タマオの睾丸スキル冒険譚〜異世界から現代への挑戦〜

足雄

第1話「俺の睾丸スキルで救ってやる!」


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「ここは……どこだ?」


 俺の名前は玉谷タマオ。突然の出来事に呆然としていた。ついさっきまで、異世界で強大なモンスターと戦い、自分の「睾丸スキル」で数々の危機を乗り越えていたはずなのに、目の前に広がっているのは見知らぬ街の風景だ。高くそびえるビル、行き交う車、人々の奇妙な服装。すべてがタマオにとって初めて見るものばかりだった。


 「転移……したのか、俺は?」と、自分の置かれた状況に困惑しつつ、彼は周囲を見渡す。頭の中には疑問が浮かんでいるが、それを押しのけるかのように、タマオの中にある一つの信念が湧き上がってきた。


 「よし、この世界でも俺の睾丸スキルで人々を救ってやる!」と、タマオは胸を張った。彼の名前はタマオ。異世界では「睾丸スキル」を駆使して、多くのモンスターを討伐し、村を救った英雄だった。このスキルは、男の誇りと力の象徴であり、彼の心の支えでもあったのだ。


 新しい世界への戸惑いもそこそこに、タマオはすでに決意を固めていた。「まずは、この世界の人々に俺の力を知らしめるんだ!」と意気込み、街へと繰り出す。


 自己紹介をしなければ始まらない、と考えたタマオは、目に映る通りのど真ん中で大声を張り上げる。「俺の名はタマオ!睾丸スキルを持つ者だ!この世界を救ってやる!」と堂々と宣言する。しかし、その声に足を止める者は誰一人いない。行き交う人々は、タマオに一瞥をくれるだけで、すぐに視線をそらして足早に通り過ぎていく。(何、あの人……何かの宗教か何か?)と、通り過ぎる人々の心の中には困惑と警戒が広がっていた。


 それでもタマオは気にしない。「ふむ、まだ俺の力の凄さが伝わっていないようだな……」と一人頷き、再び街を歩き始める。そして、その時だ。タマオの目に、買い物袋を両手に抱え、よろよろと歩く中年の女性が映り込んだ。彼女はどう見ても荷物が重そうで、何度もバランスを崩しかけている。


 「おぉ、困っているな。よし、俺の出番だ!」と、タマオは彼女のもとへ駆け寄る。そして彼女の前に立ちはだかり、大きな声で宣言した。「俺の睾丸スキルで助けてやる!」


 その瞬間、女性の顔が真っ青になる。(えっ、今……睾丸って言った!?この人、何言ってるの……!?)と、頭の中が混乱に陥り、言葉を失う。彼女はタマオの顔から視線をそらし、何とかしてその場を切り抜けようと考えた。「あ、あの……自分で持てますので、大丈夫です……」と、震える声で断ろうとする。


 しかし、タマオは引き下がらない。「遠慮するな!俺の睾丸スキルは、どんな重さも軽々と運べる力を持っている!」と堂々と胸を張り、彼女に近づく。


 (うわ、ヤバい……完全に危ない人じゃない……)と、女性は心の中で叫び、一歩、また一歩と後退しようとする。しかし、タマオは自信満々で彼女の行く手を阻む。「俺の睾丸が、お前の苦しみを軽くしてくれるんだ!」と誇らしげに語る。


 (ちょ、ちょっと待って……何をどうしてくれるっていうの!?もう怖すぎるんだけど!)と、女性は恐怖で頭が真っ白になる。周囲の人々も、タマオの奇妙な行動に気づき始め、ざわざわとざわめきが広がる。(何あれ……本当にヤバい人?警察呼ばないと……)と、通行人たちの心の中で警戒が強まっていく。


 「いや、いやいや、本当に大丈夫ですから!」と女性はついに叫び声を上げ、荷物を抱えたまま一目散に逃げ出した。タマオは一瞬その場に立ち尽くしたが、すぐに頷く。「そうか、俺の睾丸スキルに圧倒されたんだな!」と、彼は勝手に納得してしまった。


 その姿を見ていた周囲の人々は、その光景にドン引きしつつ、スマートフォンを取り出して警察に連絡を始める者もいた。(やばい、この人絶対に変な人だよ……)と心の中でささやきながら、遠巻きにその場を見守る。タマオは気にせず、胸を張って街を歩き始める。



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 数分後、パトカーのサイレンが近づき、警察官たちが駆けつけてきた。タマオは堂々と彼らの前に立ち、「俺の睾丸スキルで人々を救おうとしていただけだ!」と誇らしげに胸を張る。


 警察官たちは一瞬言葉を失い、目の前の男を凝視した。(はぁ……こいつ、マジで言ってるのか?)と彼らの心の中に疑問と警戒が広がる。「ちょっと、詳しく話を聞かせてもらおうか」と一人の警官がため息をつきながらタマオの肩を掴んだ。


 「ふむ、俺の力が必要だな!」と素直に応じるタマオ。彼は誇らしげな顔をして警察官たちに連行されていった。その様子を見ていた周りの人々は、「何だったんだあの人……」と一様に困惑しながら、再び日常へと戻っていくのだった。



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 数時間後、警察署の取調室。タマオは真剣な顔で、自分の「睾丸スキル」について警察官に説明していた。「俺の睾丸スキルは、あらゆる困難を乗り越えるための力であり、男としての誇りだ。異世界では、このスキルで多くのモンスターを討伐し、村を救ってきたのだ!」


 警察官たちは真剣に聞いているふりをしながら、心の中で頭を抱えていた。(こいつ、マジで何言ってんだ……?睾丸スキルって……本気でそういうこと言ってるのか?)


 「つまり君は、その『睾丸スキル』でこの世界でも何かをしようとしているんだな?」と警官の一人が問いかけると、タマオは目を輝かせて頷いた。「そうだ!俺はこの世界でも睾丸スキルで人々を救いたいんだ!」


 警察官はため息をつき、隣にいた同僚と視線を交わす。(この人、本当に常識が通じないタイプだ……)と諦めた様子で、警官はゆっくりと口を開く。



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 「まずはさ、その『睾丸スキル』の話はちょっと控えて、普通に生活することを考えてみようか」と警察官はなるべく優しく諭すように言った。「今のままだと、他の人たちに迷惑をかけるだけだからさ。」


 タマオは一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐに真剣な顔に戻り、「そうか……。まずはこの世界の常識を学んでから、俺の睾丸スキルを使えばいいんだな!」と力強く頷いた。


 警察官たちは彼の反応に呆れつつも、「まあ、それで落ち着いてくれるなら……」と半ば諦めている。(こいつ、常識を学ぶって言ってるけど、睾丸スキルって言い続ける限り無理そうだな……)と、警察官たちは心の中で困惑を隠せない。


 警察官は、「では、まずここで書類を作成しますので、ちょっと待っていてください」とタマオに伝え、席を立っていった。タマオは椅子に座り、腕を組んで考え込んでいる。「まず、この世界の常識を学ぶのか……しかし、いつかきっと、俺の睾丸スキルが必要とされる日が来るはずだ」と、ひとりごちている。


 警察署の廊下で、書類を持ってきた警察官が小声で話し合っている。「あの人、本気で『睾丸スキル』とか言ってるんだぜ……どう対応すればいいんだ?」と同僚に相談する。「ああ……精神的な問題か何かかもしれないな。でも一応、犯罪を犯したわけじゃないし、とりあえず今は様子を見るしかないか」と、同僚も難しい表情をしている。(まったく、こんな変わった奴に会うとは思わなかった……)と、二人はため息をついた。


 しばらくして、警察官が取調室に戻ってくる。「タマオさん、とりあえずこの書類にサインをお願いします。今後は他の人に迷惑をかけないよう、落ち着いて行動してくださいね。」タマオは警察官の言葉を聞きながら、「わかった、俺はこの世界の人々にとって必要な存在になるために、まずは自分を高める!」と宣言する。


 警察官は心の中で(いや、話の方向性がズレてる……)と思いながらも、書類にサインさせることに成功した。タマオは堂々と立ち上がり、「この世界のことをもっと知るために、まずは観察だ!」と気合を入れて署を後にする。



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 外に出たタマオは、しばらく街を歩きながら、様々な人々の様子を観察する。彼の頭の中には「睾丸スキル」の力で人々を救うという強い使命感があり、なんとか現代社会に自分のスキルを適応させようと考えているのだ。


 「ふむ、まずは人々が何を求めているかを知ることからだな」と、タマオは人々の動きをじっと見つめる。カフェで談笑する学生たち、仕事帰りにビールを飲むサラリーマン、ベビーカーを押す母親――様々な人たちの姿が目に飛び込んでくる。


 その時、タマオは公園のベンチで落ち込んでいるサラリーマンを見つけた。「あれは、何かに悩んでいる顔だな……」とタマオの目が輝く。「今こそ、俺の睾丸スキルであいつを元気づけてやる時だ!」と意気込み、サラリーマンに近づく。


 サラリーマンは肩を落とし、スマホの画面を眺めながら何かをため息交じりにつぶやいている。(仕事がうまくいかない……クビになったらどうしよう……)と彼は心の中で悩んでいる。


 「そこの君!」と、突然声をかけられ、サラリーマンはびっくりして顔を上げた。目の前には、見たこともない奇抜な服装の男が、真剣な表情で立っている。「な、なんですか……?」と、警戒しながら答える。


 「君の悩み、俺の睾丸スキルで解決してやる!」とタマオが胸を張って言い放つ。その瞬間、サラリーマンの表情が凍りついた。(え……睾丸?今、この人、何て言った?)と彼の頭の中で混乱が渦巻く。


 「だ、大丈夫ですから!もう十分元気なので!」と、サラリーマンは慌てて立ち上がり、逃げるようにその場を去っていく。タマオは、またもや彼の後ろ姿を見送りながら、「ふむ、俺の睾丸スキルの強さに圧倒されたか……」と納得した様子で頷く。


 その場にいた人々も、タマオのやり取りを遠巻きに見ていた。(あの人、絶対に近づいちゃいけないやつだ……)と、心の中でささやき合いながら、足早に立ち去っていく。



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 こうして、タマオの現代での生活がスタートした。彼の「睾丸スキル」は、この現代社会でどのように受け入れられるのか。そしてタマオは、果たして自分の力で人々を救うことができるのか。周囲の人々が困惑と恐怖に包まれる中、タマオの冒険はまだまだ続く。


 「よし、まずはこの世界の人々を観察し、俺の睾丸スキルをどう活かすか考えよう!」と、意気揚々と街を歩くタマオ。その背中に向けられる人々の視線には、困惑と警戒が入り混じっていた……。




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