第7話 一閃

エリシアは背中の激痛に耐えながら

必死に地面に手をつき

何とか立ち上がろうとした。




「ここで……終わるわけにはいかない……」



エリシアは剣を強く握り締め

全身の魔力を集中させた。



剣が輝きを増し、炎、雷、風

氷の四大元素がその刃に集まっていく。




「これを食らったら、さすがにひとたまりもないでしょう!」




『レクイエム・オブ・ザ・エレメンツ!』




エリシアは全力でザラトスに向かって突進し

剣を振り下ろした。



剣から放たれた四大元素の力がザラトスを包み込み

激しい閃光と共に爆発が洞窟内に響き渡る。




しかし、煙が晴れると

そこには無傷のザラトスが立っていた。



彼の漆黒の鎧には一切の損傷が見られず

冷酷な目でエリシアを見下ろしている。




「虚無にそんな技は無意味だと言ったはずだ」



ザラトスの声は冷たく

どこか嘲笑を含んでいた。




エリシアの全力の一撃は

まるで無かったかのように無力化されていた。



彼女は膝をつき

息を切らせながら

目の前の絶望的な状況を受け入れざるを得なかった。




「……なんで……これでも……効かないの……?」




ザラトスは冷たい瞳でエリシアを見下ろすと

右手をゆっくりと掲げた。



その手のひらに黒く渦巻くエネルギーが集まり始め

虚無の力が集中していく。





虚無爆裂ヴォイド・アナイアレーション……貴様にはこれで終わりだ」




その声と共に

ザラトスの掌から放たれる虚無のエネルギーは

周囲の空間を一瞬で飲み込んでいく。



膨大な闇の塊はまるで生き物のように蠢きながら

爆発的な衝撃と共にすべてを破壊していく。




この魔法は

物理的なものだけでなく

魔力や生命力さえも吸収しながら消滅させる力を持ち

触れたものは虚無の中で無へと還る。





「ぐっ……! なんて力……!」



エリシアはその強大な力を前に

必死に防御の構えを取るが

虚無のエネルギーは次第に彼女を包み込んでいく。





ザラトスの『虚無爆裂』


が放たれた瞬間

凄まじい衝撃が洞窟全体を揺るがし

エリシアの体は虚無の力によって空高く吹き飛ばされた。





「ぐあっ!」




彼女は一瞬

何が起きたのか理解できないまま

宙を舞い

全身に衝撃が走る。



虚無のエネルギーが彼女の体を包み込み

肉体だけでなく魔力さえも削り取っていく感覚が襲う。





空中で何度も回転しながら

エリシアは岩壁に激突し

そのまま力なく地面に倒れ込んだ。



痛みと共に視界が揺らぐ。



ザラトスは冷ややかな表情のまま

倒れているエリシアにゆっくりと近づいた。



彼の手には虚無の力を宿した漆黒の剣が握られており

その剣の刃先を

躊躇なくエリシアの首元に突きつけた。





「これで終わりだ、エリシア・ファルストラード」




ザラトスの声は冷たく

まるで運命を宣告するかのようだった。



彼の剣先は微動だにせず

エリシアの首筋に冷たい感触を与えている。



彼女はかすかな意識の中で

その圧倒的な力を感じ取りながら

絶望的な状況に追い詰められていた。





その時だった。



ザラトスがエリシアの命を奪おうとする刹那

鋭い風切り音と共に

背後から強烈な気配が迫った。




「ザラトス! お前を許すわけにはいかない!」




『にゅめょりと』が

全力でザラトスに斬りかかった。



剣が虚無の空間を裂き

勢いよくザラトスの背中を狙う。



虚無の闇に飲み込まれる寸前だったエリシアのもとに

力強い援軍が現れたのだ。




「……なに?」



ザラトスは一瞬驚愕の表情を浮かべ

急いでその一撃を受け止める。



しかし

『にゅめょりと』の剣には強い決意が込められており

その力にザラトスも動揺を隠せなかった。





「……貴様……!」



ザラトスは不意打ちを受けたことに怒りを滲ませながら

『にゅめょりと』を睨みつけた。



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