第22話

小雪さんは9月と10月は来ないんだ。10月分の勤務表を見て分かった。ショックだった。年内はもう会えないんだ。夏は無理だったけど 秋口からは付き合えると思っていたのに残念だ。このままで行くと付き合えるのは 年末年が明けてからか…。

それまでは ずっと一人だ。こんなことならなおみちゃん かあきちゃんと付き合っておけばよかったかなぁ。今更だし 年末まで待つか。夏が終わって 秋になる頃 この頃ってどうしようもなく寂しいよな。本当に人 恋しくなる。そろそろ 誰か付き合う相手が欲しい 本当に。このままで行くと紅葉も 年末も年明けもずっと一人ぼっちだ。好きでもない相手と付き合うなんて できないし仕方がないか 年が明けるまでは一人ぼっち ってことだな。ひとりぼっちの 何が嫌かって 全ての行事から取り残されてしまうことだ ひとりぼっちだとどんな行事にも参加できないし その気にもならないずっと 誰にも会うことなく 部屋にいるだけだ なぜだか外に出て何かを見ようという気持ちにもなれない 一人ぼっち ってそんなもんだ人間とだけじゃなく季節や行事からも一人ぼっちになってしまう。言ってみれば一人ぼっちでいる間はないと同じだ。どんな行事も出来事も自分とは無関係で、存在しないようなものだ。誰かと付き合うことは 煩わしいことも多いけれどいろんなことがあってまあ楽しく過ごせる。だけど一人ぼっちは何もない年が明けるまでずっと。記憶 なんて ひとりぼっちじゃ何にもない。何も記憶されない。記憶というものが起こるのは誰かと何かをした時だけなんだ。だから一人ぼっちだと何もしないし できないし 記憶すら ないままだ。ただ一人 という空白だけが無限に続いていくただそれだけだ。同じ職場にいて相手がいつ来るのかも一覧表で張り出されてほとんどの情報が自動的に自分の手に入る それはいいんだけれども情報が手に入ったところで何もできない。後はただ待つだけなのか。その時とやらが来るまで あとはただ待つだけなのだ それしかない。他にどうしようもない ただただ一人ぼっちだ。この先に 本当に恋が繋がっていてくれるんだろうか。ただ時間が過ぎていくだけで何もなかったらどうしよう。不安だ。本当に不安だ。自分から何かすることがあればいいんだけど、それが何もないとなるともうどうしようもないただ一人立ちすくんで待つだけなのか。一人ぼっちって こういうことなんだね。こんなのはごめんだ。ここから自由になれるなら、快楽でも苦痛でもいい 何かに身を任せてしまいたい その方がずっと楽だ。一人ぼっち というのは どうしようもない 何もないんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラフマニノフの夜明け 瀬戸はや @hase-yasu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る