第15話 勇者パーティの汚れた財産と王の怒り
一方その頃
『にゅめょりと』を追放した勇者パーティは
戦闘で成果を上げられないことから
国王によって城へ呼び出されていた。
国王は玉座に座り
険しい表情を浮かべながら
勇者パーティの面々を睨みつけた。
広間に集められたバルトルスとガルディアスの顔には
緊張の色が見える。
「なぜ私がお前たちを
ここに呼び出したのか
わかるな?」
国王の低く響く声が
城の広間にこだました。
国王の手は玉座の肘掛けを握りしめ
怒りを抑えようとしているのが明らかだった。
「『にゅめょりと』を追放してから
一度もモンスターに勝てていないという話
私は聞いているぞ!」
「ギクッ!」
「何度全滅したっ!?
100回以上だぞ!」
その言葉を聞いた瞬間
バルトルスは頭を下げ
言葉が出ない。
隣に立つガルディアスも拳を握りしめ
悔しそうに目を伏せた。
「バルトルス!
お前は勇者として
何をしているのだ!」
国王は怒りを露わにし
声を張り上げた。
「お前たちの無様な姿が
国民の信頼を失わせているのだぞ!」
ガルディアスは口を開こうとしたが
国王の鋭い視線に言葉を飲み込む。
「勇者でありながら
この有様か……
私はもうお前たちにどれだけ期待してきたか……」
国王は深いため息をつくと
玉座に沈み込み
疲れたように目を閉じた。
「このままでは国が滅ぶ……
何とかしろ、バルトルス!」
国王は眉間にしわを寄せ
玉座から重々しく立ち上がった。
その視線は
勇者バルトルスに鋭く突き刺さる。
「バルトルス、少し聞きたいことがある」
国王の声には冷たさが混じっていた。
「全滅回数が100回を超えているということは
教会でそれだけの回数
生き返らせてもらっているということだな?」
バルトルスは
その言葉に一瞬息を飲み
冷や汗が背筋を伝うのを感じた。
「は、はい……その通りです……」
バルトルスはおそるおそる答えるが
国王の冷たい視線はさらに厳しくなる。
「では聞くが
1回生き返らせてもらうのに莫大な金が必要となる……
それはどこから出ている?
お前たちは100回も死んでいるんだぞ
その莫大な費用を
どこから捻出した?」
勇者バルトルスは国王の問いに
意を決して答えた。
「国王陛下……その件について
説明させてください」
国王は鋭い目つきでバルトルスを見つめ
黙ってその言葉を待った。
「実は、私が追放した『にゅめょりと』の持っていた金を全て没収したのです
奴はかなりの金額を持っていました
ですから
それを使ったに過ぎません」
バルトルスの言葉に
国王は眉をひそめた。
「『にゅめょりと』の金を使っただと……?」
国王は不信感を露わにしながら
バルトルスを睨みつけた。
バルトルスは一瞬怯んだが
すぐに続けた。
「はい、陛下
その金は……奴が悪事で稼いだものです
とても汚れた金です
ですから、さっさと使ってしまうのがよいと判断しました」
ガルディアスもその言葉にうなずき
口を挟んだ。
「あの金は
正義のために使われるべきだと思います
我々が生き返るために
それが使われるのは悪くないと」
それを聞いた国王の目には
今にも怒りの炎が燃え盛っているようだった。
「バルトルス……お前は本気でそんなことを言っているのか?」
国王はゆっくりと玉座から立ち上がり
広間に響くような低い声で問いかけた。
「その金があれば
どれだけ多くの人々を救うことができたと思っている?
困っている民のために
いくつ病院を建てられたか?いくつ学校を作り
子供たちに教育を受けさせられたか……その汚れた金で!」
「う……」
バルトルスは国王の怒声に身をすくませたが
何も言い返せなかった。
「ただお前たちが死ぬたびに
その金を使って生き返らせてもらう?
それが勇者としてのやり方か?
その無駄遣いが
この国の未来を暗くしていることがわからないのか!」
国王の言葉は鋭く
バルトルスの胸に突き刺さる。
玉座から歩み寄った国王は
さらに声を荒げた。
「お前たちが戦うことができないのなら
せめてその金をこの国のために使え!
戦いで死ぬこと以上に
お前たちが人々を裏切り
希望を奪っていることが許されない!」
「……」
ガルディアスもまた
何も言えずに俯いていた。
国王の怒りは収まらない。
「勇者として命を懸けるべき戦場で
その金を無駄にしているお前たちの姿は
国民にとって何の希望にもならない!
次の全滅が許されると思うな
お前たちに託されたのは
金ではなく
この国の未来だ!」
バルトルスはその言葉に反論することができず
ただ重苦しい沈黙に耐えるしかなかった。
国王の怒りは
バルトルスの心に深く響き
彼の責任の重さを痛感させた。
しかし、この後も
勇者パーティは全滅を繰り返していくのであった。
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