、ここでの生活の仕方はまるでわからない。異世界で培った「睾丸スキル」がこの世界でどのように役立つのか――それを確かめる術がなく、ただ街をさまよっていた。
そんな彼に声をかけたのは、青年のリョウだった。「なあ、君……ずっとここにいるみたいだけど、どうかしたの?」公園のベンチに座り込んでいたタマオに、リョウは何気なく話しかけた。
タマオは顔を上げ、力強く言い放つ。「俺の名はタマオ!異世界からこの世界に転移してきたのだが、この世界の常識がわからず困っている!」
リョウは一瞬、何を言われているのか理解できず固まった。(え、異世界?こいつ頭おかしいのか?)と心の中でツッコミを入れながらも、タマオの真剣な表情に興味を抱いた。「そうなんだ……なんか大変そうだね。俺はリョウ。もしよかったら話を聞かせてくれないか?」とリョウは軽く肩をすくめながら座り直した。
タマオは「睾丸スキル」について語り始めた。「俺の睾丸スキルは、あらゆる困難を乗り越える力だ!この力で村を救い、モンスターを討伐してきたんだ!」
リョウは耳を疑った。(いや、睾丸スキルって何だよ……!こいつマジで言ってるのか?)と心の中で何度もツッコミを入れながら、彼の真剣な眼差しに引かれ、最後まで話を聞いた。
「とりあえず、この世界の生活に慣れることから始めよう」とリョウはアドバイスした。「うちにしばらく居候していいから、現代の常識を覚えないとね」
「なんと!助かるぞリョウ!俺はお前に恩を返すため、いつか睾丸スキルを駆使して……」
「だからその『睾丸スキル』ってのは、ここではやめてくれ……!」リョウは苦笑しながらも、タマオを近所のスーパーへ連れていくことにした。
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こうして、タマオはリョウと一緒にスーパーにやってきた。自動ドアが開き、店内に広がる光景にタマオは思わず目を奪われた。色とりどりの商品が棚にびっしりと並び、買い物カートを押す客たちが忙しそうに動き回っている。天井からは明るい照明が照らし、室内には心地よい音楽が流れていた。
「ここが、この世界の食料品を手に入れる場所か……!」タマオはその壮観な光景に感動し、まるで新しい冒険の地に踏み入れたかのように声をあげた。
リョウはタマオにメモを手渡し、「まずはこれに書いてあるものをカゴに入れて、レジに行けばいい。簡単だろ?」と手短に説明する。
「なるほど、これがこの世界の儀式のようなものか!任せておけ!」タマオはメモを握りしめ、自信満々に歩き出した。リョウは(頼むから変なことをしないでくれよ……)と心の中で祈りながら彼の後を追った。
まず、タマオが向かったのは野菜コーナーだ。ここはまるで緑色の宝石箱のようだった。青々としたキャベツ、つややかなナス、真っ赤なトマト、瑞々しいレタスが整然と並べられ、どれも新鮮そうに見える。タマオはその光景に圧倒され、「おお……これはすごいな!」と声を漏らした。
彼はキャベツを一つ手に取り、じっくりと観察した後、力強く言い放つ。「このキャベツ……俺の睾丸スキルで栄養をさらに高めてやる!」その声は野菜コーナー全体に響き渡った。
近くで野菜を選んでいた主婦たちがぎょっとしてタマオを見た。「ちょっと、あの人……」(え、今『睾丸スキル』って言ったよね?何なのこの人……!?)と彼女たちの顔には驚きと戸惑いが浮かんでいる。さらに、一人の主婦は友人に耳打ちする。「あんなこと言ってる人、見たことないわ……」(まさか、ヤバい人?)
しかし、タマオはまったく気づいていない。キャベツをカゴに入れると、堂々とした足取りで次のコーナーへ向かった。リョウはそれを見て頭を抱える。(お願いだから、もう少し静かにやってくれよ……)
次に彼が向かったのは鮮魚コーナーだ。氷の上に新鮮な魚が並べられ、独特の冷たい空気が漂っている。タマオはその光景に目を輝かせ、思わず手を伸ばした。「この魚たち……!俺の睾丸スキルで、さらに美味にしてやる!」と力強く宣言する。
その言葉に、周りの客たちがざわめき始める。「え、今なんて……?」「睾丸スキルって……」一人の中年男性は魚を見つめたまま固まり、店員は思わず作業の手を止めてタマオに視線を向ける。(この人、一体何を言ってるんだ……?)
店員はプロ意識を持って何とか冷静を保ち、「お客様、お魚を選ぶ際は静かにお願いします……」と声をかけた。
「ふむ、睾丸スキルを駆使するには静寂も必要というわけか。なるほど、理解した!」とタマオは謎の納得を見せて、魚をカゴに入れる。店員は(いや、そういう意味じゃないんだけど……)と心の中でツッコミを入れつつ、再び仕事に戻った。
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さらにタマオはパンコーナーへと向かった。棚には焼きたてのパンが並び、バターの芳ばしい香りが漂っている。クロワッサンにフランスパン、食パンにカレーパンまで、見るからに美味しそうだ。タマオはその中から一つバゲットを手に取り、感動のあまり声を上げた。「これがこの世界の主食か……!俺の睾丸スキルで、このパンの旨さを引き立ててやる!」
その声を聞き、近くでお菓子を選んでいた女子高生たちが振り向く。「ねえ、今なんて言った……?睾丸スキルって……?」と、一人の女子高生が顔を赤くし、目を見開いている。(まじで何あの人……ヤバすぎ!)
「ちょっと、動画撮っとこう!」もう一人の女子高生がスマホを取り出し、こっそり撮影し始める。(信じられない、この人本当に言ってるの?絶対SNSでバズる!)
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ようやく買い物を終えたタマオは、カゴを持ってレジに向かった。レジの前には他の客が並び、各々のカゴに入った商品の山が見える。タマオは興味津々に周りを見回し、「ふむ、この場所では人々が物と金を交換しているようだな……面白い儀式だ」と一人で感心している。リョウはタマオの発言にハラハラしながら(頼むから、また変なこと言わないでくれよ……)と祈るような気持ちでその様子を見ていた。
ついにタマオの順番がやってきた。レジの店員は何事もないかのように、淡々と商品のバーコードをスキャンし、袋に詰めていく。タマオは店員の動作にじっと注目していたが、何か言いたそうな顔をしている。そして、合計金額を告げられたその瞬間、彼は意気揚々と口を開いた。
「この支払いに、俺の睾丸スキルを使って値引きはできるか?」
その一言にレジの店員は一瞬固まり、周囲の空気がピリッと変わった。レジの店員はしばらく無言でタマオを見つめていたが、頭の中では(え……睾丸スキル……?今、何て言ったのこの人?)と疑問と困惑が入り混じっていた。しかし、接客のプロとして何とか冷静さを取り戻し、かすかに引きつった笑顔で「す、すみません……現金かカードでお願いします……」と答えた。
タマオは納得したようにうなずく。「そうか……やはりこの世界では、まだ俺の睾丸スキルは理解されていないようだな」と一人でポツリとつぶやく。そして、リョウから渡された財布から現金を取り出し、店員に手渡した。
店員は心の中で(いやいや、睾丸スキルなんて聞いたことないから……)とツッコミを入れつつ、手際よくお釣りを渡した。周りの客たちも、そのやり取りを見て何とも言えない表情でタマオを見つめている。
「ちょっと、聞いた……?『睾丸スキル』って……」「やばい、めっちゃウケる!」と女性客たちがひそひそと話し始める。(信じられない、この人本気でそんなこと言ってるの……?)
さらに、スマートフォンを持った女子高生たちが目をキラキラさせながら、「あの人、また何か言ったよ!」「マジで面白すぎるんだけど!」と撮影しながらケラケラ笑っている。(これは絶対にネットでバズる……こんなキャラ初めて見た!)
支払いを終え、タマオは満足げにリョウの元へ戻ってきた。「どうだリョウ!俺の睾丸スキルを駆使して、無事に買い物を終わらせたぞ!」
リョウはタマオの顔を見ながら、力なくため息をついた。「……うん、一応買い物は終わったけど、お願いだから『睾丸スキル』って言うのはもうやめような。周りの人、みんな驚いてたじゃないか……」
タマオは不思議そうに首をかしげる。「なぜだ?俺の睾丸スキルは、男としての誇りであり、力の象徴だ。これを堂々と宣言することに、何の問題がある?」
(いや、違う……そういうことじゃないんだよ……)とリョウは頭を抱えながら心の中でツッコむ。普通の人々の常識からあまりにもかけ離れたタマオの発言に、リョウはどう説明すればいいのか悩んでいた。「とにかく、ここではそういう話はしないんだ。わかる?他の人たちがびっくりしてたの、見えなかったか?」
タマオは腕を組み、しばらく考え込んだ後、真剣な顔でうなずいた。「ふむ……つまり、この世界では俺の睾丸スキルを知らしめるには、慎重に動く必要があるということか。よし、わかった!」
(いや、そういう意味じゃなくて……)とリョウは再度心の中でツッコミを入れたが、これ以上言っても無駄だと思い、次の課題に切り替えることにした。「まあ……とりあえず、次はバイトを探してみようか。このままじゃ生活できないしさ」
「おお、任せておけ!」とタマオは胸を叩く。「俺の睾丸スキルで、この世界のどんな仕事も乗り越えてみせる!」
(だから、それが問題なんだよ……)リョウは心の中でため息をつきながら、タマオの後ろを歩き出した。スーパーから外に出た二人を照らす陽光は、なんとなく未来への不安を暗示しているようだった。
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こうして、タマオの現代社会での生活がついに始まった。「睾丸スキル」を堂々と掲げ、異世界で培った価値観を貫くタマオ。周囲の反応は困惑や驚きの連続だったが、彼の純粋な行動にはなぜか目を離せない何かがあった。
果たして、タマオはこの世界に自分の「睾丸スキル」を認めさせることができるのか。そしてリョウは、そんな彼に現代社会の常識を教え込むことができるのか――タマオの異世界転移生活は、まだ始まったばかりだ。
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