第8話 再会の涙
『にゅめょりと』は一瞬で相手の正体を理解した。
「お前は魔王の配下『アビサル・ヴァンガード』の一人
ザラトスだろ!?」
『にゅめょりと』は叫んだ。
ザラトスは冷たい視線を『にゅめょりと』に向け
「ほう、よく私のことを知っていたな……賢明な判断だ」
わずかに口元を歪めて嫌味を込めた。
彼の声には冷ややかな皮肉が混じっていた。
そして
その鋭い目で『にゅめょりと』をじっくりと見据えた後
問いかける。
「だが、お前は何者だ? 何故この場に現れた?」
「俺は名は『にゅめょりと』だ」
「なるほど
お前のような奴は我々魔族にとって大変危険な存在だ
この世界にはびこらせるわけにはいかない」
「じゃあ、来てみろ」
ザラトスは虚無の力を纏った剣を振り上げ
猛然と『にゅめょりと』に斬りかかった。
「貴様如きが!」
ザラトスの怒りの声が洞窟に響き渡る。
しかし
すでにその動きは『にゅめょりと』には見切られていた。
冷静にザラトスの一撃をかわすと
素早く反撃に転じる。
「遅いっ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッザシュ!!!!
『にゅめょりと』の剣が一瞬で閃き
ザラトスの両手に鋭い斬撃が走った。
次の瞬間
ザラトスの両手は虚無のエネルギーごと斬り落とされ
地面に転がり落ちる。
「……な、何だと……!」
ザラトスは信じられない表情を浮かべながら
自分の腕が消え去るのを呆然と見つめていた。
追い詰められたザラトスは
両手を失った痛みと驚愕に顔を歪めながら
虚無のエネルギーを集め始めた。
体を震わせ
苦しそうに息を切らしながら
彼は憎しみに満ちた目で『にゅめょりと』を睨みつけた。
「貴様……ここで終わりではない……!」
その声は虚無の力に歪み
周囲の空間が再び揺れ始めた。
ザラトスは虚無のエネルギーを使い
瞬時に空間を歪めてその場から消え去った。
逃げた瞬間
虚無の裂け目が閉じ
彼の姿は完全に消えてしまった。
「……逃げたか」
『にゅめょりと』は剣を納め
ザラトスが逃げた後の静寂を見つめていたが
再び気を引き締める。
『にゅめょりと』はザラトスが去った後
倒れて動けないエリシアのもとに駆け寄った。
彼女の背中からはまだ痛々しい傷跡が見え
意識は朦朧としていたが
彼女の呼吸はかすかに続いていた。
『にゅめょりと』は優しく彼女を抱き上げ
その軽さに彼女の消耗を感じ取った。
「エリシア、もう大丈夫だ」
彼は安堵の声を漏らし
彼女の顔を見つめた。
エリシアは目を薄く開き
『にゅめょりと』の顔をぼんやりと見つめた。
彼の顔を認識すると
その瞳が大きく見開かれた。
そして
次第に感動が彼女の表情を満たしていった。
「……あなた……『にゅめょりと』……?」
その声は弱々しかったが
確かな感情が込められていた。
彼女の瞳には涙が浮かび
その涙が頬を伝って流れた。
「8年ぶりだよね……ずっと会いたかったよ……『にゅめょりと』」
エリシアの涙は
再会の喜びと安堵の気持ちが入り混じったものだった。
『にゅめょりと』は彼女をそっと抱きしめ
無言でその涙を受け止めた。
『にゅめょりと』の目にもいつの間にか
涙が溢れていた。
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