第19話 勇者パーティの不祥事
翌朝
『にゅめょりと』とエリシアは長旅の疲れがたまり
日が昇ってもまだ起きられずにぐっすり眠っていた。
寝室は静かで
外の光が差し込んでいるにもかかわらず
2人は熟睡していた。
その様子を見かねたレイナは
優しい微笑みを浮かべながら2人を起こしに向かった。
扉をそっと開け
眠る2人の姿を見て
母親らしい温かさを感じつつ声をかけた。
「さあ、もう朝よ
起きなさい
今日は国王陛下にご挨拶する日でしょう?」
レイナの声に
2人はようやく目を覚ました。
その瞬間!
「ん?」
『にゅめょりと』は
エリシアと一緒に布団にいたことに気づき慌てた。
(やばい、2人とも裸……)
しかし
エリシアは穏やかに微笑みながら落ち着いており
母であるレイナも
まるで何も問題がないかのように普通の様子で微笑んでいた。
レイナは2人を見守りながら
「さあ、もう朝よ
今日は大事な日だから
準備をしてね」
と優しく促した。
『にゅめょりと』は
レイナに向かって
苦笑いしながら
顔を赤くした。
レイナが部屋を出ていくと。
エリシアは『にゅめょりと』
に向かって甘えたように
「ねえ、私を抱きしめて」
「ああ」
『にゅめょりと』は優しく
エリシアを抱きしめ
軽めのキスをした。
2人は服を着て
窓の外を目をやると
鮮やかな快晴が広がっていた。
『にゅめょりと』とエリシアは身支度を整え
家を出ると
外には既に多くの国民が集まっていた。
家の前に待ち構えていた彼らは
2人の帰還を知り
歓声を上げて歓迎していた。
「お帰りなさい!」
「お二人とも無事で何よりです!」
という祝福の言葉が飛び交い
国民たちの笑顔が溢れていた。
『にゅめょりと』とエリシアはその温かい歓迎に感謝しながら
ゆっくりと頷き
彼らに微笑み返した。
城に到着すると
『にゅめょりと』とエリシアはすぐに案内役によって
王の居室である王間へと通された。
厳かな雰囲気の中
2人は壮麗な扉を前に立ち止まり
深呼吸をして心を落ち着かせた。
扉がゆっくりと開かれると
中には国王が待ち構えており
重厚な雰囲気が漂う王間の中へと2人は足を踏み入れた。
国王は穏やかな表情で2人を迎え入れ
彼らの到着を静かに見守っていた。
グリーンフェルデ国王は
2人が王間に入ると
優雅な身のこなしで立ち上がり
穏やかな笑みを浮かべながら彼らを迎え入れた。
「『にゅめょりと』、エリシア……よくぞ戻ってきた
お前たちの無事な帰還を心より嬉しく思う
長い旅、本当にご苦労だったな」
グリーンフェルデ国王の声は落ち着きと威厳があり
2人に対する深い信頼と敬意が込められていた。
国王は王座から降り
彼らの前に歩み寄ると
さらに優しい声で続けた。
「私たちの王国のために尽力してくれたこと
心から感謝している
今日は君たちを盛大に歓迎しよう」
『にゅめょりと』とエリシアは
その言葉に胸が熱くなり
王に対して深く頭を下げ
感謝の意を示した。
グリーンフェルデ国王は微笑みを浮かべながら
2人を褒め称えた。
「まず、ゴブリンに攫われた村人たちを救ってくれたこと
誠に感謝する
君たちの迅速な行動が多くの命を救った
村人たちも君たちの勇気に感謝している」
その言葉に
『にゅめょりと』とエリシアは静かに頷き
真剣な表情で国王の言葉を受け止めた。
続いて国王は
『にゅめょりと』に目を向け
さらに深い感謝を表した。
「そして、『にゅめょりと』」
「は」
「エリシアが危険な時に
君が助けに駆けつけてくれたことを
聞いておる。
私は心から誇りに思う
エリシアは私たちにとって大切な存在だ
君の行動が
私たち王国の未来を守ってくれた」
その言葉に
『にゅめょりと』は少し照れながらも
真摯に感謝の意を受け取り
深く頭を下げた。
エリシアもみんなと一緒に
『にゅめょりと』に拍手を贈った。
『にゅめょりと』とエリシアは
国王からの賛辞を受けて
互いに視線を交わし
静かに頷き合った。
グリーンフェルデ国王は
「君たちがこの王国の出身であることを
心から誇りに思う
『にゅめょりと』
エリシア……君たちの勇気と献身は
この国の誇りそのものだ」
国王は静かに2人を見つめ
さらに言葉を続けた。
「君たちがこの国を愛し
守ろうとしてくれていることは
私にとって何よりの喜びだ
これからも
この王国の未来のために
共に歩んでくれることを期待している」
その言葉に
『にゅめょりと』とエリシアは感動し
さらに深く頭を下げ
国王の厚意に感謝した。
しかし、この後。
グリーンフェルデ国王は
穏やかな表情から少し真剣な表情に変わり
『にゅめょりと』に向き直った。
「『にゅめょりと』
実は君に伝えなければならないことがある」
「?」
「君がかつて属していた勇者パーティのことだ」
「!」
『にゅめょりと』はその言葉に驚き
国王の言葉を待った。
グリーンフェルデは続けて語る。
「君を追放した勇者パーティが
実は今
大変な状況に陥っているという情報が入ってきた」
「!」
「彼らは君が去った後
次々とモンスターに敗れ
戦いで勝利を収められずにいるようだ」
『にゅめょりと』は心の中で
(そりゃ、そうだろ……)
と思った。
国王の言葉に
『にゅめょりと』は平成を装ったまま
じっと耳を傾けた。
エリシアも心配そうに隣で話を聞いていた。
「彼らの状況はかなり悪化しており
勇者パーティそのものが衰退していくかもしれない
君にそのことを知らせておきたかったのだ」
国王の言葉は重く
状況の深刻さを伝えていたが
しかし『にゅめょりと』は呆れ果てていた。
グリーンフェルデ国王はさらに表情を引き締め
声を低くしながら『にゅめょりと』に続けて話した。
「実は
もう一つ君に知らせなければならないことがある」
「!」
「勇者パーティについての王国独自の調査によると
彼らには横領の疑いがかかっていることがわかった」
『にゅめょりと』は驚き
国王の言葉に耳を傾けた。
「君を追放した際
彼らは君の財産や金を没収したが
それを王国のためではなく
自分たちの私利私欲のために使っていた疑いがある
これが事実であれば
非常に重大な問題だ」
国王は厳しい表情を崩さずに続けた。
「なんだと!」
これには『にゅめょりと』も驚きの表情を隠せなかった。
「彼らは国を守るための役割を果たすはずだったが
その信頼を裏切り
王国の名誉を汚している可能性がある
我々はさらに詳しい調査を進めているが
君にもこの事実を伝えねばならなかった」
その言葉に
『にゅめょりと』は深く考え込む様子を見せ
事の重大さを改めて実感した。
エリシアもその報告に驚き
黙って彼を見守っていた。
『にゅめょりと』は国王の話を聞き
少し沈黙した後
思い出すように口を開いた。
「……新しい勇者バルトルスが
困っている人たちのために使うと言うから
俺は渋々
お金を没収されるのを受け入れたんです
正直
不満もありましたが
彼がそう言うならと信じて……」
『にゅめょりと』はため息をついた。
「なんと」
国王は驚愕した。
「まさか
自分たちのために使うなんて思いもしませんでした
もしそれが本当なら
彼らは俺を裏切っただけでなく
助けを必要としていた人たちをも裏切ったことになる……」
『にゅめょりと』は言葉に詰まりながら
怒りと失望を感じていた。
エリシアも『にゅめょりと』の隣で静かに頷き
彼を支えるように見つめていた。
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