第21話

加藤小雪は9月10月の表にも載っていなかった。小雪にはもう会えないんだろうか。小雪は次は一体いつ来るんだ。僕はもう それが不安だった。一体いつ小雪が来るんだろう。付き合いたい相手と職場が同じということはとても便利なのだが、こうなってしまうと ただただ彼女がいつ仕事に来られるのかがわからないくて不安だ。ここでの仕事以外に彼女と会うきっかけがないのが一番の原因だが、まだ付き合いが始まっていない 以上 小雪さんに ここで会うしか他に方法はなかった。小雪さんが学生なのは分かっていたが、ここで会う以外 小雪さんに会える術がなかった。僕が小雪さんについて知っていること といえば彼女が学生で 黒っぽい軽自動車に乗っていて おそらく彼女は女子高の出身で今までにこれと言った 恋愛の経験もあまりないのだろうという想像 ぐらいだ。僕は小雪さんの現在の状況も彼女の高校生活が 僕の想像通りだという確信も何もなかった。僕はちょっと焦りすぎているんだろうか、小雪さんに初めて会ってからまだ1月も経っていないのにもう付き合うことばかり考えている。恋の始まり方ってどんなふうだったか 僕は忘れてしまった。なおちゃんと初めて会った時はどんな風だったろうと思い出してみた。なおちゃんは一目で パッとそれとわかる 可愛い子だった。だが 小雪さんはそうではなかった。一目見ただけでは彼女の良さはわからない。何度も見ているうちに少しずつ 分かってくる そういうタイプの良さ だった。だから 小雪さんは綺麗なのにあまり モテない人なんだろう。なおちゃんが街で何にもの男に声をかけられたりするのと反対に 小雪さんは今までに男の人から あまり声をかけられた経験はないのだろう。だから 小雪さんはあまり 男なれしていない。綺麗なのに男が気軽に声をかけにくいからだ。スタイルだっていいのに それもパッと見ただけでは分かりにくい。だからよくよく見ればあんなに綺麗な子なのに男たちからは放っておかれた。全ては僕の願望にすぎない。きっと こうだろう こうあって欲しいと思う僕の願望。言ってみれば彼女は 手つかずに ほっておかれた花だ。彼女の美しさに気がついた男だけが許されるような そんな花だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る