第12話 幼馴染と5分だけ抱擁

森に夜が訪れ

辺りは次第に暗くなっていった。



『にゅめょりと』は足を止め

空を見上げながら言った。





「これ以上は暗くて歩けないな


ここで野宿するしかないか……」




エリシアは頷きながら

手早くテントを作り始めた。



そして

完成したテントを指さして微笑んで言った。





「できたわ!一緒に入ろうよ

『にゅめょりと』」




しかし

『にゅめょりと』はその言葉に慌てて顔を赤くし

すぐに手を振った。





「いやいや、女性と一緒になんてダメだよ!

俺は地べたで寝るから大丈夫!」



彼は焦りながら

寝る準備をしようとするが

エリシアはその様子を見て微笑んでいた。




エリシアは『にゅめょりと』の様子を見て

少し呆れたように微笑んだ。



「地べたで寝たら

風邪ひくでしょ?

このあたり夜は寒いんだから」



彼女は優しく説得しながら

テントの中に彼を引き入れた。



結局、『にゅめょりと』は少し戸惑いながらも

エリシアの言う通り

テントで並んで寝ることにした。





2人が横になり

エリシアは『にゅめょりと』に寄り添いながら

穏やかに言った。





「ほら、こうして身を寄せ合っていれば

体が冷えることなんてないでしょ?」



その言葉とエリシアのぬくもりに

『にゅめょりと』は心の中でドキドキしながらも

安らぎを感じていた。




『にゅめょりと』は

エリシアの隣で身を寄せ合いながら

ふと昔の記憶が蘇ってきた。





「……そう言えば

幼い頃

よくこうやって2人で洞窟の中で寝ていたよな……」



懐かしさが胸を満たし

彼は微笑んだ。



あの頃の冒険心や

エリシアとの無邪気な時間を思い出し

心が温まる感覚を覚えた。



エリシアのぬくもりと

この静かな夜が

昔の思い出と今を繋げていた。




『にゅめょりと』は少し照れくさそうに

エリシアに問いかけた。





「やっぱり、俺の名前って変だよな?


変えられるものなら変えたいんだけど

それができなくて……」



彼の言葉に

エリシアは即座に首を振った。




エリシアは優しく微笑みながら

『にゅめょりと』に言った。


「そんなことないよ!


あなたの名前は誇り高いのよ


『にゅめょりと』という名前は

ただの名前じゃない。


歴史において多くの人を闇の中から導き出し

希望の光を与える存在。


その名は『にゅめょりと』


私たち人間界にとって大いなる光を示すものなのよ。


だから、その名前に誇りを持って


『にゅめょりと』という名前は、神からの深い信頼と

人々からの尊敬が込められているのよ」



「な、なるほど……」



『にゅめょりと』は驚いたようにエリシアを見つめたが

彼女は真剣な眼差しで続けた。



エリシアは優しく微笑みながら

『にゅめょりと』の手を軽く握りしめ

言葉を続けた。





「私たちにとって、とても大切な英雄の名前よ


だから、変えてはならない」



彼女の愛と勇気の言葉に

『にゅめょりと』は少し顔を赤らめながらも

心の中で温かさが広がるのを感じた。



エリシアは『にゅめょりと』の目をじっと見つめ

少し躊躇しながらも

思い切って口を開いた。



その後


しばらく沈黙が続いた。


2人は何も言わず

ただ静かに並んで寝転び

テントの天井をじっと見つめていた。



やがて

エリシアがその静寂を破って

優しい声で囁いた。



「ねぇ、『にゅめょりと』……5分だけでいいから

私を抱きしめてくれない?」


彼女の声は優しく

けれどもどこか不安げだった。



「え? でもエリシア……」



エリシアは少し真剣な表情に変わり

優しく『にゅめょりと』の胸に顔を寄せながら言った。





「……これから

魔王との戦いがもっと激しくなる



正直、明日私たちが生きているかどうかなんて

誰にもわからないでしょ?」



その言葉には

未来への不安と覚悟が込められていた。



『にゅめょりと』はエリシアの気持ちを感じ取り

静かに彼女を見つめた。



彼もまた

この戦いがどれほど過酷なものになるかを理解していたが

エリシアの言葉に深く頷いた。



「……そうだな。



だからこそ

今この瞬間を大切にしなきゃいけないんだな」



『にゅめょりと』はエリシアの言葉を聞いて

一瞬考え込んだ後

微笑みながら優しく言った。





「……じゃあ、5分だけね」


そう言うと

彼はそっとエリシアを抱きしめてあげた。



彼女の体は温かく

彼の腕の中で安心感を感じているのが伝わってくる。



「幸せ……」


エリシアは静かに目を閉じ

穏やかな表情でその瞬間を楽しんでいた。



『にゅめょりと』もまた

彼女の存在の大切さを感じながら

しばらくそのまま静かに抱きしめ続けた。



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